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富士通、「Fujitsu Technology Update」で独自開発指向を明確にしたテクノロジーや研究戦略をアピール
2025年12月3日 06:15
12月2日、富士通は「Fujitsu Technology Update」を開催。現在のテクノロジー戦略と、研究戦略を発表した。基本スタンスとしてエンタープライズユーザーに必要なSovereign Platformを提供し、富士通の独自AIであるKozuchi、AI向けに独自開発した半導体MONAKA、量子コンピューティングなどのコンピューティング技術、 ネットワークといった、AIに必要な要素を富士通製で提供していく考えをあらためてアピールした。
富士通の執行役員副社長 CTO、ヴィヴェック・マハジャン氏は、「世界をリードするメイド・イン・ジャパンの最先端コンピューティングによって、グローバルをリードしていくことを目指す」とアピールした。
富士通の技術戦略についてマハジャン副社長は、「5年間ずっと、AIを中心とした技術戦略をとってきた。我々がターゲットとするエンタープライズにおいては、Sovereign AI Platform、Sovereign Infrastructureを実現する技術をフルスタックで提供していくことが求められている。我々はソフト、ネットワーク、コンピューティング、データ、セキュリティといったプラットフォーム全体を提供していく」ことを強調した。
AI戦略として、企業ニーズに合わせたエンタープライズ特化型の最新AI技術を提供。ターゲットとして、Sovereign AI Platformが不可欠な、防衛、行政、ヘルスケア、金融、製造向けにビジネスを進める。独自AIのKozuchi、大規模言語モデルTakaneなどを活用したエンタープライズ生成AIプラットフォームによって生成AIを再構築し、ナレッジグラフ拡張RAGを強化していく。
ロードマップとして、2030年時点でKozuchi6.0としてメタ学習と自己進化型モデルになったTakane6.0によって、マルチAIエージェントによる自己組織化、サイバー神経免疫、自己進化型セキュリティの実現などを目指す。
2026年に登場予定の国産プロセッサ「MONAKA」は、富士通が設計したマイクロアーキテクチャ、低電圧技術など富士通独自技術によって実現される。
「MONAKAは、8月に発表した富岳Nextのベースとなる。AIの世界で一番強いCPUとすることを狙う」(マハジャン副社長)と、メイド・イン・ジャパンの最先端コンピューティングを実現するCPUとして開発を進めている。生産については、2027年リリース予定の2nmはTSMCとなるが、2029年リリース予定の1.4nmはラピダスで生産することを検討しており、文字通り「メイド・イン・ジャパン」のAI用プロセッサとなる見通しだ。
量子コンピューティングの研究開発戦略についても、メイド・イン・ジャパンの大規模量子コンピュータ構築のトッププレイヤーとして、理化学研究所、富士フイルム、東京エレクトロンと共同研究を進める。
マハジャン副社長は量子コンピュータについても、「2035年時点で、1000論理ビットの量子コンピュータ開発を狙う。量子とHPCの両方の研究・開発を進めているのは富士通だけではないか」と優位性を訴えた。
また、「AIには欠かせない技術」として、ネットワーク技術についても「Photonic System」「Mobile System」「Network Orchestration」「Data Centric Infrastructure(DCI)」の4分野での研究・開発を進めていく。将来のキートレンドとなる、分散型データセンター、6G and Beyondなどの時代においても独自技術によって対応する考えを示した。
富士通が取り組んでいる主な技術の研究の方向性
続いて、富士通の執行役員常務 兼 富士通研究所所長の岡本青史氏は、富士通が取り組んでいる主な技術の研究の方向性を紹介した。
AIについては、Takaneをエンタープライズ向け生成AIとしてベストチューニングできる企業向けLLMとして提供。領域特化、企業データの理解力、挙動の信頼性向上などの進化を進めていくという。
Kozuchiは、AIプラットフォームとして最新技術を搭載したAIをクラウドで提供する。今後は、AIエージェントの高品質化やセキュア化、ワークフローの自動化といった進化を目指していくとした。
また、「開発・運用コストの増大、消費電力の増加、エッジAI対応のニーズという3つの課題を解決することがSovereign AIにおけるテーマ。スケーリングからコンパクトへと、軽量化、省電力化を実現したTakaneが求められている」として、1ビット量子化技術をOSSとして12月2日から公開した。
ナレッジグラフ拡張RAGは、企業内に存在するさまざまな業務データをナレッジグラフとして構造化する。AIが読み込むのが不得意な図表入り文書検索精度でNo.1となったほか、入力データをグラフと時間軸で最適化し50倍高速化。また、状況や実行結果に応じてナレッジグラフやプロンプトを自己改善するなどの進化をしている。
Kozuchi AIプラットフォームの強化としては、NVIDIA NeMoやNIMと富士通のTakane、セキュリティ、マルチAIエージェント技術を融合することで、機密性の高い業務ワークフローの高信頼な自動化を実現した。FUJITSU-MONAKAとNVIDIA GPU、NVLink Fusion連携で、グローバル標準のセキュアなAI基盤を提供する。
生成AIに潜む脆弱性やリスクを自動でチェックし、防御するAIセキュリティの分野にも力を入れており、10月からは、「Fujitsuクラウドサービス Generative AI Platform」に搭載し、すでに提供しているという。
加えて、データの組み合わせが膨大になり、計算が困難な場合や、目的を実現する施策の提示が困難な場合などに、原因と結果の因果関係を探索・推論する技術「因果AI」にも取り組む。同社では現在、ヘルスケア、マーケティング、商品開発、経営などの分野での活用を見込んでいる。
マルチAIエージェントフレームワークは、サプライチェーンの中で、AIエージェント同士でクロスインダストリーの最適化、調整、判断を可能にする技術。ロート製薬がサプライチェーン最適化のために実証実験を進めている。
デジタルフェイク対策は、フェイクニュースや誤情報による社会的、経済的損失を回避するために不可欠な技術だ。ディープフェイク検知、SNSファクトチェック、文書整合性・エビデンスチェック、クロスモーダル矛盾検知などのアプリケーションに搭載され、フェイクを高精度に見抜く技術によって、デジタルフェイクによる問題回避を実現する。
また、偽情報、AIガバナンスなど新たなAIリスクに対応していくための国際コンソーシアム「Frontria」を12月2日付けで設立した。現在、金融、コンテンツ、エンタメなどさまざまな業界から57組織が参画している。
64/256量子ビット超伝導量子コンピュータの開発では、2026年12月に世界最大級1024量子ビットの超伝導量子コンピュータ開発を行うFujitsu Technology Park量子棟が誕生する予定であり、「量子技術実証のテストベッドとして幅広く活用すると共に、MONAKAとのハイブリッド環境で、量子、HPCテクノロジーを研究、実証などを行う場として活用していく」(岡本執行役員常務)という。
これ以外にも、人々の動きを高精度に予測しデジタルで再現するソーシャルデジタルツイン、海をデジタル化して再現することで課題解決のための施策の立案、検証などを行う海洋デジタルツイン、産業分野だけでなく人間とロボットの共生を模索した空間ロボティクス、衛星画像を地上へリアルタイム配信し活用していく宇宙データオンデマンド、防衛・次世代通信など、富士通が研究開発を進めている分野の成果を会場で公開。デモンストレーションなどによって活用場面等を紹介した。




















































