シスコ、業界初となる60Wの電源供給を可能にした次世代PoEを発表

シスコシステムズ 専務執行役員の木下剛氏

　シスコシステムズ合同会社（以下、シスコ）は18日、エンタープライズクラススイッチ「Cisco Catalyst 4500Eスイッチ」向けに、業界初となる60Wの電源供給が可能な次世代Power over Ethernet（PoE）機能「Cisco Universal Power Over Ethernet」（以下、UPOE）を発表した。

　「UPOE」は、一般に利用されているPoE＋による30W電源供給に比べ、1ポート当たり2倍の電力を供給でき、標準のEthernetケーブル1本で、従来よりもさらに幅広い種類の端末機器に、電力とネットワークアクセスの両方を提供できるのが特徴。これにより、Cisco IPフォン、パーソナルテレプレゼンスシステム、コンパクトスイッチなど、60W以上の電力を必要とするすべてのデバイスに電力を供給することが可能となる。

PoE技術開発をリードするシスコ	UPOE技術の概要

　シスコ 専務執行役員の木下剛氏は、「当社では、2000年にCisco IPフォン用の7WインラインPoEを発表し、PoE技術への取り組みを開始した。当時は、音声とデータをIPネットワーク上に統合するVoIPを製品化したころで、この発展として、電話機に必要な給電をイーサネット上から供給できないかと考えPoE技術が開発された。その後、PoE技術は、約3年ごとに進化を遂げ、2000年の7Wから2003年に15W、2007年に30W、そして今回のUPOEで60Wの給電を実現した」と、同社がPoE技術で業界をリードしてきたことをアピール。「あわせて、市場全体の発展に貢献するため、PoE技術の標準化にも取り組んでおり、2003年に15W PoE、2009年に30W PoE＋の標準規格を策定した。のUPOEについても、2年後をめどに標準規格化を目指す」との考えを述べた。

Cisco Catalyst 4500Eスイッチに搭載されたUPOE対応48ポート10/100/1000BASEラインカード

　「UPOE」の具体的な製品としては、Cisco Catalyst 4500Eスイッチ用の新しいのUPOEラインカードとスプリッタをラインアップ。のUPOEラインカードは、Cisco Catalyst 4500Eシャーシ1台につき最大134のUPOEポートまで対応し、標準のCat 5eまたはそれ以上のケーブルとRJ45コネクタで、既存インフラストラクチャに簡単に導入できる。また、UPOE用スプリッタを活用することにより、標準的なDC電源を搭載したサードパーティ製機器との接続も可能になるという。UPOE用スプリッタは、2012年1月に出荷開始する予定。

　「オフィス内にある大量のACケーブルは、見た目が悪いだけでなく、取り回しも大変で、オフィスのレイアウト変更時にはケーブルの引き直しが必要になるなど、非常に無駄が多い。UPOEを活用することで、こうしたACケーブルをなくして、オフィスをシンプル化できる。さらに、PCやディスプレイなどの端末デバイスをDC給電に統合することで、さらに省エネを推進できる。これにより、DRやBCPにも対応した新たなオフィス環境を構築することが可能になる」と、木下氏は「UPOE」がオフィスにもたらすメリットを強調する。

サムスン電子のゼロクライアント「SyncMaster NC220P」

　また、同社では、UPOE搭載機器の開発を促すため、サムスン電子、DEPおよびシャルレライテックなどのエコパートナーとの連携を強化している。すでに、サムスン電子のデスクトップ仮想化機能とディスプレイを統合したゼロクライアント「SyncMaster NC220P」、DEPおよびシャルレライテックのLED照明、シスコ パーソナルテレプレゼンス「Cisco TelePresence EX60」などにUPOE技術が搭載され、利用者はネットワーク経由で電力供給を受けることが可能となっている。このほかにも、多数のデバイスでテストが進んでおり、UPOE用スプリッタを通じてCatalyst 4500Eスイッチから電力を供給できるようになるという。

　さらに、同社およびパートナー企業の機器向けに、「UPOE」導入の簡単な事前検証済みの推奨構成も提供している。現在、5種類の垂直市場および一般的なエンタープライズアプリケーション向けに検証済みの設計を採用したソリューション概要を公開しており、これらを利用することでより迅速な導入が可能になる。また、UPOE技術の活用を検討するネットワーク接続用エンドポイント機器のメーカーに対しては、開発者サポートプログラムの提供も行っている。