ニュース
プリンストン・デジタル・グループ、国内初設置のデータセンター「TY1キャンパス」1期棟を稼働開始
2025年4月28日 06:00
シンガポールに本拠を置くデータセンター企業であるプリンストン・デジタル・グループ(PDG)は24日、埼玉県さいたま市のTY1キャンパスの稼働を開始したと発表した。
同社は、グローバルハイパースケーラー向けに最新のデータセンターを構築し、運用している。2021年6月には、「総投資額10億米ドルを投じて、東京で最大級のハイパースケール施設を建設し、2つのフェーズで合計およそ100MWの基幹IT能力を持つ」と発表していた。TY1キャンパスは、今回稼働開始したフェーズ1(1期棟)で48MW、フェーズ2(2期棟)で同じく48MWを提供し、合計で96MW規模を供給する。
1期棟は、1階が電気設備などの機械室エリア、2階がオフィスエリア、3~6階がデータホール、屋上に空調チラーを設置している。1期棟のすべてのフロアで構築を終了するのは、2026年12月末を予定している。また、2期棟はすぐ隣に位置し、現在は建物建設前の整地作業中となっていた。
PDGは2017年の創業以来、アジア太平洋地域6カ国に20拠点以上のデータセンターを展開し、1.1GWのIT電力を供給している。また、ChatGPTの登場以降はAIに対応したデータセンターの需要が急拡大しており、PDGでも3年前からAI対応データセンターの建設を進めている。既にムンバイ(インド)とジョホール(マレーシア)でAI対応データセンターを運用していて、日本は3番目となる。
「TY1は日本における初めてのデータセンターで、ラック当たり140kWという高密度の性能を備えている。世界でも最も先進的なAI向けデータセンターと言える」とCEOのラング・サルガメ氏は言う。
また、「水冷対応のデータセンターがまだまだ少ないが、われわれはフロントランナーとして、水冷技術を導入したデータセンターとして操業開始する」とPDGジャパンのマネージングディレクター 高橋善長氏は言う。
埼玉県という立地の優位性
首都圏の大規模データセンターは、東京の中心部以外では印西(千葉県)と西東京に多く立地している。しかし、どちらも新たな土地取得が難しく、電力供給の余力もないという。そこでPDGは、まだ大規模データセンターのない北側地区の埼玉県を建設地として選んだ。
高橋氏は、埼玉の優位性として以下の3点を挙げた。
- 拡張性のある土地と電力:データセンター開発に必要な土地が十分にあり、東京圏の他のハブと比較して優れた電力アクセスおよび利用可能性がある
- 優れた接続性:主要通信事業者によって整備された光ファイバーインフラを有し、東京中心部、印西、海底ケーブル陸揚げ局への接続性に優れている
- 戦略的な位置付け:ハイパースケーラーが既存の拠点(印西地区や東京中心部)との冗長かつコスト効率の良い接続を構築するための立地として最適
特に、ハイパースケーラーにとって安定的な電力供給は死活問題で、「埼玉を選んだ一番の要因は、電力への優れたアクセス」(高橋氏)という。首都圏の既存データセンター群とは異なり、埼玉ではデータセンターの電力アクセス性と可用性が大幅に向上している。また、送電網の相互接続性や混雑度の低さも、安定した電力供給を保証する。
PDGでは、TY1の96MWにとどまらず、市場の伸びに応じて積極的に開発を進めるつもりで、電力の供給余力があるのは非常に大きな強みと考えているという。