サイベース、金融向けリアルタイムデータ分析製品を強化


米Sybase マーケティング部 シニア・ディレクターの二ール・マクガヴァン氏

 サイベース株式会社は21日、金融市場向けリアルタイム・データ分析エンジンの新版「Sybase Aleri Event Stream Processor(以下、Aleri ESP) 5.0」を発表した。併せて、高速データ分析プラットフォーム「Sybase RAP」のR言語対応を発表した。

 Aleri ESPは、金融業界における大量の取引データを瞬時に意思決定するためのCEP(Complex Event Processing:複合イベント処理)製品。

 特長は、大量に流れ込むストリーミングデータをデータベースに登録せずにリアルタイムに分析する機能を備え、取引所やPTS(私設取引所)からのダイレクトフィード、ロイターやブルームバーグなど市況データプロバイダから送られてくるデータなどを止めどなくマイクロ秒単位で分析できる点。

 アダプタを含めすべてC/C++で実装され、最新のマルチコア・マルチスレッドのサーバーに対応し、ストリーム処理のためのスケーラブルな環境を提供する。開発者は、多用な入力ソース、アプリ、メッセージング基盤、データベース、ネットワークプロトコルに標準対応する統合機能によって、Aleri ESPを拡張して既存の技術基盤に統合することも可能。シンプルな手続き型スクリプト言語「SPLASH」により、Aleri ESP自体の機能も容易に拡張できるという。

 登壇した米Sybase マーケティング部 シニア・ディレクターの二ール・マクガヴァン氏はAleri ESPの適用分野を紹介。1)不正検出など業務上クリティカルな状況を検出するため、生のイベントストリームの「状況検出」、2)市場に基づく自動プライシングなど、現状を反映するためビジネスプロセスを継続的に調整する「自動応答」、3)生データのストリームをクレンジングし、利用可能なデータに変化する「ストリーム変換」、4)リアルタイムP&Lやオンラインマーケティング・効果測定など、よりよい意思決定のために利用可能なデータを表示する「ライブダッシュボード」を挙げた。

 新版では、GUIベースとSQLベースの組み合わせによる柔軟なイベント処理を実現。GUIのオーサリングツールでイベント処理を組み立てる直感的な環境と、リアルタイム計算用にSQLを拡張したプログラム言語であるCCL(Continuous Computation Language)の両方に対応し、変化の激しい金融市場においても迅速にニーズをマッチしたリアルタイムデータ分析アプリの迅速な開発を実現している。

 また、Aleri ESPサーバーにクラスタアーキテクチャを採用し、分析アプリの可用性を向上した。仮想サーバーとして複数のプロジェクトを同時に稼動させることができ、随時プロジェクトを開始/停止できる。ウォームスタンバイ設定により、マシンが停止した場合に自動的に他のマシン上でリスタートさせることも可能。リスターと時間を排除するためのホットスタンバイにも対応する。

 幅広いデータベースと連携するデータベースアダプタも拡充。Javaメッセージ・システム(JMS)アダプタによって、メッセージ送受信を実現するためのアプリケーションサーバー機能である「JMSプロバイダ」をサポートした。ライブラリにも「算術関数」「ビット操作関数」「集約・集計関数」を含む、70以上の新しい関数が組み込まれた。

 出荷時期は3月下旬を予定。価格は840万円/コア。

 一方、高速データ分析プラットフォームであり、Aleri ESPの基盤となる「Sybase RAP-The Trading Edition」では、統計解析プログラム言語のR言語に対応。昨今の金融市場では「膨大な履歴データを活用した分析手法として時系列分析や統計分析が注目されている」とのことで、これら分析手法の選択肢として、R言語をSybase RAPと組み合わせ、大規模化、複雑化する市場データの分析を支援。「データ分析担当者やビジネスアナリストに利用者の多いR言語に対応することで、Sybase製品による分析の裾野を広げる狙いがある」(サイベース代表取締役社長の早川典之氏)とした。

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(川島 弘之)
2012/2/21 16:27