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レノボ、水冷AIインフラの検証拠点「Neptuneラボ」をMCDRのNRT12データセンターに新設
AI推論時代の高密度GPU環境に向け、実環境での検証と議論を推進
2026年5月28日 06:15
レノボ・ジャパン合同会社(以下、レノボ)は26日、MCデジタル・リアルティ株式会社(以下、MCDR)がNRT12データセンター(千葉県印西市)で運営する「MCデジタル・リアルティ イノベーション ラボ(DRIL)」内に、水冷AIインフラを実環境に近い条件で検証できる「Neptuneラボ」を、レノボとして日本で初めて開設したと発表した。このラボは水冷サーバーを動態展示し、そのファシリティを活用して日本における水冷技術の普及を議論し、推進する拠点となる。
Neptuneラボでは、レノボの水冷技術「Lenovo Neptune」と、ニデック株式会社の冷却液分配装置(CDU)、GPUサーバー、ラック、ネットワーク、監視システムを組み合わせ、AI推論・学習ワークロードにおける性能、電力、冷却、運用性を検証できる。これにより、企業はAI活用をPoC(概念実証)にとどめることなく、本番導入・スケールを見据えたインフラ設計やTCO検討を行うことが可能になる。
ラボでは、顧客やパートナー企業に対し、本番環境に近い検証環境を提供し、AIインフラ導入前のPoCを支援する。主な検証項目は以下の通り。
- Lenovo Neptuneを活用した高密度AI基盤(GPUサーバーなど)の性能・冷却・電力効率の検証
- ニデックのCDUを組み合わせた冷却ソリューションを活用した検証
- 顧客ワークロードを用いたPoC、推論/学習、ハイブリッド構成を含む検証
- GPUサーバー、CDU(冷却分配装置)、ラック、ネットワーク、監視システムの統合検証
- 電力、冷却、性能、運用データの取得・分析
- ハイブリッドクラウド環境との接続・運用性検証
- ISV、クラウド事業者、SIerとの共同検証によるリファレンス構成策定
これにより、顧客はサーバー単体の性能評価にとどまらず、ラック、冷却、電源、ネットワーク、監視を含むAIインフラ全体を事前に検証できる。PoCで得られた知見を本番環境の設計や運用に反映することで、AI基盤の導入リスクを低減し、スケールを見据えた計画的なインフラ整備が可能になる。
レノボはNeptuneラボを起点に、顧客、ISV、クラウド事業者、SIer、データセンター事業者との連携を拡大し、水冷AIインフラに関する知見を共有するコミュニティの形成を目指す。検証結果や設計ノウハウ、運用上のベストプラクティスを共有することで、AI推論時代に適したデータセンターインフラの普及を推進し、顧客のAI実装とイノベーション創出を継続的に支援していくとしている。
26日に行われた発表会で、レノボ・ジャパン合同会社 代表取締役社長の檜山太郎氏は、同グループの社是である「Smarter AI for all(すべての人に変革をもたらすAIを)」を掲げ、AI技術の恩恵をあらゆる環境へ届けることがミッションであると強調した。
国内におけるAIへの投資額は2023年から2027年にかけて2〜3倍に膨れ上がる見込みで、レノボも携帯電話からデータセンターまで「ポケットからクラウドまで」網羅するAI製品のポートフォリオを拡充しているが、市場の急成長に比例して深刻化しているのが「電力消費」の問題だと説明した。
檜山氏は、データセンターを含むAI関連の電力消費は、2030年までに約3倍に増加するという予測を紹介し、特に気候変動や天候リスクを抱える日本においては、このまま電力消費が膨らみ続ければ社会インフラに多大な影響を与えかねないと指摘した。「数多くの製品を扱うベンダーとして、電気の省電力化は非常に大きなテーマである」として、今回開設するNeptuneラボのように企業が連携しながら、日本の産業界にしっかりと貢献していきたいと語った。
続いてVTRで登壇した東京大学 情報理工学系研究科の江崎浩教授は、現在の潮流を「冷却技術というよりは、正確には『熱移動』の時代に入った」と説明した。
江崎氏は、かつてはCPUの熱を空冷技術で冷やしていたが、高密度なCPUやGPUが並ぶAI時代において、空気という熱容量の小さい媒体での冷却は本質的に限界を迎えていると説明した。「これまでのコンピューターは、ラジエーターを持たない空冷のバイクのような平和な時代だった。しかしその後、自動車が水冷に移行したように、ハイエンドサーバーも水冷への転換を迫られている」と語った。
気体から液体へと冷却媒体を変えることで、熱の移動パフォーマンス(クーリングキャパシティ)は約100倍に向上する。さらに、エネルギー効率の向上により、冷却に関わる消費電力を10分の1に削減でき、これにより、データセンターの経営を圧迫する電気代や水道代といったコストを劇的に改善できるとした。
インテル株式会社 執行役員 インダストリー事業本部 本部長の高橋大造氏は、「AIデータセンターの時代には、大量のGPUとともに複数のCPUを動作させることが不可欠となっており、半導体ベンダーとしても電力効率の向上に日々努めているが、それらを格納するサーバーやデータセンター側で、水冷により電力を下げる技術が今後極めて重要になる」と説明。顧客が実証できる環境として、Neptuneラボへの強い期待を寄せた。
レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ合同会社 代表取締役社長の張磊氏は、世界中で消費される電力の約3%はデータセンターが占めており、冷却はデータセンターのエネルギー消費の最大40%を占めることがあるという予測を紹介。Neptune水冷技術は、電力消費を40%削減し、サーバーの性能を最大化できると語った。
第6世代Neptune技術の特徴は、従来の冷水を使用する水冷とは異なり、システム入り口温度が45℃以上の水に対応し、わざわざ電力を消費して水を冷やす必要がなく、室温でそのまま冷却を循環できる点にある。また、冷却パーツに熱伝導率の高い素材を採用し、効率的な熱移動を実現している。環境への配慮でも、特殊なオイルや液体ではなく純水(蒸留水など)を使用している。
この技術により、同社のテスト環境では電力のほぼ100%を純粋なコンピューティングリソース(計算処理)に消費することが可能になっているという。さらに、従来のサーバーなどで問題となっていた騒音問題も解消でき、図書館並みの静音性を実現していると語った。
AI実証における最大のボトルネックは電力と熱となるが、NeptuneラボはMCDRが提供するデータセンター環境と、レノボのNeptune水冷技術が統合されることで、顧客はすぐにサービス提供が可能になると説明。このラボは単なる展示場ではなく、日本のデジタル競争力を支えるAI実証のエコシステムそのものだとした。
また、Neptuneラボでは今後、有識者会議を開催し、江崎教授をはじめとする有識者を交えて、単に今の技術を検証するだけでなく、データセンターが直面する未来の課題に向けた「明日のテクノロジー」の議論と共創を進めていく方針を明らかにした。
さらに張氏は、月額課金制でサーバーリソースを提供する「Lenovo TruScale」で、水冷サーバーを先着10セット・約35%OFFのキャンペーン価格で提供するプランを紹介。冷却費用削減、設置効率、静音性といった、Neptuneのメリットをぜひ評価してほしいとアピールした。
水冷エコシステムの必然性
発表会の後半に行われたパネルディスカッションでは、レノボ・ジャパン合同会社 常務執行役員 ソリューション&サービス事業部の山口仁史氏が、「これからのデータセンターがAI時代に生き残るため、水冷技術は必須である」と強調し、Lenovo Neptuneへの自負を示しつつも、水冷はサーバー単体で完結するものではなく、エコシステム全体の連携が不可欠であると訴えた。
これを受け、半導体の視点から登壇したインテル株式会社 インダストリー事業本部 シニア・ソリューションアーキテクトの土屋建氏は、昨今の発熱量および熱密度増大の背景にある2つのトレンドとして、「トークン長の長大化」と「エージェンティックAIの台頭」を挙げた。
トークン長の長大化は、生成AIにおいて、長文のPDF要約や長時間の会議テキスト化などのニーズが高まり、トークン長が伸びていると説明。これにより処理量やメモリの負荷が2乗で増加し、GPUやCPUに莫大な負荷がかかっているとした。
また、エージェンティックAIの台頭により、複数のAIが自律的に連携して動くシステムの普及し、GPUだけでなくCPUの負荷も爆発的に増加していると説明。「AIエージェントが増えるほど、CPUがボトルネックになりかねない」とし、プロセッサー全体の高性能化が熱問題をさらに深刻化させていると語った。
土屋氏はさらに、機能ごとに個別のチップを組み合わせる「チップレット」技術の普及により、内部での熱の不均衡が起きやすくなっていると言及。「これまで以上に熱の移動、そして冷却エコシステムとの協調が重要になる」と語った。
ニデック株式会社 精密小型モータ事業部 部長の酒井哲平氏は、水冷インフラにおける信頼性の担保について独自の強みを紹介した。ニデックはHDD用モーターの製造で培った精密加工技術を応用し、データセンターで回避しなければならない「漏水」のリスクを極限まで排除している。
酒井氏は、「空気よりも粒子が小さく漏れやすいヘリウムガスを密閉するHDDの検査技術を、CDUの出荷試験にも導入している。また、万が一の際にもシステムを止めない冗長設計や、稼働を維持したままメンテナンスできる工夫を施しており、何があっても水を止めないことで、チップのパフォーマンスを最大限に引き出せる」と語った。
データセンター事業者であるMCデジタル・リアルティ プロダクトマネジメント シニアマネージャーの杉政拓之氏は、「かつての空冷主体の設計から水冷への転換は、業界全体にとってもハードルが高い」と、ファシリティ側の苦労を説明した。具体的には、熱交換を行う水循環システムや配管設備の敷設、重量のあるCDUや水冷サーバーラックに耐えうる床耐荷重の確保、そして万が一の漏水検知体制の整備など、運用・設備の双方でクリアすべき課題は多いという。
MCDRはグローバルでの知見を生かし、国内でも早い段階から水冷対応を進め、すでに実績を積んでいると説明。杉政氏は「需要は今後さらに急速に拡大する。レノボ、インテル、ニデックといった業界をリードするプレイヤーと『標準化』を整備し、エンドユーザーが使いたい時にすぐ使える環境を準備することが重要だ」と提言した。
さらに、セッションの終盤では、設計段階からの密な連携がもたらすメリットが語られた。
ニデックの坂井氏は、GPUなどの急激な負荷変動に対し、初期段階からレノボと協力して水量・水圧・温度の制御性を磨き上げたと説明。熱を効率よく外部へ逃がす制御技術そのものが、データセンターの消費電力を抑え、サステナビリティに直結する貢献になると語った。
また、インテルの土屋氏はユーザー視点でのメリットを強調した。「CPUやGPUは熱くなると壊れないように自動的に動作周波数を下げる(サーマルスロットリング)ため、処理スピードが落ちてしまう。水冷による安定した冷却ができれば、動作周波数が安定し、AIサービスのレスポンス向上につながる。これは今後のAIビジネスの競争力において、顧客の満足度を左右する重要な要素になる」。
セッションの締めくくりとしてレノボの山口氏は「本日お集まりいただいた強力なパートナー企業と一丸となり、日本国内で水冷環境を検証できる極めて実践的な『共創の場』として、このNeptuneラボを活用し、日本のAI実装を強力に加速させていきたい」と結んだ。









