日本IBMが新ストレージビジョンを発表、ビッグデータ活用を支援

Storwize V7000などにリアルタイム圧縮機能を提供、今後もビジョンに従った機能強化を


 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は5日、増大するデータの効率的な活用とコスト削減を支援するビジョン「スマーター・ストレージ」を公開した。これに基づき、ミッドレンジSANストレージ「IBM Storwize V7000」などにリアルタイム圧縮機能を追加したほか、インライン重複排除アプライアンス「ProtecTIER」でのCIFSサポートなどを発表している。

 「スマーター・ストレージ」では、1)開発・設計段階から極限まで追求された効率性、2)自律的に最適化、3)クラウドの俊敏性――の3つを主軸として、今後のストレージ製品提供の方向性を示したビジョン。システム製品事業 ストレージ事業部の勝俣正起事業部長は、「スマーター・ストレージは、(当社がこれまで提唱してきた、システムの最適化を実現する)スマーター・コンピューティングの概念を引き継ぎ、ストレージで提供するものだ」と、これを説明する。


スマーター・ストレージとそれを具現化する製品群システム製品事業 ストレージ事業部の勝俣正起事業部長

 その中でも1)の効率性の例が、ストレージ仮想化を実現する「SANボリュームコントローラー(SVC)」やStorwize V7000に導入されたリアルタイム圧縮機能となる。NAS製品についてはすでにインラインのデータ圧縮機能が提供されていたが、今回、SVCとStorwize V7000向けに提供されるストレージOSの新版「IBM Storwize V7000 Software V6.4」「IBM SAN Volume Controller Software V6.4」から、SANのブロックデータについても最大80%のデータ圧縮に対応した。

 特徴的なのは、アーカイブデータなどの静的なデータだけでなく、現在活用されている“ホットな”データに対しても効率的な圧縮を行える点。ストレージ・テクニカル・セールス ソリューション担当部長 システムズ&テクノロジー・エバンジェリストの佐野正和氏は、「アプリケーションからは完全な透過性を提供しているし、ひんぱんに更新するようなオンライントランザクション系でもスピードを落とさずに圧縮機能を利用できる」と、自社の技術をアピールする。

 この圧縮機能はオプション扱いだが、Storwize V7000については45日間利用できる無償トライアルライセンスも提供される。圧縮機能の価格は、Storwize V7000の場合で135万円(税別)から、SVCの場合で1TBあたり30万4800円(税別)から。


Storwize V7000などに追加されたリアルタイム圧縮機能ストレージ・テクニカル・セールス ソリューション担当部長 システムズ&テクノロジー・エバンジェリストの佐野正和氏

 また、SVCとStorwize V7000、ハイエンドストレージの「DS8000」では、他社製品を含めた多くのストレージをコントロールして仮想ストレージ環境を構成できる上、アクセス頻度などを分析して、SSDやHDDへデータを自動再配置するストレージ階層化機能「Easy Tier」も搭載されている。これが2)の自律的な最適化の例だが、今後はさらに、サーバー内蔵のSSDなど、ローカルなストレージを含めた自動階層化や、アプリケーションの要件に応じた階層化対応も開発し、追加機能として搭載するという。

 特にサーバー内蔵のストレージが対応すれば、既存資産を生かした最適化が可能になるし、こうした最適化機能などがミッドレンジ向けのStorwize V7000にも搭載されているため、従来はハイエンドストレージでなければ利用できなかった機能が、中堅・中小企業でも手が届くようになる。データ爆発は大企業だけの課題ではないことから、日本IBMでは、こうした機能やそれによるメリットを訴求し、中堅・中小企業に対しても自社のストレージ販売を推進したい考え。

 そのために、大企業を中心としたコンサルティングだけでなく、販売パートナーと連携したストレージ環境の簡易分析プログラム「Smash」などをメニュー化し、中小企業にも働きかけていくとした。


アプリケーションの要件に応じた自動階層化機能を今後提供する予定ストレージ環境の簡易分析プログラム「Smash」などを提供していく

 3)のクラウドの俊敏性では、「クラウド環境に適用できるストレージ」と「ストレージ自身がクラウドとして機能すること」の両面から機能強化が行われる予定。前者については、複数のNAS製品をあたかも1台のNASであるかのように運用する機能を、すでにクラスタNAS「IBM SONAS」で実現しているが、これを、Storwize V7000にNAS機能を追加した「IBM Storwize V7000 Unified」でも今後、利用できるようにする。これによって、SONASとStorwize V7000 Unifiedが混在する環境でも、ユーザーからは単一のNASとして利用可能になるとのこと。

 また後者については、Storwize V7000がシェルフ4台(ユニット40台)までの拡張に対応。クラスタリング/ボリューム移動機能が搭載され、アプリケーションが稼働中であっても、自由にボリュームが移動可能になった。

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