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2025年の生成AIトレンドをLayerXが予測、エージェント導入失敗への注意喚起も
2025年1月24日 11:11
株式会社LayerXは23日、2025年の生成AI技術のトレンドを予測し、その内容について説明会を開催した。説明にあたったLayerX 代表取締役 CTO 兼 日本CTO協会 理事の松本勇気氏は、2025年の予測として、「素のLLMの成長が緩やかになる一方で、深く議論を重ねる論理的思考の強いモデルが進化する。また、自律的にタスクを処理するエージェントが増加し、マルチエージェントに対応するオーケストレーター層が充実する」とした。
素のLLMの成長が緩やかになるのは、すでにこれまでで生成AIモデルが飛躍的な進化を遂げたためだ。「最新モデルは常に高性能化するが、劇的な精度向上はいったん落ち着くだろう」と松本氏。これからは、論理的思考の強化モデルが進化するという。
その一例が、OpenAIが2024年に発表した「o1」モデルだ。「従来のモデルは対話を繰り返すと話題がそれ、精度が上がらなかったが、o1モデルは問題に焦点を当て、一貫した思考を維持できるので、時間をかければかけるほど性能が向上する可能性がある」と松本氏は説明する。o1以外にも、Gemini 2.0 Flash ThinkingやBiXiなどの新しいモデルが登場しているとして、今後こうしたモデルの進化が加速すると予測した。
エージェントの増加もその進化の一環だという。松本氏によると、エージェントとは、LLMに特定の目的や役割を与え、自律的にタスクを遂行するシステムのこと。従来のシステムは、人間が詳細な手順やワークフローを事前に定義し、その指示に従って動作していたが、LLMを活用したエージェントは、与えられた目的に対して自ら実行計画を立て、必要なツールを選択してタスクを遂行すると松本氏は述べており、「これまでのシステムとの主な違いは、タスク実行の計画立案から完了判断まで自律的に行う点だ」としている。
ただし、エージェントにも課題があり、「すべてをエージェントにすればいいわけではない」と松本氏は言う。その課題とは、毎回同じ手順で仕事を実行するとは限らないことや、品質が100%保証されるわけではなく、手順があるものは既存のシステムの方が効率的なケースも多いこと、任せるタスクの幅が広くなるほど精度が落ちることなどだ。また、成果物の根拠がわかりにくいケースもあり、「出力の評価をどう構築するかという点も重要な課題になる」としている。
そこで、今年は「目的に応じた小さなエージェントを構築することがトレンドとなり、そのエージェントに仕事を振り分けるオーケストレーターの研究も進むだろう」と松本氏は述べている。
一方、松本氏は予想されるエージェントの取り組みの失敗例についても言及している。例えば、請求書OCRエージェントを構築した場合、既存の専用システムの方が迅速かつ正確である可能性が高いというのだ。「エージェントは複雑な思考プロセスを経るため、時間とコストがかかり、さらに間違いを犯すこともある。状況判断をAIに任せるよりも、人間の知識をうまくLLMに仕込むことや、過去のMLモデルを適切に活用する方が有利になることも多い」と松本氏は述べ、エージェントの導入が「牛刀をもって鶏を割く」ような過剰対応にならないよう、慎重な検討が必要だとした。
2025年以降の業務のあり方については、「これまで人が担当していた繰り返しの多い業務や定型業務はLLMに任せ、LLMが生成したアウトプットを人間がレビューするスタイルに切り替わっていくだろう。人間がAIを部下としてマネジメントするイメージだ」と松本氏。
2025年はこういったスタイルが実現できるようなソリューションやデータが多数登場すると松本氏は見込んでいる。同氏は、これまでのシンプルな台帳としてのSaaSを第1世代、AIによる業務プロセスの一部自動化を実現したAI-SaaSを第2世代と位置づけたうえで、「今年はLLMを中心としたエージェントやワークフローを組み合わせ、幅広い業務プロセスを自動化する第3世代のLLM-SaaSへと進化していく」と述べている。
サービスのトレンドについても、「例えば、これまでサブスクリプション課金だったサービスを、商談が成立した件数に応じて課金するモデルや、BPOとAIを組み合わせて効率化するモデルが登場するだろう」と語る。
「今後、AIと人が協力して事業の生産性を向上させることが重要なポイントになる。未知の業務を人が切り開き、それをAIが効率的に運営していく流れが進んでいく」と松本氏は述べた。