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2025年の国内第3のプラットフォーム市場は27兆7040億円規模、IDC Japan調査
2025年5月22日 13:21
IDC Japan株式会社は21日、国内第3のプラットフォーム市場について、2025年~2029年の市場予測を発表した。国内第3のプラットフォーム市場の市場規模(支出額ベース)は、2025年が27兆7040億円で、前年比成長率は9.0%になると予測している。
第3のプラットフォーム市場には、クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術の4つの主要技術(4ピラー)から構成される技術プラットフォームと、4ピラー上に展開され、事業成長を促進する技術となる「イノベーションアクセラレーター」としてIDCが定義する、AI、AR/VR、IoT、ロボティクス、3Dプリンティング、次世代セキュリティ、ブロックチェーンの7つの技術のうち、従来のICT市場に該当するハードウェア、ソフトウェア、サービス、通信サービスが含まれる。
同市場の状況としては、米国の貿易関税施策について、中国など一部の国を除き高額の関税は90日間停止されており、今後米国と各国間で交渉が行われていることから、日本国内におけるIT/デジタル支出への影響は比較的軽微と予測している。地政学的な不確実性や、インフレを契機とする経済悪化のリスクといった不安要素はあるものの、レジリエンスの強化や脱炭素化の取り組みに積極的な産業や企業が牽引する形で、デジタルビジネス向け投資が継続すると見ている。2029年には市場規模が33兆1614億円に達し、2024年~2029年の年間平均成長率は5.5%になると予測している。
市場を産業分野別に分析すると、2025年は消費者の行動がその業績に直接的な影響を及ぼしやすい、「小売り」「運輸」「個人向けサービス」といった産業分野における第3のプラットフォームへの支出額が、企業分野全体の平均を上回る成長率となる。過去最速ペースのインバウンドの伸長にも支えられ、消費者の経済活動がより活性化することで、小売り、運輸、個人向けサービス業を中心とした企業の好業績が見込まれ、2025年はこれらの企業の財務状況の改善に支えられる形で、顧客エクスペリエンスに重点を置いたパーソナル化施策や、オムニチャネルコマースプラットフォーム構築に向けた投資が活発化すると予測している。
「金融」分野では、業態を問わず、業務効率化やサービス高度化を目的としたIT/デジタル投資が加速していると指摘。Generative AI(生成AI)を含むAIを活用した生産性向上や、顧客情報基盤の整備、デジタルチャネル強化が共通の重点領域で、インフラのモダナイゼーションやクラウド活用も広がっている。特に、大手の金融機関を中心に、営業チャネルとデジタルチャネルの融合、新サービスの創出、異業種とのエコシステム構築に向けた取り組みが進展しており、一方で、地域金融機関では第3のプラットフォームへの支出は低成長にとどまるが、地方創生を支援するクラウド基盤構築などの動きも見られるとしている。
「製造」分野では、組み立て製造者において、人手不足や人件費上昇を背景とした製造プロセスの自動化や、品質検査、検品業務へのAI適用に加え、サプライチェーンの最適化や工場のサイバーセキュリティ強化の取り組みが進展すると予測。製品開発領域における生成AIやシミュレーションツールの活用も広がるとしている。また、巨大なプラントを抱えるプロセス製造業者においては、設備保守の効率化やGX(Green Transformation)対応を目的としたテクノロジー支出が継続。消費財系のプロセス製造業者においては、顧客データを活用した製品開発や顧客エクスペリエンス向上に向けた投資が進むとしている。
「中央官庁」「地方自治体」では、デジタル庁が主導するデジタルガバメント政策に基づく情報連携基盤の整備、デジタルサービスの拡充や、地方自治体における業務システムの標準化/共通化が進んでいる。2025年度末(2026年3月)の期限までに標準化対応が完了する自治体のIT支出は落ち着く一方、政令指定都市を中心として移行に遅れを生じる自治体が一定数見込まれることに加えて、デジタル田園都市国家構想に基づく政策や、標準化対応から解放される人的リソースを活用した各自治体独自のデジタル施策向けの支出が進むことから、2026年の地方自治体における支出もプラス成長を維持すると予測している。
IDC Japan Verticals & Cross Technologiesのリサーチマネージャーである敷田康氏は、米国の貿易関税施策の影響を最小化するための企業の対応策が、ITサプライヤーにとっては、サプライチェーンのレジリエンス強化を切り口にしたさまざまなソリューションの提供機会を拡大する契機となることを踏まえ、「ITサプライヤーは、それらのソリューションの『システム導入支援事業者』にとどまるのではなく、『システム導入支援事業者』として顧客企業の意思決定を支援する立場で提供することで、サプライチェーンマネジメントやリスク管理といった領域における提案の幅が広がり、IT/デジタル支出の重点領域として中長期的なビジネスの拡大を見込むことができる」と述べている。