サイレックス、USBデバイスサーバーの戦略説明会~世界のデファクトスタンダードに


 サイレックス・テクノロジー株式会社(以下サイレックス)は10月27日、USBデバイスサーバー製品の戦略説明会を開催した。

USBデバイスサーバーのデファクトスタンダードに

サイレックス・テクノロジー株式会社 代表執行役社長 河野剛士氏

 サイレックスの代表執行役社長 河野剛士氏は、OA業界で、プリンタサーバーを長く手掛けてきたが、これをUSB機器全般に広げていきたいということでUSBデバイスサーバーを開発。2009年からは、USBデバイスサーバー技術のライセンスロイヤリティ事業も米国企業2社にライセンスすることから開始。現在はライセンスロイヤリティ事業を日本市場で拡大しているところだと述べた。

 サイレックス執行役 PNS事業部長の伊藤信久氏は同社のシェアについて、新しい市場のため統計や調査データはまだないが、現在ルータの標準機能としてUSBデバイスサーバー機能を搭載する流れとなっていると説明。サイレックスのUSBデバイスサーバーを米国の大手ルーター機器メーカーのうち2社が採用、国内ではルーター機器メーカー大手5社のうち3社にOEM提供しており、さらに1社と現在話を進めているところだと述べた。

 伊藤氏は、サイレックスとしてはまずUSBデバイスサーバーのデファクトスタンダードとなれるよう努力したいとコメント。将来的にはIEEEなど国際標準化委員会への提案も視野に入れ、少しずつ社内の技術ドキュメントも整備していきたいとした。

USBデバイスサーバーの出荷数推移サイレックスのコア技術「USB Virtual Link Technology」
サイレックスのUSBデバイスサーバー製品ラインナップUSB Virtual Link Technologyのソリューション展開

USBデバイスサーバーからクラウドサービスに直結「N-TRANSFER」

 サイレックスのUSBデバイスサーバー事業は、従来からの(1)OEM事業、(2)障害解決支援も含めて提供するシンクライアント対応モデル事業、(3)ルーターへの機能組み込みの3つに加え、10月にNTT東西が販売開始した「N-TRANSFER」から始まった、クラウド対応モデルが4つめの柱として加わった。

 「N-TRANSFER」は、パソコンを経由せずにUSBデバイスサーバーから直接クラウドサービスにデータ送信することが可能で、現在クラウドサービスはEvernoteに対応。USBデバイスはPFUのスキャナ「SnapScan」シリーズと、エプソンのプリンタ「カラリオ」をサポートする。

 NTT西日本のサービスクリエーション部 木村吾郎氏は、「N-TRANFER」製品化について、「光ファイバー回線を家庭で活用するために、パソコンの操作に慣れていないユーザーにもクラウドサービスが活用できる方法としてUSBデバイスサーバー利用を考えた」と背景を説明。このため、パソコンでの設定をしなくても、携帯電話だけでバーコードを読み取って利用設定できるようにしたという。今後はEvernote以外のサービスや、USB機器についても対応機種を増やしていきたいとした。

 サイレックスでは、「N-TRANSFER」のようにクラウドとUSBデバイスサーバーを組み合わせて提供する新規ビジネスを推進し、今後事業の柱に育てたい考え。具体的にはたとえば、デジタルカメラメーカーはオンラインで画像管理サービスなどを提供しているが、専用のUSBデバイスサーバーを提供するなどの形が考えられるとした。

クラウド対応デバイスサーバー「N-TRANSFER」「N-TRANSFER」の使い方。携帯やスマートフォンだけで設定可能になっている「N-TRANSFER」今後の方向性
「N-TRANSFER」の機能(1)USBデバイスサーバー機能(2)P2Pデータ送受信機能(3)クラウドサービス接続機能

USBデバイスサーバー開発の経緯

 最後にサイレックスの執行役 開発部長兼ワイヤレス企画開発室長の宮本裕明氏がUSBデバイスサーバー技術とUSBデバイスサーバー開発の経緯などを説明。SXUPTPというドライバーソフトウェアが技術の核だとした。

 USB Virtual USB技術は一般的にはUSB over IPと呼ばれる技術のひとつで、これを用いてUSBプリンターだけでなくUSBスキャナーにも対応しようとしたのが開発の始まりだったと説明。USBメモリはマスストレージクラスなど、USB機器では共通のクラスドライバ規格が決まっているものも多いが、USBスキャナは共通規格がなく、ベンダークラスドライバとなるため、実際開発を開始すると機器ごとにドライバを開発する1対1対応となっているため、個別対応部分が多く、不具合のあった機能を利用できないようドライバーで塞いでいる場合などもあるなど、対応はかなりの苦労があったと述べた。

 また、機器直結が前提のUSBデバイスでは、遅延や通信途中でのデータ損失などを考慮していない場合も多く、データ損失もあり得るインターネットを介した通信で利用できるようにするというハードルもクリアする必要があったと説明した。

 今後の開発目標としては、現在ギガビットに対応しているがギガビットのパフォーマンスが100%出ているわけではないためより高速化する、シンクライアントでは送受信データの暗号化などセキュリティを強化する、NAT越え技術の開発、USB 3.0への対応やAndroid他の新OS対応などを挙げた。

SX Virtual LinkとUSBデバイスサーバー仮想USBポートをエミュレーションすることで、OS側からは通常のUSBポートに見えるルーターへの組み込み例。24時間電源が入っているルーターは、USBデバイスサーバー機能を組み込むのに最適だという
2001年に作った「PRICOM 7000 SERIES」プリントサーバーが始まりプリントサーバーだけではあまり売れず、スキャナにも対応することに。ただし標準ドライバがなく、機種ごとに対応が必要だったUSBスキャナはベンダークラスドライバーなので理論的には何でもつながるはずだった
USB機器は直結のため、ネット接続する機器と違って通信によるデータ損失などがあまり考慮されていないなど、問題は多かったアイソクロナス転送を行うUSB AudioやUSB Web CAMにも対応今後の開発テーマ。速度向上、互換性、安定性のほか、NAT越え、ハードウェアによる暗号化、USB 3.0対応など
関連情報
(工藤 ひろえ)
2010/10/27 16:42