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AIミーティングアシスタントを手掛ける独tldx Solutions、日本市場への正式参入を発表
「tl;dv」を国内でも拡販、日本法人も設立へ
2025年4月21日 06:00
AIミーティングアシスタント「tl;dv(ティーエルディーヴィー)」を提供している独tldx Solutionsは、日本市場へ正式に参入し日本における活動を本格化することを4月18日に発表した。日本法人を2025年第2四半期に設立する予定。
「tl;dv」はオンライン会議を自動で記録・要約・分析するAIソリューション。日本ではすでに10万人の登録ユーザーがいるという。なお日本での販売パートナーとしては、株式会社Engineerforceが1月に販売代理店契約を締結している。
同日、記者発表会が開催され、tldx Solutionsの共同創業者兼最高経営責任者のRaphael Allstadt氏と、Japanカントリーマネジャーの溝口宗太郎氏が、サービスおよび事業について説明した。
オンライン会議の録画、文字起こし、翻訳、要約、分析まで一貫して提供
Allstadt氏はtl;dvを始めた経緯として、大学で数値モデリングを学んだ後に就職し、会議の問題について感じたことによって、「会議の問題を、私の学んだAIの知識で解決しようと思った」と説明した。
ちなみにAllstadt氏によると、「tl;dv」という名前は、テック系ブログなどでネットスラングとして使われる「tl;dr」(“Too Long; Didn't Read”、「長いから読まないよ、という人のための要約」)のように、「Too Long; Didn't View」から来ているという。
tl;dvの機能は、ZoomやMicrosoft Teamsなどのさまざまなオンラインミーティングを録画し、30言語以上に対応した文字起こしと必要であれば翻訳をし、要約し、さらにそこから知見を得るものだ、とAllstadt氏は紹介した。
その中でも重要な機能として、要約では、1対1のセールストークや社内の大人数の会議など、ミーティングの種類に合わせた形での要約を実現しており、自分の組織に合わせた要約のテンプレートも設定できると、Allstadt氏は強調した。
また、CRMのHubSpotや、情報管理のNotion、タスク管理のTrelloなど、5000以上の使い慣れているツールと連携し、ミーティングワークフローを自動化できる。さらに、複数のミーティングを横断してAIが洞察を提供したり、同じ定例会議を追跡したりすることも可能だ。
tl;dvが営業チームの生産性を高める例として、Allstadt氏は新人営業マンを教育する場合を挙げた。tl;dvを使うと、会議をトラッキングして、先輩がどのような質問をしているかや、「話す」と「聞く」の割合などを分析できる。
またAIオブジェクションハンドリング機能により、顧客からの異論・反論・懸念などに、どれだけ的確に回答しているかを追跡できるとした。
この1年で、世界で5倍、日本では12倍成長
続いて事業面については、世界ではこの1年で5倍成長しているとAllstadt氏は説明した。登録ユーザーは200万を超え、ARR(年間経常収益)も米ドルで8桁になっているという。
日本市場も1年で12倍成長し、成長率で世界一となったほか、ARRも米ドルで7桁となっているとのこと。日本での急成長の要因としては、会議で意思疎通が行われ、一方で議事録はいまだ手作業が主流であることから、AI議事録のポテンシャルがあると、Allstadt氏は語った。
2025年の製品ロードマップもAllstadt氏は説明した。
まず、生成AIから外部アプリケーションに接続するための「MCP」への対応がある。Anthropicとの接続がプライベートβ段階で、間もなくChatGPTにも対応する予定。日本語向けにカスタム学習された文字起こしモデルも、プライベートβ段階だ。文字起こし用のAIモデルを、企業ごとの用語や略語にあわせて学習できる。
大企業向けには。シングルサインオン(OktaおよびSCIM)への対応も第2四半期に予定している。
そして、日本法人も第2四半期に設立する。現地法人の設立は創業以来初めてという。さらに第3四半期には、モバイルアプリによる対面会議の記録にも対応する予定だと、Allstadt氏は語った。
日本市場でユーザー数も年間経常収益も15倍を目指す
これからの日本事業については、溝口氏が説明した。
まず日本法人について、セールスだけの役割ではなく、プロダクトとセールスの両輪で成長を目指すと語った。3年後の目標としては、まず従業員を現在の溝口氏1人から30人に増やす。そして、登録ユーザー数15倍とARR15倍を目指すという。
その3年間の基本戦略として、2025年は足場作り、特にプロダクトサイドに注力すると溝口氏は語った。日本語への完全なローカライズや、日本市場向けサポート組織の運用開始などが挙げられている。そのうえで2026年には、営業・カスタマーサクセス組織を本格稼働させる予定。
なお日本法人設立の意義や具体的な内容について質問すると、溝口氏はまず、日本法人があることで顧客が安心して契約できること、またtldx Solutionsに日本人の従業員を募集しやすいことを挙げた。
また、現在日本語化が足りていない部分の対応や、日本の商習慣にあわせた要約などのテンプレートの用意、日本のSaaS企業との連携などを語った。
tl;dvでできることをデモ
溝口氏は、tl;dvでできることについても、同氏とAllstadt氏の1on1ミーティングを例にしたデモで紹介した。
まず、オンライン会議に参加すると、すでにスケジューラーをもとにtl;dvのbotが参加している。これで、録画、文字起こし、要約を自動でやってくれる。
録画されたものは、動画再生画面の下には全文文字起こしが、左には要約が表示される。要約から該当箇所を再生したり、ほかのアプリケーションに送ったりもできる。
発言分析の機能では、それぞれがどのぐらいの割合でしゃべったか、質問したか、最長の会話、つなぎ言葉、速度などを分析してくれる。
要約のテンプレートは後から選んだり、カスタマイズしたりもできる。例えば、英語の会話を日本語で要約することもできる。
そのほか、CRMツールなど、主要なツールに会議の要約が自動的に入るようにもできる。
最近の生成AIらしい機能としては、まず、会議の内容をもとに、生成AIにお礼のメールを書いてもらうところを溝口氏は見せた。
また、複数の会議の内容をもとに、懸念として話されたことを生成AIにまとめてもらうところも紹介された。
AIによるコーチとしては、入社面接で面接官が聞くべきことを聞いたかを項目別に分析する「Job Interview」のテンプレートや、営業で必要な項目をどれだけ聞いたかを分析する「MEDDIC」のテンプレートを溝口氏は紹介した。