富士通研究所、仮想デスクトップ向けの高速表示技術を開発

動画などでのデータ転送量を削減可能


 株式会社富士通研究所は2日、仮想デスクトップ環境において、端末ユーザーの操作応答性能を向上させる高速表示技術を開発したと発表した。動画・高精細画像を扱う際のデータ転送量を従来の約10分の1に削減できるため、仮想デスクトップの用途をスマートフォンなどによるモバイル環境の業務、CADなどのグラフィック処理に広げられるようになるという。

 仮想デスクトップでは、社内外のクラウド環境で動作するデスクトップ画面のデータを、画面更新時にクライアント端末に送信し、リモートアクセスを実現している。この環境で、PC内にもともとインストールされているアプリケーションと同等の操作応答性を動画や高精細CAD画像で実現しようとするには、端末あたり10Mbps程度のデータ転送が必要になるという。

 しかし富士通が開発した仮想デスクトップ高速表示技術「RVEC(Remote Virtual Environment Computing:レベック)」では、画面更新が多い領域を抽出し、画面更新の頻度に応じて動画化領域と静止画領域に分類。それぞれの領域に適した圧縮方式を利用し、クライアント端末へデータを送信することで、すべての領域を静止画で圧縮・送信していた従来方式と比べて通信データ量が減少し、応答性能が向上する。

 また、CADのように直線が多用された画像向けに、CAD画像圧縮技術を開発した。この技術では、圧縮による画質劣化を回避して直線をクリアに表示しつつも、高効率に圧縮して転送可能。RVECの静止画圧縮方式にCAD画像圧縮技術を用いることで、CADでの配線や物体の輪郭がクリアに表示されるという。

 同社内のテスト環境(1280×1024ドット表示可能)において、1280×720ドットの動画を再生し、従来方式と同等の表示フレームレートで比較したところ、データ転送量を約10分の1の930Kbpsに抑えられたとのこと。また2次元CADの利用では、VNCで用いられているHextile圧縮方式と比べて約3倍の静止が圧縮率を達成できたとしている。

 なお同社では、2次元のCADについて社内試行を進めるほか、2011年度中に3次元のCADにも対応させ、同時に商用クラウドサービスへの適用を目指す考え。スマートフォンについても、モバイルからモバイル環境からセキュアに仮想デスクトップにアクセスするソリューションなど、さまざまなモバイルソリューションへの適用を検討するとのことだ。

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(石井 一志)
2011/5/9 12:15