サイレックス、2012年は無線LAN関連製品の売上大幅増~デジタルサイネージにも注力


 サイレックス・テクノロジー株式会社は2月15日、戦略説明会を開催。2012年は主力製品のプリントサーバーとデバイスサーバー、無線LAN関連製品を事業の柱とし、今後成長が見込まれるAVネットワークにも注力していく方針を説明した。

震災と円高で2011年は売上微減するも、無線や組み込み技術で高い成長を見込む

サイレックス・テクノロジー代表取締役社長 河野剛士氏

 サイレックス・テクノロジー代表取締役社長 河野剛士氏は、2011年の重要トピックスとして、(1)東日本大震災・円高の影響、(2)無線LAN関連製品の飛躍的な成長と大型案件の受注、(3)国内外のルーターメーカー向けロイヤリティの成長、(3)村田機械のTOBを受け上場廃止し、100%子会社になったことの4点を上げた。

 東日本大震災の影響については、同社の主要製品であるプリントサーバーのカスタムチップを生産していた岩手の工場が被災し、震災から8月10日頃まで調達が止まったために、在庫の切れた5月下旬から8月まではプリントサーバーの生産ができなったという。とはいえ、サイレックスのみについては影響は限定的だったが、顧客企業の多くが震災の影響を受け生産調整などを行ったことで、売上は対前年で3%の減少という結果になったという。

 無線LAN製品については、自社開発の無線LANモジュールとドライバソフトウェアによって、FAや産業機器、医療機器への組み込み、特殊環境でのアクセスポイント、ドキュメント分野での小型・省電力のワイヤレスソリューションなど、技術力とサポート力で他社と差別化できる分野をターゲットとしていく方針を示した。

 とくにAVネットワーク分野では、1月27日に発売したマルチキャスト動画配信システムの新製品「MVDS X-5T(送信機)/MVDS X-5R(受信機)」でデジタルサイネージ市場を開拓。今後高い成長を見込んでいる。

 また村田機械のグループに入ったことについて河野社長は、2011年12月に、友好的TOBにより村田機械の100%子会社になったが、ムラテックメカトロニクス大分工場と生産協業を進め、2013年に対2011年度比で3倍を超える生産体制を構築する計画だと述べた。

 無線デバイスについては、「コンシューマー市場ではすでに普及しているが、FAの分野はまだこれから。低消費電力、安定性、スピードを点を徹底的に追求していく」とした。FAの分野では、村田機械がFA市場特有のノウハウを持っているため、そうしたノウハウを取り入れて、クライアントの要求に応じられる製品やソリューションを提供していくとした。

 河野社長は、無線機器の需要が伸びる中でサイレックスの売上げも伸びており、「生産数も増加したことで台湾メーカーなどと競合するところも出てきたが、コンシューマー市場などのボリュームゾーンでは価格競争が避けられない」として、産業機器やFA機器、医療機器、特殊なプリンタ、スキャナのように速い伝送が求められるものなど、顧客の似ずに合わせて開発する技術力とサポート力が必要な業務用途の市場にターゲットしていくとの方針を示した。

2011年12月期の製品分野別売上高比率。プリントサーバ、デバイスサーバ、無線LAN関連製品が約4分の1ずつを占める製品カテゴリ別売上げ比率。左が2008年、右が2012年の計画
デバイスサーバーの事業分野では、ロイヤリティライセンスの売上げが大きく伸びている無線LAN関連製品は順調に伸びているが、2012年には2011年の3倍近い出荷台数を見込んでいる
AVネットワーキング分野も大きな成長を見込んでおり、4つめの事業の柱にしたい考えだムラテック大分工場との協業により、2013年には2011年比で3倍を超える生産体制を構築


独自技術で海外市場拡大も見込む~無線伝送によるデジタルサイネージ

 サイレックス・テクノロジー株式会社 マーケティング本部 製品戦略室 室長 八木 香艶洋(やぎ かつひろ)氏は、デジタルサイネージ市場に向けた同社の新製品、MVDS X-5の製品説明を行った。

 MVDS X-5は、それまでの同社製品MVDS X-2が解像度がWXGA/SXGAまでだったのに比べ、独自の圧縮技術を採用することでフルHDまでサポート。通信規格ではIEEE 802.11nに対応し、受信側の端末に動画を保存できるストア&プレイ機能やアクセスポイント機能を備えた。

 無線マルチキャスト伝送機能により、フルHDの動画をリアルタイムに複数のディスプレイに無線で伝送可能。また独自技術により、店舗内に多数のディスプレイが設置されているような場合にも、どのディスプレイでも完全に同じタイミングでの再生ができる点が特長となる。

デジタルサイネージは2016年には1兆円市場への成長が予測されているサイレックスワイヤレス画像伝送製品の歩み。当初から、複数端末で動画を完全に同期して再生する技術が搭載されていた。完全同期する技術については、まだ世界でも競合社がないという
MVDS X-5は、ストア&プレイ機能により、マルチキャスト伝送だけでなく、保存した動画の再生が可能。用途やタイミングに応じた動画表示が可能になった震災により、消費電力に対する顧客企業のニーズは従来に比べ一段と厳しくなったという

 MVDS X-5は、複数ディスプレイで完全に同じタイミングで再生が可能なだけでなく、新たにストア&プレイ機能を備えたことで、それぞれのディスプレイに接続したMVDS X-5の受信装置に動画を保存し、設置場所に応じたディスプレイ表示が可能。たとえば、通常の時間帯はそれぞれの売り場に合わせた動画を再生し、タイムセールの時間になるとすべてのディスプレイでタイムセールの情報を流すといった、デジタルサイネージの複合的な利用が可能だ。

 消費電力についても、最大10Wと低消費電力を実現。形状においても、従来製品に比べて体積で約75%、重量で約40%と大幅に小型・軽量化している。業務向けのため、セキュリティ面でも顧客企業の用途に合わせた対応を行っていくという。

 サイレックスでは、無線マルチキャスト伝送によるデジタルサイネージは、すでにスーパーマーケットのイオンや米国のガソリンスタンドチェーン、大手自動車メーカーの工場の生産ラインや病院内の情報表示、NHKの撮影現場のモニタリングなどの採用実績がある。イオンは2010年に納入をはじめ、現在も順次、納品と設置を行っている。

複数のディスプレイで完全に同期した映像を再生できる点が他社製品にない特長一層の低消費電力化が図られたMVDS-X5の無線モジュール。チップはアセロス製を採用
手前が送信側のMVDS X-5、ディスプレイの背中に装着されているのが受信側のMVDS X-5。受信側にはストア&プレイ機能が搭載されているコンテンツ配信ソフトと設定・管理ソフトをインストールしたPC



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