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富士通、SEの知見やノウハウを活用できるパブリッククラウド「K5」

インテグレーションの新コンセプト「FUJITSU Knowledge Integration」を発表

 富士通株式会社は12日、新たなインテグレーションの考え方に基づくデジタルビジネスプラットフォームとして、「FUJITSU Knowledge Integration」を提唱。その中核を担う新たなクラウド製品として、パブリッククラウドサービスの「K5」を2015年度第3四半期から提供。さらに、各種製品、サービスを順次投入する考えを示した。

 また、これまでの幅広い業種におけるシステム構築、運用で培った知見やノウハウを活用し、業種横断で全社的に活用する専任組織の設置のほか、イノベーション創出に向けた共創プロセスに対応できるSE人材育成を強化するという。

 富士通 取締役執行役員専務の谷口典彦氏は、「富士通が長年培ってきた知見をデジタルビジネスにどう生かすかというのが、今回のFUJITSU Knowledge Integrationの狙い。ICTを越えて、顧客のために行動することで、はるかに大きな力を発揮できると考えている。一方で、日本の企業のIT投資は守りに主眼が置かれているが、米国では価値を創出する攻めのITを積極的に行っている。社会・産業のデジタル化、顧客との関係のデジタル化、組織・働き方のデジタル化といった取り組みを通じて、顧客の競争力を高める。そのためには、既存システムの運用負担を軽減し、『守りのIT』から『攻めのIT』へと転換する必要がある。だが、このギャップはすぐには埋まらない。そのためのインテグレーションやプロセス、方法論が必要になる。富士通が持つノウハウと顧客の知見を組み合わせて、顧客の変革、成長に向けた加速を支援する」と、今回のFUJITSU Knowledge Integrationの狙いを示した。

市場の変化に対応するためにはITの利活用が不可欠
既存システムの運営負担を軽減し攻めのITへ
攻めのITに向けた新しい企業情報システム
富士通 取締役執行役員専務の谷口典彦氏

 また、「目指すべき姿は、業務処理などを行うSoR(システム・オブ・レコード)による業務効率化に加えて、人やモノ、ビッグデータやクラウドなどを駆使するSoE(システム・オブ・エンゲージメント)による新たな価値の創出。そして、SoRとSoEは連携する必要がある。しかし、SoRはシステムが複雑化し、密結合しているという課題がある。これを全体最適の視点で見直し、システム同士を疎結合し、俊敏性と変化対応力を実現しなくてはならない。また、SoEではPoC(Proof of concept:概念実証)やPoB(Proof of Business)の実践が必要であり、富士通はそれに向けた場づくりにも取り組んでいく」と述べた。

SoRとSoE
SoR
SoE

FUJITSU Knowledge Integrationの中核サービス「K5」

 FUJITSU Knowledge Integrationでは、プロジェクトマネジメントなどによる「高度なマネジメントスキルの提供」、業界知識やパッケージなどによる「ビジネスアジリティ」、高可用システムや高セキュリティシステムなどによる「高性能・高信頼」、PoCやPoBの実践やハッカソンなどを通じた「共創」、異業種や業務ノウハウなどを持った「人材育成」、インフラ技術や運用改善手法をはじめとする運用技術などの「永続する安定運用」の6つの価値を提供。これを推進するのがデジタルビジネスプラットフォームだとした。

FUJITSU Knowledge Integrationとは?
FUJITSU Knowledge Integrationが提供する価値

 デジタルビジネスプラットフォームで提供する中核サービスのひとつが、パブリッククラウドのK5である。

 K5は、オープン技術を採用した自社開発のパブリッククラウドサービス。「従来のTrusted public S5などは、IaaSを中心としたものであり、これを進化させたものになる。トータルにサービスを提供していくクラウドになる。トップベンダーと同等の価格で提供していく」(富士通 執行役員の遠藤明氏)という。なお、以前から提供しているパブリッククラウドサービスも継続して提供していくことになる。

 今年2月から、富士通の社内システム約640システムを、K5上へと移行を開始したという。ここで培ったノウハウをリファレンスモデルとして、ソリューション提案や、システム構築および運用に生かす。また、すでに、2015年度上期から顧客でのトライアルを開始。まずは東日本リージョンでサービスを提供し、年度内には西日本リージョンでもサービスを提供する予定だ。

 「海外のクラウドプロバイダーとは、同じところで戦うことは考えてない。富士通が得意とするインテグレーション、イノベーションで、顧客に貢献したい」(遠藤執行役員)という。

富士通のデジタルビジネスプラットフォーム
富士通 執行役員の遠藤明氏

 また、K5と同一のアーキテクチャによるプライベートクラウド向け製品として、垂直統合型クラウド製品向け製品「PRIMEFLEX for Cloud」およびクラウド運用管理、ワークロード管理などを行うクラウドマネジメントソフトウェアを、それぞれ、2015年度第3四半期に提供。さらに、複数クラウドの統合管理を実現するソフトウェアやサービスを、2015年度第2四半期に提供する。また、2015年3月に提供を開始した複数クラウドを接続する「FUJITSU Managed Infrastructure Serviceクラウド接続サービス」も、FUJITSU Knowledge Integrationを構成するサービスに位置づけた。

新たなクラウド商品を順次提供開始する

 遠藤執行役員は、「新たなクラウドサービスにおいては、SEの知見やノウハウを活用できること、SoRへの品質、コスト、スピードにおける強み、SoEへの開発生産性や柔軟性の強み、透明性の高いトータルサポート、オープン技術を採用した自社開発による技術革新への迅速な対応の5つが特徴となる」と、その強みを説明。

 さらに、「富士通のSEが培ってきたSIの知見をクラウドに実装し、基幹業務アプリケーションの開発基盤および実行基盤を提供することで、開発期間の大幅短縮や生産性向上を実現。現場では開発期間が3分の1、生産性は約2倍になった。検証済みのインフラ環境を数10分で、しかもワンクリックで自動設計、配備できる特徴も持つ。そのほか、サービスマッシュアップ型の開発、運用に対応しており、運用情報や障害情報の見える化による安心利用の実現、サービスレベルにあったクラウド環境の選択、さらには、マルチクラウド環境での統合管理、オープン技術を取り込んだことにより世界中の開発者の成果を活用できるという特徴がある」と位置づけた。

5つの優位性
これまでのクラウドとの違い

 富士通では、全世界7拠点、6000人のデリバリーセンターを持っており、これを通じたグローバル展開も計画。2016年度には海外リージョンを設置してサービス提供を開始する予定だ。

大河原 克行