日本オラクル、「Oracle Linux」「Oracle VM」新版を発表

ミッションクリティカル領域へ訴求拡大


 日本オラクル株式会社は12日、Linux OS「Oracle Linux」とサーバー仮想化ソフト「Oracle VM」の新版を発表した。


「Unbreakable Enterprise Karnel」新版を提供

米Oracle チーフ・コーポレート・アーキテクトのエドワード・スクリーベン氏

 Oracle Linuxには、Oracle製ソフトに最適化し、最新技術をいち早く採り入れることで性能・信頼性を強化したカーネル新版「Unbreakable Enterprise Kernel Release 2」を実装した。

 自動化したテスト環境上で絶え間なく試験を実施したという同カーネルにより、4096CPUコア、2TBメモリまでの拡張性を実現。ベンチマークでRed Hat互換カーネルより、75%速いパフォーマンスを記録したとする。

 また、データ破損を防止する、ハードウェア故障管理とデータ整合性機能も備え、「Exadata、Exalogic、Exalyticsのパフォーマンスを最大限引き出す核となっている」(米Oracle チーフ・コーポレート・アーキテクトのエドワード・スクリーベン氏)としている。

 新版となる「Release 2」では、大量のスレッドを生成するアプリケーション向けスケジューラを改良したほか、CPU間をまたいだパケット制御をより低レイテンシにし、メモリ中心の処理向けに透過的なヒュージページ機能も提供することで、速度をさらに向上。

 低オーバーヘッドのOS分離やリソース管理を行う「Linuxコンテナ」や、VLAN分離・フィルタリング・QoS管理・制御の自動化を行う「仮想スイッチ」、包括的な動的トレーシングのフレームワーク「DTrace」なども搭載している。

 また、カーネルパッチ作業に伴うサービスの中断、ダウンタイム、遅延といった課題を解決する「Ksplice」機能も搭載。サーバーにKspliceクライアントをインストールしておくことで、Oracleから提供される各種のカーネルパッチを“ゼロ・ダウンタイム”で適用できる。同機能は、Oracle Linux Premier Supportの一部として提供する方針だ。

Unbreakable Enterprise Kernel Release 2の特長Ksplice機能の特長



各種管理機能を強化した「Oracle VM 3.0」

Oracle VMの特長

 一方のOracle VMは、x86/SPARCプラットフォームに対応するハイパーバイザー型の仮想化ソフト。ゲストOSとしてOracle Linux、Oracle Solaris、Windowsを含む主要OSをサポートする。

 新版の「3.0」では拡張性を向上し、1仮想マシンあたり最大128仮想CPUをサポートする。「Sun Fire X4800 M2サーバー」を使用して、最大160の物理CPUと2TBのメモリをサポートした実績もあるという。

 新機能としては、「Storage Connectプラグイン・プラットフォーム」「ネットワーク構成と管理の集中化」「高度なポリシーベースの管理機能」「Open Virtualization Format(OVF)形式の業界標準サポート」などを搭載した。

 「Storage Connectプラグイン・プラットフォーム」は、管理ツール「Oracle VM Manager」から透過的に、ストレージアレイが持つ重複排除や高速クローンなどの機能を管理できる機能。SunZFSストレージアプライアンスなどのオラクル製品、富士通、日立、ネットアップなどのストレージプロバイダからプラグインが提供される。

 また、今回はOracle VM Manager自体が大幅に改良されており、単一コンソールで多数の仮想マシンを管理できるようになるなど、より大規模環境に対応している。「ネットワーク構成と管理の集中化」も改良の1つで、すべてのサーバーと仮想マシンのネットワークをOracle VM ManagerのGUIから構成可能になった。ブリッジ、ボンディング、VLAN、マルチパスなどの高度な構成にも対応するという。

 「高度なポリシーベースの管理機能」では、リソース制御と電源管理を自動化して、アプリケーションのQoSを改善し、コストと消費電力などを削減。「OVF形式の業界標準サポート」では、アプリケーション配置を迅速化するために、OVFに準拠したソフトウェアアセンブリをOracle VM Managerからインポートして使用できる。

 このほか、構成済みの仮想マシンを迅速に展開できる「Oracle VMテンプレート」を90種以上も収録。ボタンを押すだけで、必要な構成の仮想マシンをOracle VM内に立ち上げられるという。

Oracle VM 3.0では、パフォーマンスを向上し、Oracle VM Managerを大幅に改良90を超えるVMテンプレートを提供

 Oracle VM 3.0は、無償ダウンロードが可能で、ライセンス費用も無料。エンタープライズ用途に向けたサポートサービスは、物理サーバー単位のシンプルなサブスクリプション方式で提供する。

VMwareと比較して低コストをアピール

 スクリーベン氏は、VMwareと比較して低コストをアピール。「基本的な構成で3年間運用した場合、Oracle VMは約18万ドルで利用できるのに対し、VMwareは約7倍のコストがかかる。また、単一のソリューションとして作られたVMwareに対して、Oracle VMはアプリケーションを高速に、信頼性高く、簡単に展開・管理するために完全なスタックの一部として作られており、“Oracle VMは4倍のスケーラビリティ、VMwareは4倍のコスト”ということが言える」と述べた。


LinuxやVMをミッションクリティカル領域へ

 今回の新版発表の背景には、「Linuxで稼働するシステムがミッションクリティカル領域でも使われるようになっている。しかし、x86をベースにLinux/VM上で稼働するアプリが未来永劫保証されないと、ユーザーは安心して利用できない。今回の新版を基に、国内ベンダーとも連携して取り組むことで国内ユーザーに安心感を与えたい」(日本オラクル代表執行役社長兼CEOの遠藤隆雄氏)と、ミッションクリティカル領域への普及拡大に向けた思いがある。

 専務執行役員 ソフトウェアライセンス事業 製品事業統括兼テクノロジー製品事業統括本部長の三澤智光氏も「従来、Linux・VMは比較的軽いアプリケーションで活用されてきたが、今後はエンタープライズ領域での利用が拡大すると確信している。ただ、現時点で完全に要求に耐えられるかというとまだまだ革新が必要なのも事実。そこへ向けて全社を上げて取り組んでいる。製品開発でOracle Linux/VMを鍛える。Exadataなどのエンジニアドシステムで鍛える。そうやってオラクル自身で製品を鍛え上げるとともにパートナーとともにエンタープライズ領域へのLinux・VMの普及に努めたい」と語った。


ハードウェアベンダーの声

富士通 システムプロダクトビジネスグループ 執行役員常務の豊木則行氏
日立 情報・通信システム社 エンタープライズサーバ事業部 事業主管の河村俊明氏
NEC ITハードウェア事業本部 副事業本部長の岩本和昭氏

 発表会にはハードウェアベンダーとして富士通、日立、NECの3社が登壇。それぞれOracle Linux・VMへの思いを述べた。

 富士通 システムプロダクトビジネスグループ 執行役員常務の豊木則行氏は「当社ではPRIMERGYを統一仕様で世界展開しており、このたび、グローバルでの仮想化ソリューションとしてOracle VM 3.0の動作検証を完了した。堅牢なサーバーと柔軟なソフトで、より高信頼性を実現できる。日本オラクルとはこれからもお互いの強みを生かしながら、新技術への挑戦をともに続けたい」とコメント。

 日立 情報・通信システム社 エンタープライズサーバ事業部 事業主管の河村俊明氏は「当社は日本オラクルと従来よりデータベース統合で協業している。この6月には、日立の仮想化機構VirtageをOracle RACの稼働環境として認定いただき、共同で『日立-オラクル Virtageソリューションセンター』も設立した。Oracle VMでもすでにBladeSymphonyと組み合わせ、複数のお客さまにご利用いただいている。1つ誤解していただきたくないのは、VirtageとOracle VMは補完関係にあるということ。Oracle VMはオープンシステム向けの技術として柔軟性・運用性に優れる。一方のVirtageはメインフレームをルーツに安定性・独立性に優れている。実はVirtage上でOracle VMを稼働させる検証も進めており、両製品のメリットを融合させる取り組みも始めている。こうした取り組みを通じて、さまざまなニーズに対応したデータベース統合ソリューションが提供できると確信している」とコメント。

 NEC ITハードウェア事業本部 副事業本部長の岩本和昭氏は「両社の関係は1987年に、当社が国内ベンダーとして初めてOracle製品を取り扱った時から始まった。以来、ビジネス面で深いパートナー関係を築いている。ミッションクリティカル領域では、製品の品質、インテグレーション、サポートがいずれも高い水準でなければならない。今回のOracle Linux・VMの発表で、その品質をより強固に実現できるようになった。当社と日本オラクルは従来、ミドルウェアの協業が中心だったが、新しい段階に入ったという認識でいる」とコメントした。


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(川島 弘之)
2011/10/13 06:00