日本IBM、ユニファイドストレージやクラウドポータル新製品

中小企業のクラウド自動化を支援


発表のポイント。クラウドの標準化・自動化、低価格な課金の仕組みを提供する

 日本IBMは21日、クラウド管理の標準化・自動化を支援する新製品を発表した。新たにミッドレンジのディスクストレージ「IBM Storwize V7000 Unified(以下、V7000 Unified)」と、セルフサービスポータルと課金機能を提供するソフト「IBM Starter Kit for
Cloud(以下、Starter Kit)」を11月より順次発売。中小企業におけるクラウドの標準化・自動化を支援する。


ファイルデータの自動再配置も可能なユニファイドストレージ

V7000 Unifiedの概要。SAN/NASを統合

 V7000 Unifiedは、従来のSAN/iSCSIに対応した「V7000」にNASのサポート機能を追加した製品。SAN/NASを意識せずに、構造化データと非構造化データを一元管理できる。IBM製品や他社製品を含むほかのディスクストレージ装置を接続でき、最大36PBもの大規模な仮想ストレージ環境を管理可能。GUIによる直感操作で、接続された複数のストレージは1つのストレージとして認識され、管理者は必要に応じてSAN/NASに容量を分配できる。

 また、ファイルデータ向け自動階層化ソフト「IBM Active Cloud Engine」を新搭載しており、SANだけでなくNASにおいても、アクセス速度の異なるストレージ階層間で使用頻度に応じてファイルデータを自動再配置できる。異なる記録媒体間、ストレージ間だけでなく、地理的に離れた場所をまたいで可能なほか、SSD、HDDに加えてテープにも自動再配置できるのが特長だ。

 同ソフトは、V7000 Unifiedと、スーパーコンピュータに採用されているファイル管理方式を活用した高拡張性NASアプライアンス製品「IBM Scale Out Network Attached Storage(SONAS)」に搭載される。

 V7000 Unifiedの最小構成価格は1190万円(税別)から。11月30日より出荷を始める。

IBM Active Cloud Engine。データの物理配置先を意識せずに同じディレクトリイメージを異なる拠点間で共有ストレージ階層化機能では、SSD/HDDに加えてテープにも対応

 なお、今回は「IBM Systems Director」などの管理ツールも機能強化を図っている。新版となる「IBM Systems Director v6.3」では、標準構成で5000台のシステムを管理できるスケーラビリティを備え、「VMControl v2.4」ではKVMを完全にサポートするなど、対応する環境の幅を広げている。


セルフサービスポータルと課金の簡易機能を提供

Starter Kitの概要。従来の紙やメールベースの承認プロセスにかかっていた時間を大幅短縮

 Starter Kitは、クラウド環境を手軽に構築するセルフサービスポータル機能と、ユーザー部門ごとの仮想サーバーの利用量を可視化して実際に使用量を課金できる簡易課金機能を提供する。

 ユーザーからの仮想サーバーの申請やIT管理者による承認などのコミュニケーションをポータル画面およびメールで実現。立ち上げる仮想サーバーの構成をテンプレートとして登録しておけるほか、使用中の仮想サーバーをいつでも監視・制御でき、CPU・メモリ・ストレージ容量の変更要求も即座に行える。

 こうした申請・承認プロセスを紙やメールのみで行っている企業は、仮想サーバーの要求から利用するまでに2週間程度かかっていたところを、本製品により5分~1時間程度に短縮できるという。

 課金機能では、グループ単位で使用料金を見える化を実現。管理者はCPU・メモリ・ディスクと時間を組み合わせて単価を設定できる。また、事前にクレジット金額の設定が可能な「プリペイド方式」を採用するため、予算の管理も可能。

 価格は、IBMの仮想化ソフト「PowerVM」を搭載した「IBM Power Systems」向けが1万2800円(税別)/コアから、VMwareの仮想化ソフト「vSphere 4.1」を搭載した「IBM System x/BladeCenter」向けが19万8000円(税別)/サーバー1台。

 参考として、BladeCenter S+HS22×3台の構成で、ハードウェアおよびVMware費用を含んで約750万円(税別)からと「安価な価格」(システム製品事業 クラウド・ソリューション企画部長の佐々木言氏)となっている。

テンプレートを選んで仮想マシンを立ち上げ簡易課金機能。プリペイド方式を採用している



「Cloud Burst」などの下位版として展開

システム製品事業 クラウド・ソリューション企画部長の佐々木言氏

 今回の新製品は、物理サーバー3台程度からの中小企業が対象となる。

 同社は同様の製品としてすでにクラウド構築アプライアンス「Cloud Burst」を提供している。そこでは仮想リソースの管理や課金を実現する「Tivoli」製品群もラインアップされている。

 これらと今回の位置づけについて「今回はエントリークラウドとして課金機能なども必要十分な簡易なものとなっている。より高度には、多段階認証、外部ディレクトリ連携、ハイブリッドクラウド連携なども可能だが、中小企業に対してまずは、今回の新製品で実現できるところから始めませんか、というオファリングを考えている。規模によってはCloud Burstを提案するなどしてすみ分け、かつエントリークラウドからアドバンスト・クラウドへ移行できるような仕組みも考えたい」としている。

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