米Microsoft、「Windows Azure Platform Appliance」発表~Azureによるオンプレミスクラウドサービスの独自構築が可能に
米Microsoftは12日、米国で開催されているWorldWide Partner Conferenceにおいて、「Windows Azure Platform Appliance」を発表した。
このアプライアンスに関して、米Dell、米eBay、富士通、米HPが同時に提携を発表した。
Windows Azure Platform Applianceは、一般的用途に適するクラウドサービス構築のための基盤部品となる。アプライアンスには、Windows Azure、 Microsoft SQL Azure、x64プラットフォームをベースに策定したレファレンス仕様を満たすハードウェア、ネットワークとストレージ設定が含まれ、一体化されてデータセンターにて使用される。アプライアンスは様々なパートナー企業から提供されることになる。
Microsoftが既に提供しているWindows Azure Platformの所謂パブリッククラウドとは異なる。このアプライアンスは企業がオンプレミスのクラウド、或いはプライベートクラウドを構築したり、サービスプロバイダーが顧客にクラウドサービスを提供するためのクラウドデータセンターを構築するために使用される。
Windows Azureを使用しているため、Windows Azure Platformで開発したアプリケーションを、Windows Azure Platformアプライアンスで構築したオンプレミスクラウドで動作させられるポータビリティーも担保されている。
アプライアンスは、クラウドのために徹底して標準化されている。サービスの可用性、自動管理機能、数千のサーバーを動作させるための電源、冷却、運用の効率化に関した仕様が提携ベンダーの協力の下で策定された。そのため、エンドユーザーはハードウエアや設定を変更できない。基本的にベンダーがアップデート作業を行う。またアプライアンス内のWindows Azure Platformは、Microsoftが適宜アップデートする。
このアプライアンスでは、サービスを容易にスケールアウトできるよう設計されている。そのため、米オークションサイト最大手のeBayは早速、Windows Azure Platformアプライアンス今年中に評価開始することを明らかにした。同社では、これによりデータセンターの効率を上げ、同社が使用している数万のサーバーに最終的には利用したい考えだ。
また、Windows Server製品等との差別化については、Windows Server、Hyper-V、System Center等は、Microsoftの顧客が高度にカスタマイズされた特殊用途のクラウドを構築するのに適する。一方、特殊なカスタマイズを必要としない一般的なアプリケーションには、Windows Azure Platformが適することになる。
Windows Azure Platformアプライアンスを使用すれば、顧客企業はクラウドを自社内に、物理的に保有でき、データも自社内に保管し、地理的なデータの分散や、国の違いによる規制当局の要求やコンプライアンス要求にも応えることができる。大企業や政府など、高度なコンプライアンスが要求される組織での利用が想定されている。
データの物理的な保存場所まで規定する必要がない一般的な用途には、パブリッククラウドであるWindows Azure Platformを利用できる。パブリッククラウドでは、Microsoftが日常的なハードウェア、ソフトウェアの運用を行い、すべてを委託できるメリットがある。
今回提携を発表した米Dell、米HP、富士通は、Windows Azure Platformアプライアンスを、自社ハードウェアに実装した上で、顧客企業にクラウドサービスを提供するとしている。またeBayは、プライベートクラウドに採用するユーザー企業となる。現在これらの企業にはリミティドプロダクションリリース版が提供されている段階だ。
Microsoftでは、現時点でWindows Azure Platformアプライアンスの出荷時期を含むロードマップを発表していない。提携企業やユーザー企業の反応に応じてロードマップを策定したい考えだ。