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日本マイクロソフトと札幌市、YRP UNLと共同で訪日外国人向けオープンデータの実証実験を実施

 日本マイクロソフト株式会社、北海道札幌市、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所(YRP UNL)の3者は19日、「オープンデータによる都市全体の外国人観光客の受入環境整備事業」を実施すると発表した。

 1月30・31日に開催される「FISジャンプワールドカップ」、2月5日から11日間開催される「さっぽろ雪まつり」の来場者向けに、オープンデータを活用したアプリ「ココシル札幌」を提供。その有効性を検証する。

 訪日観光客を対象としたオープンデータ活用は、東京オリンピックでも期待されている分野のひとつ。今回の実証実験では、観光、スポーツイベント情報というオープンデータ、ICTを活用することで、訪日観光客の利便性向上を目指す。

ココシル札幌の画面
ビーコンに反応したココシル札幌画面
ココシル札幌に掲載される情報の一部
FISジャンプワールドカップ2016札幌の画面

 「訪日外国人はさらに増加する見通しだが、通訳などが足りない見通しとなっている。ICT活用によってこれをカバーする。さらに、データ整備だけでは利用が進まない点を、アイデアソン、ハッカソン、アプリコンテストなどで利用促進を行う。開発されたアプリについては、利用者からの評価を受け、それをフィードバックするループを作る」(日本マイクロソフトの代表執行役会長、樋口泰行氏)。

日本マイクロソフトの代表執行役会長、樋口泰行氏

 今回、実証実験に参加したYRP UNLの坂村健所長は、「今回、われわれが開発したココシルを提供しているが、アプリはココシルだけで十分というわけではない。オープンデータを活用したアプリとはどんなものかを示すためにココシルを提供したが、これを見て、いろいろなアプリが出てくるのを期待する」と述べ、これをきっかけに、さまざまなアプリが登場することを期待する。

 実証実験の舞台となる札幌市の秋元克広市長は、「札幌の魅力、民間のアイデア、ICTを掛け合わせることで、より札幌の魅力を感じてもらうことができれば」と期待のことばを述べた。

YRP UNLの坂村健所長
札幌市の秋元克広市長

 今回の実証実験は、総務省が進めている2015年度の事業である「オープンデータによる都市全体の外国人観光客の受入環境整備事業」のひとつとして行われる。総務省が提供する資金4000万円を使って、実証実験を行う。総務省としては、2020年の東京オリンピック/パラリンピックでの利用を念頭に置いて、今回の実証実験を行う。

 「今回の実証実験は、2020年に開催される東京オリンピック/パラリンピックでの、オープンデータとICTを活用したおもてなしをどう実現するのかを念頭に置いたものとなっている。各自治体のモデルとなるような取り組みとなることを期待している」(総務省 北海道総合通信局長の安井哲也氏)。

総務省 北海道総合通信局長の安井哲也氏

 事業概要としては、観光情報、スポーツイベント情報、施設情報、公共交通情報、観光情報などそのほかの情報といったデータを収集・加工。データを加工したものをオープンデータプラットフォームとして、クラウドサーバーに置いて、ビーコンによる測位インフラを加え、アプリなどでデータ活用していく。

 YRP UNLの坂村氏は、「オープンデータは、公共性が高く、自由に、誰でも使えるデータで、再利用、再配布することが許諾されたデータとなる。これをどう観光に使うことができるのかを実証実験することが今回の試みとなる。オープンデータを使った実証実験は、ある程度の規模がある大都市で行うことが望ましいが、東京は公共交通機関だけで何十と数があり、許諾を取るだけで用意ではない。それに比べ札幌はシンプルで、都市感覚もある。今回の実証実験で、うまくオープンデータを活用することができなければ、東京で同様の試みをしてもうまくいくはずがない」は、オープンデータを使った実証実験として大きな意味があるものだと指摘する。

 事業を行うにあたり、事業主体である日本マイクロソフト、YRP UNLに加え、有識者、総務省、札幌の協力機関としてオープンデータを活用した情報サービス開発の推進、オープンデータを活用した情報サービスの利用促進を行う22団体が参加する「札幌オープンデータ協議会」が発足。今後この協議会が、アプリ開発にあたってのオープンデータの提供や機能に関する検討、アプリコンテストやアイデアソン、ハッカソンなどのイベント主催を担当する。

 札幌市の秋元市長は、「協議会では、民間企業も含め、オール札幌体制でさまざまなデータを提供していく。そしてこのデータを使ったアプリを通して、札幌の魅力をより多くの観光客の皆さまに感じてもらうことができれば」とコメント。観光客へのアピールとなることを期待するという。

 第1弾として提供されるYPR UNLが開発したアプリ「ココシル」では、これまでの実績から、当初は6つの言語でサービスを提供。「雪まつりガイド」、日本語で表示されている観光看板の観光地一覧をスマホアプリでプッシュ表示する「スマホ観光看板」、「FISジャンプワールドカップ2016札幌」、「大倉山ジャンプ競技場ガイド」、観光バスの集合時間と場所をアプリ内で提供する「観光バス待ち合わせ」という5つの機能を提供する。

 「これがアプリの決定版ではなく、オープンデータを活用したアプリの参考例として考えてほしい」(坂村氏)という観点で提供される。

情報を提供するための屋外用ビーコンを手にしたYRP UNLの坂村氏
JR札幌駅の地下街、コインロッカー上に設置されたビーコン
訪日観光客向けに配布するチラシ

 新しいアプリ開発に向けては、すでに2015年11月21日・22日の2日間、札幌オープンデータ・アイデアソン+ハッカソンを札幌と東京で開催。札幌の観光アプリを募集するコンテスト「Sapporo Open Data App Challenge2016」が2015年11月22日から2016年1月22日までの期間実施されており、3月にシンポジウムを兼ねた表彰式が行われる予定となっている。

 ただし、実証実験期間は総務省の予算がついた2016年3月末まで。それ以降の期間に関してどう対応していくのかは現在検討中で、「できれば予算をとって継続的な事業としていきたい」としている。

三浦 優子