富士通、2011年度連結決算は減収減益も利益は年初予想を上回る


取締役執行役員専務 CFOの加藤和彦氏

 富士通株式会社は27日、2011年度の連結決算を発表した。それによると、売上高は前年比1.3%減の4兆4675億円、営業利益は同20.6%減の1053億円、経常利益は同15.5%減の911億円、当期純利益は同22.5%減の427億円。また1月の予想値と比べると、売上高は224億円下回ったが、営業利益で53億円、当期純利益では77億円、それぞれ上回っている。

 売上高については、為替要因を除くとほぼ前年並みとのことで、国内についてもほぼ前年並み。タイの洪水に起因する顧客の生産調整などによる売り上げ減があり、オーディオ・ナビゲーション機器、LSIなどが影響を受けたという。

 取締役執行役員専務 CFOの加藤和彦氏は、「デバイスソリューションの市場低迷を吸収できずに、減収減益となった。四半期別では、第1四半期は震災の影響を受けて部材が逼迫(ひっぱく)し、またコストダウンが進まずに大幅な赤字。第2四半期は震災の影響が薄まったことで営業利益が241億円まで積み上がったが、今度は第3四半期にタイの洪水と市況悪化の影響を受けた。それでも、第4四半期は災害の影響がほぼ終息し、デバイスソリューションも30億円に益転し、全体で1000億円近い営業利益を上げることができた」と述べた。

 セグメント別では、テクノロジーソリューションの売上高が前年比2.6%減の2兆9349億円、営業利益は同5.2%増の1712億円。そのうちサービス事業は売上高が前年比2.0%減の2兆3712億円、営業利益が同5.7%増の1240億円。さらにその中のソリューション/SIの売上高は、前年比0.6%減の8248億円、インフラサービスの売上高は同2.7%減の1兆5464億円。

 サービス/SIでは一般民需が復調し、ヘルスケアも2けたの伸びを示したが、金融・公共分野は減少。インフラサービスも、アウトソーシングが堅調に推移しているものの、ネットワークサービスのISP事業が回線料金込みのパック商品から単体商品へシフトしている影響があったという。

 テクノロジーソリューション内のシステムプラットフォーム事業の売上高は、前年比5.2%減の5636億円、営業利益は同3.8%増の472億円。さらにその中のシステムプロダクトの売上高は前年比13.4%減の2827億円、ネットワークプロダクトの売上高は同4.7%増の2808億円となった。

 ネットワークプロダクトが好調だった要因は、キャリアで高水準の投資が続いているため。またシステムプロダクトの中で、x86サーバーは国内で伸長したが、国内で大型商談の端境期にあたったこと、北米向けUNIXサーバーが半減したこと、理研向けスパコンもほぼ終了したことなどから売り上げ減となった。また国内では好調だったネットワークプロダクトも、北米のAT&T、ベライゾンといったキャリアが投資を控えたこともあって、海外ではほぼ前年並みで終わったとのこと。

 ユビキタスソリューションは、売上高が前年比2.5%増の1兆1542億円、営業利益は同12.1%減の199億円。この中のPCおよび携帯電話の売上高が前年比5.6%増の8895億円、モバイルウェアの売上高が同6.5%減の2647億円。「ケータイはスマートフォンが好調で、前年比19%増の800万台を出荷。PCは国内外とも台数を伸ばしているが、価格競争が厳しく金額では若干の伸びで終わった。一方のモバイルウェアは、前年からの円高と洪水の影響があった」(加藤専務)。

 デバイスソリューションは、売上高が前年比7.3%減の5847億円、営業損益は、前年の209億円の黒字から311億円悪化し、101億円の赤字に転落した。理研向けのスパコン用CPUの出荷が第1四半期に完了したほか、第1四半期の震災の影響、ならびに下半期にタイの洪水の影響があり、デジタルAV向けを中心に減収となった。LSIでは、スマートフォン向け画像処理用LSIが増収。また「電子部品でも売り上げが回復しており、2012年度につながっていきそう」(加藤専務)とのことで、前述したように第4四半期だけなら黒字化している。

 同日には、LSI事業での生産能力の最適化を目的に、岩手工場を株式会社デンソーに譲渡することも発表されており、事業構造改善費用として59億円が特別損失に計上された。

 なお代表取締役社長の山本正已氏は、「市場の状況により、当初の目標に到達できないということを年初にご報告したが、第4四半期については約1000億円の営業利益を上げ、営業利益率は7%を達成。リーマンショック以前にほぼ戻った。攻めの構造改革も、第4四半期についてはリスク管理の徹底により達成できたと思っている。引き続き、今後も体制強化は行うし、本日発表した岩手工場の譲渡についても構造改革の一環。半導体については、かなりの安定性が出てくると期待している」と述べている。

 

2012年度は前年比1.8%増、4兆5500億円の売上高を想定

代表取締役社長の山本正已氏

 続いて、2012年度の見通しについても発表された。

 山本社長は、「2012年は、市況についてはかなり厳しいと見ざるを得ない。特に欧州の債務問題は依然不透明であるし、為替は一時は円安も見えたが、再び円高になっている。日銀による追加緩和も発表されたが、どのくらいの効果があるかははっきり見えない。しかし我々は、攻めの構造改革を2012年も徹底的に行い、経済状況にあまり影響されない体制を作りたい。そのために、2004年から行ってきた営業とSEの一体化構造をやめ、富士通の財産であるSEを、提案型のSEとして再構築したい」とする。

 2012年度の業績見通しは、売上高が前年比1.8%増の4兆5500億円、営業利益が296億円増の1350億円、当期純利益が172億円増の600億円。

 加藤専務は、「下期にIT投資が持ち直す想定で、上期はかなり厳しい予想をしている。ユビキタスソリューション、デバイスソリューションは増収を見込むが、テクノロジーソリューションは下期の回復を見ていて、上期は減収の計画だ」と概括した。

 セグメント別では、テクノロジーソリューションの売上高が前年比2.2%増の3兆円、営業利益は同5.1%増の1800億円。そのうちサービス事業は売上高が前年比2.1%増の2兆4200億円、営業利益が同4.8%増の1300億円。システムプラットフォーム事業は、売上高が前年比2.9%増の5800億円、営業利益が同5.8%増の500億円。

 ユビキタスソリューションは、売上高が前年比0.5%増の1兆1600億円、営業利益は同25.4%増の250億円。PCは、国内外でWindows 8搭載機を中心に、台数ベースで2けたの伸長を期待するが、ケータイは前年並みの800万台の想定という。

 デバイスソリューションは、売上高が前年比7.7%増の6300億円、営業損益は251億円改善した150億円の黒字。「2011年度好調だった画像関連が引き続き拡大するほか、先端の28nmが下期から本格化する」(加藤専務)とした。

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