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Dynabook、透過型XRグラス「dynaEdge XR1」の受注を開始 AIとの融合で業務効率化を実現
2025年3月12日 06:00
Dynabook株式会社は10日、透過型XRグラス「dynaEdge XR1」および専用のXRコントローラー「dynaEdge C1」の受注を同日より開始すると発表し、同製品を活用したソリューションと今後の戦略に関する説明会を開催した。
Dynabookといえば、1989年に発売した世界初のノートPCブランドとして知られているが、Dynabook 代表取締役社長 兼 CEOの覚道清文氏は、「今後はハードウェアのみならず、当社独自のソリューションでこれまで以上に顧客の価値向上に貢献していく。今回は、AIが急速に進む中、安心かつ安全に生成AIを活用できるオフィス環境および現場環境を提供すべく、高度な技術で顧客の業務プロセス効率化や売上拡大につながるソリューションを紹介する」と、冒頭のあいさつで語った。
Dynabookでは、2018年より単眼型のウェアラブルデバイスを提供しており、主にメンテナンス業務や倉庫内でのピッキング作業といった用途での導入が進んでいた。dynaEdge XR1は両眼タイプとなり、単眼タイプよりも大幅に表示領域が拡大。カメラ、スピーカー、マイクも搭載しているほか、USB Type-Cでさまざまな機器との接続も可能で、オフィスや作業現場などで利用できるソリューションの幅も広がった。
そのソリューションのひとつが、dynaEdge XR1とPCをUSB接続することで、XRグラス上に仮想デスクトップを表示させる「dynaEdge XRワークスペース」だ。仮想デスクトップの画面はマルチスクリーン方式で最大3画面を表示することができ、目の前の空間をワークスペースとして活用できる。
Dynabook 執行役員 ソリューション事業本部長の熊谷明氏は、「外出先で仕事をしていると、後ろから画面を見られてしまう心配があったり、PCの画面が小さいという課題があったりする。dynaEdge XR1グラスをかけると、PCの画面はグラス上にのみ表示されて外部からは見ることができず、しかも大きな画面で仕事ができ生産性が高まる」と話す。
また、Dynabookとして「新たなソリューション領域も展開する」と熊谷氏。例えば、生成AIの導入にあたって懸念材料となる情報漏えいに対応すべく、オンプレミス環境で生成AIが活用できるようなソリューションを用意する。具体的には、Dynabookが選定したAIワークステーション内に、ローカルで動作する生成AIの環境を構築、従業員らが自らアプリケーションをローコードで開発できるツールを提供する。
「このツールを使えば、RAG(検索拡張生成)のような技術を使い、社内規定などクラウドには保存しづらい社内の機密情報をオンプレミス環境にてチャットボットのような形で検索できるようになる。また、オンプレミス環境でAI業務アプリケーションやAIエージェントをローコードにて開発することも可能だ。アプリケーション開発を支援する研修プログラムも用意する」と熊谷氏は説明する。
さらに、PC運用管理サービスとして提供しているLCM(ライフサイクルマネジメント)の強化に向け、現在千葉県にある施設に加え、大阪府茨木市に西日本LCMセンターを新設することも明かした。「この新センターにより、キッティング生産能力を月4万台から6万台に増強する。BCP対策としても重要な役割を果たす予定で、2025年4月から順次稼働する予定だ」(熊谷氏)。
Dynabook ニューコンセプトコンピューティング統括部 NCCソリューション戦略部 部長の小川岳弘氏は、このほかにもdynaEdge XR1のさまざまな利用シーンを紹介した。
「dynaEdge XR1とコントローラーのdynaEdge C1を接続することで、目の前にAI拡張現実空間が広がる。C1にはさまざまなAIアシスト機能が搭載されており、例えば相手の目を見て会話しながら、文字起こしや翻訳を表示させたり、見ている風景の解説を表示させたりすることが可能だ」と小川氏。
また小川氏は、dynaEdge XR1のカメラを使って資料を撮影し、AIが文章を要約して表示する機能や、音声で気になることをXR1のマイクを通じて問い合わせ、AIがスピーカーから音声で回答する機能などを紹介した。
XRソリューションの拡大にあたっては、「パートナーと連携して共創していく」と小川氏。例えば、東芝システムテクノロジー株式会社では、dynaEdge XR1を活用した物品の入出庫作業を支援するソリューションを用意しているほか、エピソテック株式会社では、ARマニュアルをdynaEdge XR1に表示させ、作業工程を支援するソリューションを提供する。また、パーソルクロステクノロジー株式会社では、さまざまな業界に最適化した業務支援AIアシスタントを提供する。
熊谷氏も、「これまで単眼型のグラスを導入していた顧客からは、表示情報量を多くしてほしいという声が多かった。dynaEdge XR1はこのニーズに応えた製品だ。両眼タイプでこれまで以上に現場DXを支援し、ビジネス拡大を目指したい」としており、今後dynaEdge XR1を活用したさらなる現場DXや、ドライブレコーダーによる安全運転支援などの領域にも乗り出す考えを示した。
dynaEdge XR1およびdynaEdge C1の価格はオープン。出荷は春ごろになる予定で、今年中に1000台の販売を目指す。