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第2回「ビジネスクラウド総合評価調査」の狙いと評価ポイントを探る

前回に引き続きNTTコミュニケーションズが高評価を獲得

 MM総研は、ビジネス向けクラウドサービス(IaaS/PaaS)の導入が急速に拡大する中、昨年に引き続き「ビジネスクラウド総合評価調査」を実施し、2月12日にその結果を発表した。

 2回目となる今回の調査では、クラウドサービスの基本性能に加え、信頼性・安全性、導入・運用管理など、総合的な評価を行い、NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)、IIJ、日本IBM、富士通、KVH、IDCフロンティア、アマゾンデータサービスジャパン、GMOクラウドの8社が最高水準の格付けとなる総合評価AAAを獲得している。

 今回の「ビジネスクラウド総合評価調査」の狙いや傾向、またAAAを獲得した企業の評価ポイントなどを、MM総研 ネットワーク・ソリューション研究グループ 執行役員 研究部長の渡辺克己氏に聞いた。

「ビジネスクラウド総合評価調査」とは?

MM総研 ネットワーク・ソリューション研究グループ 執行役員 研究部長の渡辺克己氏

 「ビジネスクラウド総合評価調査」は、企業の情報システム基盤や災害時に継続運用できる社会基盤に適したサービスを選定するという視点から、クラウドサービスの実力を客観的に評価することを目的に、昨年、同社が初めて実施したものだ。

 「従来までのクラウドサービスは、価格や機能性、使いやすさといった点だけで評価されるケースが多かった。しかし、実際に企業のシステム基盤として活用するには、信頼性や可用性も重要になる。そこで、クラウドサービスを総合的に評価する必要があると考え、この調査を開始した」と、渡辺氏は「ビジネスクラウド総合評価調査」を行う狙いについて説明する。

 MM総研では、第2回「ビジネスクラウド総合評価調査」の実施に先立ち、昨年8月に国内クラウドサービスの市場規模・予測と需要動向に関する調査を実施。その結果、情報投資全般が伸び悩む中で、国内クラウド市場は急成長を続け、2017年度には市場規模が2兆円に達する見通しが明らかになった。

 そして、新規システム導入時にクラウド活用を優先的に検討する法人ユーザーが7割に達するなど、「クラウドファースト」が浸透してきている実情が浮き彫りとなったほか、今後は、プライベートクラウド分野が大きく成長していくことが見込まれているという。

43項目から70項目へ、大幅に評価項目を増やした第2回

 この調査結果を踏まえて、第2回の「ビジネスクラウド総合評価調査」では、クラウドサービス(IaaS/PaaS)を提供する企業の中から、優良サービスを提供する20社を評価対象として選定。「パブリッククラウドのサービス機能・品質」、「プライベートクラウドのサービス機能・品質」、「サービス料金」、「導入支援・運用管理」の4つの分野にフォーカスを当て、総合的に評価を行った。

 渡辺氏は、今回の評価ポイントについて、「昨年8月の調査結果から、国内企業の多くがすでにクラウドサービスを導入し、実際に運用段階に入っていることがわかった。そこで、今回の調査では、クラウドサービスの導入支援や運用管理にかかわる項目を評価に反映させたいと考えた。また、パブリッククラウドのニーズが拡大していることを受け、パブリッククラウドについても適正な評価ができるように評価項目を拡充した」と述べている。

 具体的には、プライベートクラウドのサービス機能や導入支援・運用管理、セキュリティ、ハイブリッド環境対応、およびパブリッククラウドのサービス機能や品質に関する項目を新たに加え、前回の43評価項目から70評価項目へと大幅に項目を増やし、より多角的な視点からクラウドサービスの総合調査を実施した。

8社のサービスが最高のAAA評価を獲得

 こうした新たな評価軸の下で行われた第2回「ビジネスクラウド総合評価調査」では、NTT Comの「Bizホスティング」、IIJ「IIJ GIOサービス」、日本IBM「SmarterCloud」、富士通「FUJITSU Cloud Initiative」、KVH「KVHクラウドソリューション」、IDCフロンティア「IDCフロンティア クラウドサービス」、アマゾンデータサービスジャパン「Amazon Web Services(AWS)」、GMOクラウド「GMOクラウド Public/Private」の8社のクラウドサービスが総合評価AAAを獲得。前回との比較では、IIJ、IDCフロンティア、アマゾンデータサービスジャパンの3社が新たにAAA評価に加わった。

 この3社の評価について渡辺氏は、「IIJとIDCフロンティアは、サービス機能・品質に加えて、導入支援・運用管理などソリューションサービスが高く評価されたことが、AAA評価につながった。また、今やパブリッククラウドサービスの指標にもなっているアマゾンデータサービスジャパンの『AWS』がAAAを獲得したことは、今回の調査の大きなトピックといえる。『AWS』は、パブリッククラウドとしてのサービス機能・品質、料金が高く評価されたことに加え、Amazon VPC(仮想プライベートクラウド)機能や運用支援サービス、パートナー制度についても一定の評価を得た」と述べている。

 また、今回AAAを獲得した8社の中でも、導入支援・運用管理サービスが充実している企業ほど、総合評価ポイントが高い傾向にあったという。「NTT Com、IIJ、日本IBM、富士通の4社が、総合評価ポイントで上位に位置している。これらの企業に共通しているのは、SI能力が高く、導入から運用、サポートまで含めてワンストップでクラウドサービスを提供できること」と渡辺氏が指摘したように、SIerがオンプレミス環境で蓄積してきたSI能力や導入支援・運用管理ノウハウ、サポート力は、ビジネスクラウドにおいても大きな差別化になってきているといえそうだ。

全領域での強みを提供できるNTT Com

 そして、今回の「ビジネスクラウド総合評価調査」で、特に高い評価を得たのがNTT Comだという。「NTT Comは、前回の調査で総合評価第1位となっているが、今回もその評価は変わらず、非常に高い総合評価ポイントを獲得している。同社の『Bizホスティング』は、プライベートクラウドのサービス機能・品質、サービス料金、導入支援・運用管理など各分野で高い評価を得た」(渡辺氏)。

 渡辺氏は、NTT Comの強みについて、「エンタープライズ向けのプライベートクラウドサービスから、低価格のクラウド型ホスティングサービス、さらにはパブリッククラウドサービスまで、あらゆるニーズをカバーするフルラインのクラウドサービスを展開している。ここまで幅広いクラウドサービスをメニュー化して提供できている企業は、国内ではNTT Comの他にはないはず。これに加えて、自社で高品質なデータセンターやネットワークインフラを保有しているため、価格競争力が高いクラウドサービスを提供できる点も大きな強みになっている」と分析する。

 実際に、AAA評価を獲得した他の7社を見てみると、IIJはコンテンツプロバイダ向けに特化したサービスを先行させて、一般企業開拓を進めており、日本IBMと富士通はもともとSIerのため、大企業向けのプライベートクラウドサービスが中心。KVHとIDCフロンティアは、データセンター事業者として高品質・高価格のクラウドサービスを展開する一方、残るアマゾンデータサービスジャパンとGMOクラウドは、パブリッククラウドサービスがメイン。各社がフォーカスしたエリアでクラウドサービスを提供しているのに対して、NTT Comでは全方位をカバーするクラウドサービスを展開しているのである。

 「ビジネスクラウド総合評価調査」の結果については、エンドユーザーからの反響も大きいという。「今回AAAに評価されたクラウドサービスについて、『数年前には、あまり評価が高くなかったサービスがAAAを獲得していることに驚いた』という声も寄せられた。それほど、クラウドサービスの市場は急激に変化している」と渡辺氏は指摘する。

 また、「今後は、ハイブリッドクラウドへの対応力が重要な評価ポイントになってくるのではないか」と、ユーザーニーズに合わせて、今後もビジネスクラウドの評価項目は変化していくとの考えを示した。

 今、クラウドサービスの導入を検討している企業にとって、MM総研の「ビジネスクラウド総合評価調査」は、クラウドサービスの評価・選考を行うファーストステップとして、重要な参考材料になるといえるだろう。

唐沢 正和