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Androidアプリのテスト自動化サービス「Scirocco Cloud」、大規模利用も可能な「プレミアム」版を追加

 株式会社ソニックスは2日、Androidアプリのテスト自動化サービス「Scirocco Cloud(シロッコ・クラウド)」において、最上位メニューとなる「プレミアム」を4月1日より開始したと発表した。大規模環境でも利用できるよう、プロジェクトの共有や複数端末での並列自動テストなどに対応している。

端末テストを“クラウド化”

Scirocco Cloudでは、80種以上のAndroid端末をリモートコントロールし、アプリのテストなどを行うことができる

 Scirocco Cloudは、Androidを搭載するさまざまな実端末をリモートコントロールし、Androidアプリのテストを自動実行できるサービス。Android端末は機種ごとに画面サイズ、OSのバージョンなどさまざまな違いがあるので、Androidアプリの開発ベンダーにとって、端末をそろえて動作確認を行っていくことが大きな負担になっていたという。

 しかしScirocco Cloudを利用すると、HTML5対応のWebブラウザがあれば、ソニックスが用意した80機種以上のAndroid端末上で、ネイティブアプリやWebアプリのテストを実行できるため、いちいち実機を用意する必要がなくなる。

 利用時にWebブラウザ側へのプラグイン導入は必要なく、マウス操作でタップやフリックといった動作を直感的に再現可能。ゲームや動画の再生、Wi-Fi接続でのSNS接続も行える。

 テストライブラリはNative DriverやAndroid Driverなどの著名なものをサポートしており、アプリをリモート端末にインストールしての検証にも対応。スクリプトによる自動テストに対応していることから、検証作業を効率化可能とした。

 なお、利用可能な端末は国内流通向けの製品が多いものの、一部グローバル端末やSIMフリー端末も用意している。

大規模環境に対応した「プレミアム」版サービス

ソニックスの吉澤武則社長
AppScanner機能

 ラインアップとしては、従来、無償版の「パーソナル」と有償版の「プロフェッショナル」を用意していたが、ソニックスの吉澤武則社長によれば、「当社が当初想定していた規模よりも、もっと大規模な環境で使いたい、という反響を大手コンテンツ企業やITベンダー、SIerなどからいただいていた」ため、機能を強化した「プレミアム」を新たにサービス化した。

 「プレミアム」での新機能は大きく3つあり、1つ目は、複数人でプロジェクトを共有してテストできる「アドミン・コントロール」機能が追加された。従来は1IDごとの契約しかできなかったが、「プレミアム」はまとめて複数IDを契約し、任意のID間でプロジェクトが共有できるようになっている。また、大本の管理者から部門の管理者への権限委譲もできるため、「例えば本社の購買部門が50IDをまとめて契約し、この事業部には10ID、こちらの子会社には10ID、といった形で配布する、といった使い方にも対応する」とのこと。

 2つ目の新機能は、複数端末での並列テスト機能。従来の「プロフェッショナル」では、同時にテストできる端末はあくまでも1つだけで、テスト自体は自動で実施できても、例えば10台なら10回スクリプトを実行する必要があったという。しかし「プレミアム」では、最大30台までの同時実行に対応。その中に、ほかのユーザーに利用されている機種がある場合でも、テストが予約されるので、空き次第自動でテストが行われる。

 3つ目は、テストケースおよびテストスクリプトを自動生成する「AppScanner」機能。AndroidアプリのapkファイルをScirocco Cloudが自動解析し、テストケースとテストスクリプトを自動作成してくれるため、ユーザー側は基本的なテストを、より手間を掛けずに実行できるようになるとのこと。

 吉澤社長は、「すでに提供しているテストレコーダ機能を使えば、Scirocco Cloudで一度実行した作業を“録画”してスクリプト化することはできたが、一度は実行する必要があった。しかしAppScannerでは、アプリの構造を読んでテストパターンを自動生成してくれるので、そのままテストケースが生成される」と、その価値を説明した。なおAppScannerは、まずβ版として提供され、ユーザーが利用した実データをもとにパラメータなどを調整していくとしている。

 「プレミアム」の価格は、1IDあたり月額4万5000円。吉澤社長によれば、「従来は1社あたり数ID規模での利用までにとどまっていた」というが、機能拡充したことにより、10ID以上、多い場合では50IDといった規模での利用も見込まれているとのことだ。

プラットフォームの拡大や海外展開を視野に

 なお吉澤社長は今後の強化ポイントとして、Android以外のプラットフォームへの対応を挙げる。直近では、iOSとWindows 8、Windows Phoneへの対応を検討しているとのことで、「技術的な課題はすでにクリアされているので、後はOSのシェアなどを見ながら、各ベンダーと協力しつつ準備を進めている」とした。

 また、グローバル展開についても計画を進めている。現在は国内のデータセンターからサービスを提供しているが、ソニックスでは昨年、米国のシリコンバレーとシンガポールにオフィスを開設しており、「2013年内にも海外へデータセンターを開設し、サービスを提供したい」と話す。

 クラウドサービスであるため、現在でも海外から利用しているユーザーが既に存在するとのことだが、レイテンシの問題、そして対応端末の問題などがあり、やはり現地のデータセンターがあったほうが都合がいい。ソニックスでは、シンガポールではASEAN地域で流通しているSIMフリー端末を、またシリコンバレーでは北米向けの端末を主に用意することで、現地のニーズに応えていく考え。

 吉澤社長は、「主要なグローバル端末を含めて、同じUIで対応できるのがScirocco Cloudの強み。これを生かして海外のユーザーに展開していきたい」との意気込みを述べた。

(石井 一志)