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防災科研、富士通、SDS、三菱電機の4者、衛星データ活用による災害対処の枠組み「日本版災害チャータ」サービス開始に向けた共同研究契約を締結
2025年5月23日 12:08
国立研究開発法人防災科学技術研究所(以下、防災科研)、富士通株式会社、衛星データサービス企画株式会社(以下、SDS)、三菱電機株式会社の4者は22日、内閣府と企業が協力し進める衛星データを活用した災害対処の体系的な枠組み「日本版災害チャータ」による本格サービス開始に向け、実運用スキームの高度化を目的とした共同研究契約を5月15日に締結したと発表した。共同研究のもと、4者は「日本版災害チャータ」の事務局機能強化、システム改善を行う。
地震や水害などの広域災害発生後の初動対応や復旧・復興作業時に、迅速に被災状況の全容を把握することは非常に重要となる。地球観測衛星が取得する衛星データは、一度に広範囲の被災状況を把握でき、災害時の活用に効果が期待される一方、衛星データ解析事業者などのデータ解析機関だけでは、多種多様な衛星データの解析や予測不能な災害に24時間・365日対応できず、特に自然災害が多発する日本において、衛星データを効率的に活用する枠組みの構築が求められていた。
「日本版災害チャータ」は、災害発生時、日本および海外が運用する地球観測衛星で被災エリアを迅速に観測し、災害対応機関や指定公共機関、自治体、民間事業者等などユーザーの要請に応じた解析データを速やかに提供することを見据えた枠組みで、内閣府と企業が連携し、この枠組みによる情報提供サービスの開始を目指している。「日本版災害チャータ」のサービスを利用することで、ユーザーは災害発生後の被災状況の全体像を速やかに把握でき、迅速な初動対応や効率的な復旧・復興作業が可能となる。
4者は、2023年度から2024年度の内閣府BRIDGE事業「衛星観測リソースを結集する『日本版災害チャータ』の構築と実証」において、衛星データを取得、解析、提供するシステムの開発をはじめ、システム運用を担う「日本版災害チャータ」事務局の組成や運用プロセスの実証、官民連携によるビジネスモデルの検討や課題の抽出を行ってきた。
今回、新たに締結した共同研究契約により、4者はこれまでに構築を進めてきた「日本版災害チャータ」の事務局機能や、事務局が運用する情報提供システムである「衛星ワンストップシステム」をさらに高度化する。事務局機能に関しては、官民連携ビジネスモデルの検討、衛星データ共通解析機能の強化、衛星データ等を迅速に共有するシステムの高度化を行う。
また、情報提供システムに関しては、災害発生検知から衛星タスキング指令発行までのプロセスを自動化し、これまで手作業だった調整フローを省略することで、初動対応時に必要となる被災状況の解析結果提供までの時間を大幅に短縮することを目指す。これらの取り組みを通じて、「日本版災害チャータ」の実運用スキームを高度化し、社会実装に向けた取り組みを加速する。
共同研究の期間は、2025年5月15日から2026年3月31日。共同研究では、「日本版災害チャータ」事務局機能の強化、「衛星ワンストップシステム」の高度化、ユーザーなどとの訓練や実災害における実証実験を通じた実運用スキームの検証を行う。
防災科研は、ユーザーなどとの訓練や実災害における実証実験の計画・推進取りまとめ、社会実装の牽引を担当。富士通は、「衛星ワンストップシステム」の高度化および訓練、実災害時における運用支援を担当する。
SDSは、民間事業社主導での自動タスキングおよびデータ連携基盤の構築・検証、事務局機能の高度化を担当。三菱電機は、衛星データの共通解析機能の強化および実証実験の支援、官民連携ビジネスモデルの検討推進を担当する。
4者は、共同研究の成果をもとに、2025年度から「日本版災害チャータ」による実証サービス提供開始と、将来的には、24時間・365日対応へのサービス拡張を目指す。また、「日本版災害チャータ」を通じて、災害対応における衛星データの利活用拡大を図るとしている。