Azureを活用したクラウドソリューションを積極展開するCSK Win
IT資産管理クラウドを古宮社長に聞く
CSK Winテクノロジ 代表取締役社長の古宮浩行氏 |
マイクロソフトとの合弁会社として、Windowsソリューションを中核にビジネス展開している株式会社CSK Winテクノロジは、顧客からのクラウドサービスへのニーズの高まりに対応するべく、「Windows Azure」(以下、Azure)を活用したクラウドソリューションに積極的に取り組んでいる。
今年1月、Azureによるクラウドソリューションの第1弾として、電子メール誤送信防止製品「PlayBackMail」のクラウド版「PlayBackMail Online」を発表。4月には、第2弾としてIT資産管理ソリューション「PerfectWatch for Asset-LifeCycle」のクラウド版「PerfectWatch for Asset-LifeCycle Cloud Edition」をリリースしている。
CSK Winテクノロジ 代表取締役社長の古宮浩行氏は、「当社は、単なる請け負いのシステムインテグレータではなく、顧客のニーズを的確に捉えたソリューションを開発、提供してきたが、クラウドでは、その実績とノウハウを最大限に発揮できると考えている。また、クラウドは、一人の優れた技術者やアイデアマンが社内にいれば、世界を相手にビジネスができる点も大きな魅力だ」と、クラウドソリューションを積極展開する背景を述べている。
Azureを採用することによるメリットについては、「当社は、マイクロソフト製品を扱うのが基本だが、その条件を抜きにしても、開発のしやすさやコスト面、セキュリティなどの点で、AzureはクラウドOSとして非常に優れていると考えている。特にWindowsのテクノロジをベースにしているため、クラウドソリューションの開発にあたっても、オンプレミスで利用している開発ツールや開発言語をそのまま活用することができる。さらに、オンプレミスからクラウドに移行する際も、最小限のカスタマイズで対応できる」(古宮氏)ことを挙げている。
PerfectWatch for Asset-LifeCycle Cloud Editionの全体イメージ |
同社が4月にサービス提供開始した「PerfectWatch for Asset-LifeCycle Cloud Edition」は、Azureと企業向けクラウドプラットフォーム「Microsoft SharePoint Online」(以下、SharePoint Online)を連携したクラウド対応IT資産管理ソリューションだ。(1)ライフサイクル管理、(2)業務プロセス、(3)管理者作業の効率化――の3つの視点から、正しいソフトウェア管理の実現を支援する。特にソフトウェア資産管理コンソーシアム(以下、SAMCon)が策定した「ソフトウェア資産管理評価 成熟度モデル レベル3」の早期実現をシステム面からサポートするソリューションは、これが国内初となる。さらに、業界団体BSAのデータモデルに独自の拡張を加えることで、必要な管理項目を効率よく網羅している。
具体的な管理メニューとしては、台帳管理(ハードウェア管理台帳/ライセンス管理台帳/ライセンス関連部材管理台帳/導入ソフトウェア管理台帳)、棚卸支援、システム管理、ITレポート、申請ワークフロー(オプション)などを、Azureによる強固かつスケーラブルなクラウドプラットフォーム上で提供する。また、IT資産管理情報やシステム制御情報、インベントリ情報といったデータを「Microsoft SQL Azure Database」(以下、SQL Azure)に格納。インベントリ情報については、「Microsoft System Center Configuration Manager」と連携して管理できる「オフラインインベントリ」を用意しており、ネットワークに接続されていないクライアント(Macにも対応)の管理も可能となっている。
台帳管理 | ワークフロー申請 |
インベントリ情報・ソフトウェア辞書 | 棚卸支援 |
さらに、クラウド版ならではの特徴として、SharePoint Onlineを活用したポータルサイト機能を提供している点も見逃せない。管理者は、ポータルサイトから、IT資産管理の全体状況を俯瞰(ふかん)することできるようになる。また、このポータルサイト機能は、利用者も使用することが可能で、更新されたハードウェアやソフトウェアのインベントリ情報を確認できるほか、不正・不明な情報の場合には事前にアラートを表示させるなど、業務をスムーズに行うための基点として活用することができる。
ポータル |
「Azureに対応することで、管理者だけでなく、現場の利用者も巻き込んだ全社レベルでのIT資産管理が可能となる。これにより、利用者のIT資産管理への意識向上やコンプライアンス違反の抑止、さらなる情報集約といった効果が見込める」(古宮氏)としている。
「PerfectWatch for Asset-LifeCycle Cloud Edition」の利用料金(税別)は、初期費用が4万円、月額費用が基本料金2万円(管理対象PC10台含む)、管理対象PC1台あたり250円となる。部署単位での利用から全社での利用まで、規模に応じたAzure構成をとることでコストを最適化でき、短期間で利用開始できるのもクラウド版の大きなメリットといえるだろう。
また、同社ではクラウドソリューションのビジネス拡大に向けて、無料の体験型ワークショップ「クラウド サービス☆クルーズ」を昨年12月1日から提供開始している。「クラウド サービス☆クルーズ」は、CSKグループが提供しているクラウドソリューションを、顧客の画面で実際に見て・触れて・体験してもらうためのサービス。各社の代表的なクラウドサービスを実際の画面で操作しながらデモンストレーションを行い、クラウド導入への検討の場を提供している。
「クラウドについては全社的にビジネスを推進しており、社員からクラウドソリューションのアイデアを募る『ソリューション提案制度』も実施している。現在、顧客からのニーズや要望をもとにした、さまざまなアイデアが寄せられており、商品化に向けた検討を進めている」と、古宮氏は、今後も積極的にAzureを活用したクラウドソリューションのラインアップを拡充していく考えを示した。
なお、同社では、東日本大震災の復興支援活動を行う自治体やNPOに向けて、「Microsoft Dynamics CRM Online」を活用したクラウドソリューション「復興活動支援クラウド」を3月31日から無償提供している。このソリューションでは、最小限のネットワーク環境とPC環境を用意するだけで、被災者からの要望や問い合わせを管理・情報共有し、被災者が日常生活を取り戻すための全体的な課題やニーズをスムーズに把握・管理することができるという。
震災発生後から約2週間後という素早いサービス提供を実現できた背景について古宮氏は、「震災が発生した2日後の3月13日には、すでに開発がスタートしていた。これは、被災地支援のために当社のクラウドソリューションを役立てたいという思いから、社員レベルで自発的に生まれた動きだった。また、これまでの導入実績から災害対策のテンプレートをもっており、それをベースに開発できたことも、迅速なサービス提供につながった」と説明している。