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NRI、AIエージェントの活用へ向けた業界・タスク特化型LLMの構築手法を高精度化

 株式会社野村総合研究所(以下、NRI)は27日、経済産業省と国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)が実施する、国内の生成AIの開発力強化を目的としたプロジェクト「GENIAC(Generative AI Accelerator Challenge)」第3期(2025年8月~2026年3月)の支援を受け、特定の業界や業務に特化した大規模言語モデル(LLM)の構築手法を高精度化・効率化したと発表した。

 このLLMをAIエージェントの仕組みに組み込み、金融業界の複数の業務で検証した結果、いずれもOpenAIが開発したChatGPT搭載の商用大規模モデル「GPT-5.2」を上回る精度を示しており、NRIはこの成果を活用し、多様な業界の企業に対して、AIエージェントを活用した専門業務支援に取り組んでいくとしている。

業界・タスク特化型LLM構築の流れ

 汎用的な生成AIモデルは幅広い業務で利用できる一方、特定の業界で求められる専門知識や独自の用語・規制への対応が難しいという課題がある。企業の実務では、法律やガイドラインなどを踏まえた専門的な判断が求められる場面が多く、こうした業務をAIで支援するには、業界や業務ごとに最適化されたモデルやAIエージェントが必要となる。

 NRIでは、これらの課題を解決するため、低コストかつ高精度で実務に対応できる「業界・タスク特化型LLM」の構築手法を独自に研究開発してきた。今回のGENIAC第3期では、これまでの研究成果をさらに発展させ、新たな構築手法を開発した。

 開発した手法では、一般に公開されているLLMを学習の土台(ベースモデル)として採用している。これにより、特定のモデルに固定されず、目的や業務に応じて最適なモデルを選択でき、将来のモデル更新にも柔軟に対応できる。

 今回は基礎性能が高い中規模の公開モデルを複数選定し、追加学習によってより専門的な知識を持たせたモデルが、業務プロセスを高精度に処理できるかを検証した。さらに、モデルの圧縮によって少ない計算資源でも稼働でき、圧縮後も精度が大きくは低下しないことを確認した。

 また、特定業界の専門知識をベースモデルに学ばせるため、二段階の仕組みを構築した。第一段階は、業界知識を含む大量のテキストデータを自動的に収集・選別し、モデルに専門知識を習得させる仕組み。第二段階は、業務に即した問答データを高性能なLLMを用いて自動生成し、モデルの応答精度を高める仕組み。これにより、対象とする業界を問わず、専門知識を備え、質問に対して的確に回答できる業界特化型モデルを容易に構築できるようになった。今回は金融業界を題材としてモデルを構築し、金融知識の理解度を測る標準テストでベースモデルを上回る精度を確認した。

 さらに、特定の業務に特化させるための学習用データについても、LLMを用いて自動生成する仕組みを構築した。少数の業務サンプルと業務の定義があれば、対象とする業務を問わず学習用データを容易に生成できる。今回は証券・保険の複数の実務を題材として検証した結果、いずれの業務においてもNRIが構築した特化型モデルが、商用大規模モデルのGPT-5.2を上回った。

 モデルの検証にあたっては、AIが複数の手順を自律的に実行するAIエージェントの仕組みに特化型モデルを組み込み、実際の業務手順を模した環境で試験を行った。その結果、業務プロセスの一部としてAIが担当者の判断を支援する使い方にも対応できることを確認した。

 NRIでは、研究成果の一部を、2026年3月に開催された言語処理学会第32回年次大会(NLP2026)にて発表した。また、構築した業界特化型モデルと学習用データをHugging Faceで公開している。NRIは今後、企業の専門的な業務プロセスをAIで支援するため、業界・タスク特化型モデルを組み込んだAIエージェントの導入・展開を進めていく。開発した手法は金融以外の業界にも適用可能であり、多様な業界や業務への拡大を図ることで、汎用モデルでは対応の難しい専門領域のAI活用を推進していくとしている。