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IIJ、松江DCPで新規のシステムモジュール棟を運用開始
2025年6月25日 06:00
インターネットイニシアチブ(IIJ)は、松江データセンターパーク(松江DCP)のサイト1で、システムモジュール棟の運用を6月から開始した。6月20日の竣工式では、松江市の上定昭仁市長らも迎えて神事が執り行われた。
松江DCPは、2011年4月からサイト1、2013年からサイト2と、いずれもコンテナ型データセンターを運用している。その知見を元に、直接外気冷却方式を採用したシステムモジュール棟を千葉県白井市の白井DCCに開設しているが、松江DCPでもモジュール棟の運用を開始した。これについてIIJの橋本明大氏(データセンターサービス部 部長)は、「空調や電力の効率を考えると、モジュール棟の方が有利だ」としている。
システムモジュール棟の概要
サイト1に新設されたシステムモジュール棟は、建物面積が約2000㎡、300ラック規模の収容スペースを有している。企業のDX推進やAI利用の浸透などに伴って、需要が拡大している自社サービス用設備の収容施設として活用する。また、松江DCPは、デジタル田園都市国家構想で求められる地方デジタル基盤の核となるデータセンターとして、地域のネットワークインフラ強靭化に寄与するという。
電気設備は高効率の三相4線式UPSで、最大受電容量は2サイト合わせて4000kVA。空調方式は基本的には白井DCCと同様で、軒天の外気取り入れファンで空調機械室に外気を取り入れ、冷風は壁から横吹き出し。ホットアイルコンテインメントで、廃熱は天井裏へ送る。中間期は外気をそのまま供給し、冬期は外気と廃熱を混合して適切な温湿度にして供給。夏期は冷却器を稼働させる。
橋本氏によれば、白井DCCでの実績を元に、細かい運用面をいくつか改善している。例えば、サーバー室(通信設備機械室)と外部との気圧差を調整して、空調効率を上げる取り組みなどだ。設計PUE値は1.2台。
災害時に地域への電力供給インフラとして蓄電池を提供
松江市は、東電管内に比べると電力供給に余裕があり、データセンターの立地として優位性があるという。さらに、環境省公募事業である脱炭素先行地域に松江市の共同提案者として参画し、その補助金を活用している。
脱炭素先行地域とは、2050年カーボンニュートラルに向けて「地域脱炭素ロードマップ」に基づいて環境省が公募しているもの。少なくとも100カ所で地域課題を同時解決し、住民の暮らしの質の向上を実現しつつ、脱炭素に向けた取り組みの方向性を示す。
具体的には、松江DCPのモジュール棟でバックアップ用UPSとして導入する大容量リチウムイオン蓄電池を、災害時における地域への電力供給インフラとして提供する。データセンター自体は市街地や観光地からは離れた場所にあるが、電気自動車で電力を避難所等に運ぶことが想定されている。島根県内は観光地でもあるため、避難所には近隣住民だけでなく観光客も避難すると考えられる。そのような場所で、空調など最低限の電力を供給できる。
IIJでは、UPS設備を用いた電力の取り組みを白井DCCで実証しているが、政府によるデジタルインフラの地方整備方針の観点からも、地域とデータセンターが連携するロールモデルとして取り組みを推進している。