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富士通研と九大、災害時の復旧作業立案の最適化技術を開発

スケジューリングをスパコンでリアルタイムに実現

 国立大学法人九州大学 マス・フォア・インダストリ研究所と株式会社富士通研究所(富士通研)は10日、災害時のライフラインや交通網などの復旧対策において、スーパーコンピュータを活用し、最適な復旧作業のスケジュールを高速に立案する技術を開発したと発表した。

 大規模災害では、二次災害が起こったり、道路の寸断をはじめとするさまざまな事態が突発的に発生するなど、短時間で状況が大きく変化する。こうした状況下では、避難、誘導、復興計画などを早急に策定し、迅速な対応を遂行することが求められる。

 この実現には、災害状況のデータや地理情報データなど、膨大なデータを用いて最適な計画立案をリアルタイムで計算できることが必要になるが、災害時のライフラインなどの復旧では、作業の順番の制約、作業途中の共同作業など、作業員間の相互依存や、個人の労働時間・スキルなどを考慮する必要があり、複雑な条件下で最適な作業スケジュールを効率的に求めるのは容易ではない。そのため、大規模な復旧作業スケジュールの最適化計算は、これまで行われていなかったという。

 しかし今回、九州大学マス・フォア・インダストリ研究所と富士通研究所では、現実の複雑な制約下で、災害時の復旧活動の人員配置とスケジューリングを高速に計算できる数理最適化アルゴリズムを開発し、スーパーコンピュータでのリアルタイム計算を実現したとのこと。

 具体的には、作業の優先順序、合流作業、担当地区優先、労働時間規約など、多くの複雑な制約条件を考慮した上で、作業スケジュールの膨大な組み合わせの中から、効率よく最適な作業スケジュールを立案可能な局所探索アルゴリズムを開発した。

 このアルゴリズムを、復旧個所:506、作業班:64の場合に適用したところ、制約条件を満たす適切な復旧作業スケジュールの計算を、3分という実用可能な時間内で完了させることできた。これにより、大規模災害時に、被害の拡大状況や復旧の作業進ちょくに応じた最新の計画を、迅速に提示できるようになる。

 なお、今回開発したアルゴリズムと計算環境は、流通・物流における配送スケジューリングや、それに向けた作業スケジューリング、人員配置への適用も可能で、配送時の混雑などの状況変化に応じた、きめ細かな配送計画の立案も期待できるとしている。

 九州大学マス・フォア・インダストリ研究所と富士通研究所は、実運用時に課題となる、災害状況や作業状況のデータをリアルタイムに収集できるデータ活用基盤の検討を進めながら、自治体などの防災業務へ適用していく考えで、2017年度以降の実用化を目指す。

復旧作業ルートの例

石井 一志