富士通、タイ洪水影響などを背景に2011年度通期見通しを下方修正

第3四半期連結業績は減収減益に


山本正己社長
加藤和彦取締役執行役員専務

 富士通株式会社は、2011年度通期見通しを下方修正した。

 2011年10月の公表値に比べて、売上高では500億円減の4兆4900億円、営業利益では350億円減の1000億円、経常利益では350億円減の850億円、当期純利益では250億円減の350億円とした。

 タイの洪水被害の影響と、第4四半期におけるIT投資意欲の回復が「見通しに比べて弱い」(富士通の山本正己社長)ことを理由とした。

 富士通の山本正己社長は、「富士通は、震災からの復興を優先しながら、本業での強さを示すために構造改革を推進することで、2011年度は増益を目指すとしてきた。第1四半期、第2四半期は予定通り進んできたが、第3四半期累計決算では減収減益となった。この状況から、2011年度の通期見通しを減額せざるを得ないと判断した。減額については昨年も同じように減収を発表しており、残念であり、遺憾である」と発言。

 続けて、「タイの洪水や震災といった外部環境の影響が大きいが、それを越える本業の強さがわれわれには不足している。本業における絶対的な強さを求めて、コストダウンできる力強い体質を作る必要があり、デバイス問題などについて方向を明確にしていく必要がある。いま、私を中心として副社長、幹部、責任者が日々検討している。近いうちに新たな体制を示していきたい。2012年度に向けても構造改革の手を緩めるわけてにはいかない」とコメント。今後、継続的に構造改革に取り組む考えを示した。

 今後の構造改革については新たな施策を示すものではなかったが、「私が社長に就任してから継続的に構造改革は進めている。本年度は中堅市場向けの営業体制の強化、SEのフォーメーションの変更などに取り組んでいる」としながらも、「SE会社の東西集約を発表しているが、この内容を詰めて、より効率化を図る仕組みとしたい。また、デバイス系については何らかの対策を打っていかなくてはいけない」などとした。

 なお、通期におけるタイ洪水被害の影響は売上高で250億円減、営業利益で170億円減とした。

 また、「2012年度についても厳しい外部環境が予想される。この厳しい環境にも立ち向かい、強い実績を見せるように、利益と売り上げの成長を目指してさまざまな施策を打っていきたい」などと語った。

 東京電力の電気料金の引き上げについては、「10億円程度の影響がある」と見込んでいるが、「企業が電力消費量を削減するために、クラウドサービスを活用すると考えれば、むしろこれをビジネスチャンスととらえることができる。富士通の電力消費量はあがるが、社会全体として効率化を果たすことがでるだろう」などと語った。

 通期のセグメント別業績見通しは、すべての部門で下方修正しており、テクノロジーソリューションの売上高が2011年10月公表値に比べて400億円減の2兆9800億円、営業利益は150億円減の1700億円。そのうちサービス事業は売上高が200億円減の2兆4000億円、営業利益が100億円減の1250億円。サービス事業のうち、ソリューションSIの売上高は100億円減の8200億円、インフラサービスの売上高は100億円減の1兆58006億円となった。システムプラットフォーム事業の売上高は200億円減の5800億円、営業利益は50億円減の450億円。そのうち、システムプロダクトの売上高が200億円減の3000億円、ネットワークプロダクトの売上高は据え置き2800億円。

 ユビキタスソリューションは、売上高が100億円減の1兆1500億円、営業利益は50億円減の150億円。そのうち、PCおよび携帯電話の売上高は据え置き8900億円、モバイルウェアの売上高が100億円減の2600億円。

 携帯電話の年間出荷台数は、スマートフォンの好調ぶりもあって、70万台上方修正し770万台の出荷計画とした一方で、パソコンは30万台下方修正し、年間630万台とした。

 デバイスソリューションは、売上高が200億円減の5800億円、営業損失は150億円減のマイナス150億円の赤字。そのうち、LSIの売上高は100億円減の3200億円、電子部品も100億円減の2600億円となった。

 一方、同社が発表した2011年度第3四半期の連結決算は、9カ月間(2011年4月~12月)の売上高が前年同期比2.2%減の3兆1720億円、営業利益は同85.0%減の102億円、経常利益は前年同期比95.4%減の23億円、当期純利益は前年同期比96.0%減の14億円となった。

 また、第3四半期(10~12月)の売上高は前年同期比1.5%減の1兆797億円、営業利益は同85.0%減の31億円、経常利益は同77.4%減の43億円、当期純損失は前年同期の165億円から、43億円の赤字に転落した。

 タイの洪水被害による影響は売上高で340億円減、営業利益で140億円減。売上高では、パソコンおよび携帯電話で180億円減、モバイルウェアで120億円減、LSIで30億円減、電子部品で10億円減となった。

 富士通 取締役執行役員専務の加藤和彦氏は、「第3四半期は、売上高で2%増、営業利益で前年並を見込んでいたが、タイの洪水被害の影響といった天変地異に対して、またデバイスの落ち込みをカバーできなかったのが要因」としたものの、「為替の影響が約200億円あり、これを除けば物流としては、実質プラスである」とした。

 第3四半期(10~12月)のセグメント別業績では、テクノロジーソリューションの売上高が前年同期比4.5%減の6861億円、営業利益は同4.0%増の259億円。そのうちサービス事業は売上高が同3.7%減の5591億円、営業利益が同16.4%増の221億円。サービス事業のうち、ソリューションSIの売上高は前年同期比1.0%増の1915億円、インフラサービスの売上高は同6.0%減の3676億円となった。

 システムプラットフォーム事業の売上高は前年同期比7.5%減の1270億円、営業利益は同36.0%減の37億円。そのうち、システムプロダクトの売上高が同24.3%減の578億円、ネットワークプロダクトの売上高が同13.5%増の691億円。

 「テクノロジーソリューション全体では収益は改善の方向にあり、ソリューション/SIサービスでは、一般民需が好調。一方で、社会インフラの投資が先送りになっている。ここではハードウェアの投資が進んでいるが、SE関連ビジネスの先送りが目立つ」などとしたほか、「システムプラットフォームでは前年度第3四半期に次世代スーパーコンピュータシステムを構成する専用サーバーを量産したため、大型商談の反動がある」とした。

 ユビキタスソリューションは、売上高が前年同期比4.0%増の3011億円、営業利益は同43.6%減の20億円。そのうち、PCおよび携帯電話の売上高が同3.3%増の2324億円、モバイルウェアの売上高が同6.4%増の687億円。「ユビキタスソリューションでは3けたの営業利益を見込んでいたが、タイの洪水被害のほか、設計変更などの投資で110億円程度かかっており、最終的には20億円にとどまった」という。

 デバイスソリューションは、売上高が前年同期比11.1%減の1381億円、営業損失は、前年同期から168億円悪化し、84億円の赤字。そのうち、LSIの売上高は前年同期比13.5%減の756億円、電子部品は同8.0%減の628億円となった。「この分野では、急激な円高、レアアース高騰への対応の遅れ、市場の悪化、タイ洪水被害の影響があった」という。

 なお、タイの洪水被害の影響で調達が遅れていたハードディスクについては、「3月までは逼迫(ひっぱく)するだろうが、4月以降は需給が逆転すると考えている。パソコンへの影響はあったが、システムプロダクトへの影響は少ないと考えてもらっていい」などとした。

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(大河原 克行)
2012/2/1 00:00