NRI、空間を上下2層化して効率化した未来型データセンターを稼働


東京第一データセンター

 NRIは、国内で5カ所目となる東京第一データセンターの建設を完了し、拡大するアウトソーシング事業やクラウドサービス、および同社が「ビジョン2015」で掲げる「業界標準ビジネスプラットフォーム」の中核拠点として、11月21日にサービスを開始する。

 同センターでは、データセンターの未来形という「ダブルデッキシステム」を採用したのが特長。同システムでは、高さ8mの1フロアを上下に分割して2層化し、上層はサーバーを設置する「コンピュータエリア」、下層は空調機などの設備機器を設置する「メンテナンスエリア」に区分。これにより、データセンターの安全性、拡張性、環境性能を飛躍的に向上したという。

ダブルデッキシステムとタスク&アンビエント空調方式

 安全性では、地震時の横揺れと縦揺れの両方を低減する構造技術を採用。地震時にサーバーが受ける振動や衝撃を緩和する。具体的には、建物全体を免震構造とすることで、地震時の水平方向の揺れ(応答加速度)を1/3程度低減。さらに上下2層構造を生かし、上層のコンピュータエリアを支える下層側の鉄骨の間に、縦揺れ制振ダンパーを設置することで、コンピュータエリアにおける垂直方向の揺れを20~40%程度低減するという。また、2層構造により、サーバーを設置・管理する担当者と、施設や設備を管理する担当者の導線を完全に分離することで物理的なセキュリティも確保したという。

 拡張性では、通常時で平均7.5kW、最大で30kWの高密度ラックの設置を可能に。これは空調機器を下層部に配置しサーバーを直接冷却することで実現した。また、タスク&アンビエント空調方式(データセンター内の空間をサーバラック領域「タスク域」と周辺領域「アンビエント域」に分割し、タスク域に集中して冷却を行う空調方式)の採用により、将来的な負荷の増加にあわせて、空調機器を適切な場所に設置でき、高負荷となる機器の局所的な冷却にも対応することで、最大30kWのラックも設置が可能になったとしている。このほか、電源・通信ケーブルも上下二層の空間を有効活用することで、空調環境を阻害することなく適切に敷設できるため、将来の増設も容易に対応できるという。

 環境性能では、従来型の冷却方式に比べ、空調効率を50%向上した。従来型のデータセンターでは、サーバーを冷却するための空調機器がコンピュータ室の横に隣接して設置されているため、冷気の到達距離がまちまちだったり、床下に十分な風道を確保できなかったりといった問題があったという。タスク&アンビエント空調方式では、必要な部分のみに冷却能力を集中できるため、より少ない消費電力で効率よく空調できるという。

ダブルデッキシステム(上層) コンピュータエリアダブルデッキシステム(下層) メンテナンスエリア

縦揺れ制振ダンパー

 こうした安全性や信頼性に関する顧客への説明責任を果たすため、同センターでは日本で初めてFISC(金融情報システムセンター)安全対策基準にも準拠したSOC2保証報告書(米国公認会計士協会が公表したガイダンスに基づいて、受託会社のセキュリティ、可用性など会計報告以外の内部統制を評価した報告書であり、SSAE16報告書と同様に外部監査人の監査報告書および受託会社確認書が添付される)を提供するとしている。

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(川島 弘之)
2012/10/17 12:42