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AIミーティングアシスタントを手掛ける独tldx Solutions、日本市場への正式参入を発表

「tl;dv」を国内でも拡販、日本法人も設立へ

 AIミーティングアシスタント「tl;dv(ティーエルディーヴィー)」を提供している独tldx Solutionsは、日本市場へ正式に参入し日本における活動を本格化することを4月18日に発表した。日本法人を2025年第2四半期に設立する予定。

 「tl;dv」はオンライン会議を自動で記録・要約・分析するAIソリューション。日本ではすでに10万人の登録ユーザーがいるという。なお日本での販売パートナーとしては、株式会社Engineerforceが1月に販売代理店契約を締結している。

 同日、記者発表会が開催され、tldx Solutionsの共同創業者兼最高経営責任者のRaphael Allstadt氏と、Japanカントリーマネジャーの溝口宗太郎氏が、サービスおよび事業について説明した。

tldx Solutions GmbH 共同創業者兼最高経営責任者 Raphael Allstadt氏
tldx Solutions GmbH Japanカントリーマネジャー 溝口宗太郎氏

オンライン会議の録画、文字起こし、翻訳、要約、分析まで一貫して提供

 Allstadt氏はtl;dvを始めた経緯として、大学で数値モデリングを学んだ後に就職し、会議の問題について感じたことによって、「会議の問題を、私の学んだAIの知識で解決しようと思った」と説明した。

 ちなみにAllstadt氏によると、「tl;dv」という名前は、テック系ブログなどでネットスラングとして使われる「tl;dr」(“Too Long; Didn't Read”、「長いから読まないよ、という人のための要約」)のように、「Too Long; Didn't View」から来ているという。

 tl;dvの機能は、ZoomやMicrosoft Teamsなどのさまざまなオンラインミーティングを録画し、30言語以上に対応した文字起こしと必要であれば翻訳をし、要約し、さらにそこから知見を得るものだ、とAllstadt氏は紹介した。

tl;dvを始めた経緯
tl;dvの機能概要

 その中でも重要な機能として、要約では、1対1のセールストークや社内の大人数の会議など、ミーティングの種類に合わせた形での要約を実現しており、自分の組織に合わせた要約のテンプレートも設定できると、Allstadt氏は強調した。

 また、CRMのHubSpotや、情報管理のNotion、タスク管理のTrelloなど、5000以上の使い慣れているツールと連携し、ミーティングワークフローを自動化できる。さらに、複数のミーティングを横断してAIが洞察を提供したり、同じ定例会議を追跡したりすることも可能だ。

 tl;dvが営業チームの生産性を高める例として、Allstadt氏は新人営業マンを教育する場合を挙げた。tl;dvを使うと、会議をトラッキングして、先輩がどのような質問をしているかや、「話す」と「聞く」の割合などを分析できる。

 またAIオブジェクションハンドリング機能により、顧客からの異論・反論・懸念などに、どれだけ的確に回答しているかを追跡できるとした。

5000以上のアプリと連携
AIが洞察を提供
商談スキルの分析
AIオブジェクションハンドリング

この1年で、世界で5倍、日本では12倍成長

 続いて事業面については、世界ではこの1年で5倍成長しているとAllstadt氏は説明した。登録ユーザーは200万を超え、ARR(年間経常収益)も米ドルで8桁になっているという。

 日本市場も1年で12倍成長し、成長率で世界一となったほか、ARRも米ドルで7桁となっているとのこと。日本での急成長の要因としては、会議で意思疎通が行われ、一方で議事録はいまだ手作業が主流であることから、AI議事録のポテンシャルがあると、Allstadt氏は語った。

世界では1年で5倍成長
日本では1年で12倍成長

 2025年の製品ロードマップもAllstadt氏は説明した。

 まず、生成AIから外部アプリケーションに接続するための「MCP」への対応がある。Anthropicとの接続がプライベートβ段階で、間もなくChatGPTにも対応する予定。日本語向けにカスタム学習された文字起こしモデルも、プライベートβ段階だ。文字起こし用のAIモデルを、企業ごとの用語や略語にあわせて学習できる。

 大企業向けには。シングルサインオン(OktaおよびSCIM)への対応も第2四半期に予定している。

 そして、日本法人も第2四半期に設立する。現地法人の設立は創業以来初めてという。さらに第3四半期には、モバイルアプリによる対面会議の記録にも対応する予定だと、Allstadt氏は語った。

2025年の製品ロードマップ

日本市場でユーザー数も年間経常収益も15倍を目指す

 これからの日本事業については、溝口氏が説明した。

 まず日本法人について、セールスだけの役割ではなく、プロダクトとセールスの両輪で成長を目指すと語った。3年後の目標としては、まず従業員を現在の溝口氏1人から30人に増やす。そして、登録ユーザー数15倍とARR15倍を目指すという。

 その3年間の基本戦略として、2025年は足場作り、特にプロダクトサイドに注力すると溝口氏は語った。日本語への完全なローカライズや、日本市場向けサポート組織の運用開始などが挙げられている。そのうえで2026年には、営業・カスタマーサクセス組織を本格稼働させる予定。

 なお日本法人設立の意義や具体的な内容について質問すると、溝口氏はまず、日本法人があることで顧客が安心して契約できること、またtldx Solutionsに日本人の従業員を募集しやすいことを挙げた。

 また、現在日本語化が足りていない部分の対応や、日本の商習慣にあわせた要約などのテンプレートの用意、日本のSaaS企業との連携などを語った。

日本での3年後の目標
日本での3年間の基本戦略

tl;dvでできることをデモ

 溝口氏は、tl;dvでできることについても、同氏とAllstadt氏の1on1ミーティングを例にしたデモで紹介した。

 まず、オンライン会議に参加すると、すでにスケジューラーをもとにtl;dvのbotが参加している。これで、録画、文字起こし、要約を自動でやってくれる。

 録画されたものは、動画再生画面の下には全文文字起こしが、左には要約が表示される。要約から該当箇所を再生したり、ほかのアプリケーションに送ったりもできる。

 発言分析の機能では、それぞれがどのぐらいの割合でしゃべったか、質問したか、最長の会話、つなぎ言葉、速度などを分析してくれる。

 要約のテンプレートは後から選んだり、カスタマイズしたりもできる。例えば、英語の会話を日本語で要約することもできる。

 そのほか、CRMツールなど、主要なツールに会議の要約が自動的に入るようにもできる。

 最近の生成AIらしい機能としては、まず、会議の内容をもとに、生成AIにお礼のメールを書いてもらうところを溝口氏は見せた。

 また、複数の会議の内容をもとに、懸念として話されたことを生成AIにまとめてもらうところも紹介された。

 AIによるコーチとしては、入社面接で面接官が聞くべきことを聞いたかを項目別に分析する「Job Interview」のテンプレートや、営業で必要な項目をどれだけ聞いたかを分析する「MEDDIC」のテンプレートを溝口氏は紹介した。

オンライン会議に参加するとtl;dvのbotが参加している
tl;dvによる録画や文字起こし、要約が表示されている
要約をほかのアプリケーションに送る
発言分析の機能
要約のテンプレート
CRMツールに会議の要約が入っている
会議の内容をもとに生成AIにお礼のメールを書いてもらう
複数の会議の内容をもとに懸念として話されたことを生成AIにまとめてもらう
入社面接の会話を分析する「Job Interview」のテンプレート
営業の会話を分析する「MEDDIC」のテンプレート