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SAP、AIエージェントの潜在能力を最大化するSAP Business Data Cloudを発表
2025年3月19日 06:15
SAPジャパン株式会社は18日、SAPデータとSAP以外のシステムのデータを統合するフルマネージドSaaSソリューション「SAP Business Data Cloud」を発表した。2025年第2四半期の一般提供開始を予定している。
このソリューションでは、SAPがこれまで提供してきたデータ関連ソリューションであるSAP Datasphere、SAP Analytics Cloud、SAP Business Warehouseを統合。SAPや関連システムのデータを統合し、活用できる環境を提供する。またDatabricks社とのパートナーシップにより、同社の高度な機能を直接SAP Business Data Cloudに組み込むことも可能になった。
SAPでは今年の事業戦略として、「AIファースト、スイートファースト」を標榜している。SAPジャパンの常務執行役員 最高事業責任者である堀川嘉朗氏は、「業務を、AIエージェントならびに当社が提供するCopilotであるJouleで変えていくためには、精度の高いデータが必要になってくる。これを担うのがBusiness Data Cloud」と説明。AIを使って業務を進める際に不可欠なデータを担うソリューションとなる。
SAPでは、業務プロセスを人間ではなくAIエージェントが処理する将来像を標榜。それを実現するために、「AIエージェント同士がコミュニケーションしながら自律的に働くためには、複数のビジネスモジュール、複数のビジネスアプリケーション間のデータが整合性の取れた状況で、かつAIが理解しやすい形式できちんとそろっている必要がある。そのためのデータプラットフォームがSAP Business Data Cloudになる」と、Business Data Cloud ソリューションアドバイザリー部 ソリューションアドバイザーエキスパートの椛田后一(かばた きみかず)氏は説明する。
「ただしSAP Business Data Cloudは、単にデータを集約してデータをためる箱ではない。3つの特徴として、1つ目は迅速で精度の高い意思決定を実現する、革新的なインサイトを引き出すデータを供給するという側面、2つ目としてSAPアプリケーションのデータだけでなく、SAP以外のシステムのデータも集約して統合し、それを管理するための新しい仕組みを提供し、すべてのデータにアクセスできるようになる。3つ目としてデータを可視化し、インサイトを得てアクションにつなげるための事前定義済みダッシュボード、テンプレートを提供し、信頼性の高いAIの強化する」(椛田氏)。
データ活用のユースケースを強化し、ビジネス価値を高めるために、ビジネスデータファブリックが劇的な進化を遂げた。SAPデータプロダクトおよびInsight Appsが強化され、SAP Business Warehouse(BW)はモダナイゼーションを実現した。データサイエンスおよびMLのユースケースの強化と、AIに正確でセキュアなデータを供給することも実現しているという。
SAP S/4HANAのデータモデルを再現し、Non-SAPシステムのデータと統合、データを可視化するSAP Datasphere & SAPAnalytics Cloudは、SAP Business Data Cloud内のビジネスデータファブリックに統合された。すでにSAP Datasphere、SAPAnalytics Cloudを利用していたユーザーのデータは、自動的に取り込まれるわけではないが、SAP Business Data Cloudの管轄下に置くようなツールを提供する予定だ。
SAPデータプロダクトは、SAPデータを整理するために、1)分析データセット、設定データなどを行うビジネスデータセット、2)豊富なメタデータとセマンティックを提供することで詳細な情報が付加、3)データエンジニアリングツールと統合されたデータモデリング、BIツールからのシンプルなアクセスを実現するなど簡単に利用可能、4)SAPデータプロダクトカタログを活用することで探しやすい――といった、4つの特徴を持っている。
データプロダクトによるSAPデータの管理によって、インサイト獲得までの時間を最小化できる点も特徴。SAPアプリケーションから直接データが提供され、SAPが管理するデータセットとセマンティック(用語、意味)との整合性とビジネスコンテキストを確保する。またSAP Foundationサービスによって、SAPアプリケーションのすべてのデータが自動的にコピーされ、最新データを同期する仕組みを備えているという。
また、SAPアプリケーションのデータとメタデータを活用。SAPが管理するデータセットとセマンティック(用語、意味)との整合性、ビジネスコンテキストを確保する。SAPの事前構築済みデータプロダクトを使用して、すべてのSAPアプリケーションの最も重要なビジネスプロセスをあらゆる角度から把握する。すぐに活用できる、実行可能なコンテキストに則したAI対応データを提供することにより、最も重要なビジネスプロセスを支えるとした。
SAP Knowledge Graphは、ビジネスデータの関係を動的にマッピングし、隠れたインサイトを発見する。生成AIを顧客固有ビジネスコンテキストに結びつけることで精度を向上。ナレッジグラフの構造によって提供される正確な情報を確保し、AIのハルシネーションが減少する効果がある。SAPアプリのセマンティック定義を再利用し、複雑なモデリング要件を解決する。データモデリングの内製化を実現し、ビジネスモデルをアナリティクスに直接連携することで、生産性を向上している。
SAP Databricksは、前述のように、Databricks社との連携によってデータの可能性を最大限に引き出すものだ。SAPデータプロダクトへのアクセスによるMLインサイトを獲得可能。データパッケージを直接有効化し、SAP Business Data Cloudコックピットで利用可能なデータパッケージのチェック、データパッケージ有効化、データカタログの共有によるSAPデータプロダクトアクセスの管理などの機能を実現するとしている。