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NTT ComとT-Systems、企業や組織間でデータを連携・共有するデータスペースのテスト環境を日本で提供

 NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)は25日、独Deutsche Telekom(以下、ドイツテレコム)のIT子会社T-Systemsと協業して、日本でのデータスペース(企業や組織間でデータを連携、共有するためのデータ空間)のテスト環境(サンドボックス)を提供開始すると発表した。

 この協業で提供されるデータスペースのサンドボックスは、非営利団体であるEclipse財団のプロジェクトが開発したオープンソースソフトウェア、Tractus-XとEclipse Dataspace Componentsをベースとしている。これらのソフトウェアは、自動車産業のデータスペースCatena-Xなど、主要なデータエコシステムで実際に使用されている。実際のデータスペースで使われているソフトウェアを用いたサンドボックスの提供は、世界初の取り組みになるという。

 両社はテスト環境の提供を通して、日本における新たなデータエコシステムの開発を加速させ、欧州のデータスペースと日本のデータスペース間の相互運用の実現を目指すとしている。

 T-SystemsとNTT Comは、欧州のデータスペース共通フレームワークを検討・開発する非営利団体のGaia-Xや、欧州でデータ連携の標準化を推進する非営利団体のInternational Data Spaces Association(IDSA)、Catena-X Associationなど、欧州の数々のデータスペース関連のコミュニティーに貢献してきた。

 ドイツテレコムはGaia-Xの創設メンバーで、そのIT子会社のT-Systemsは、Gaia-Xが開発・提供するデータ流通の安全性を担保するための管理機能「Gaia-Xデジタルクリアリングハウス」の第一号運用事業者で、Tractus-Xソフトウェアの主要な開発ベンダーでもある。NTT Comは、信頼性の高いデータスペースの国際標準化についての議論を開始し、日本や欧州の取り組みと協力してデータスペース間の相互運用性の考え方を示すことにより、データスペース関連のコミュニティーに貢献している。

 今回、T-SystemsとNTT Comの2社は、国を代表する通信サービス事業者としての専門技術と社会的な信用を生かして、信頼性の高いインフラストラクチャを提供し、データのプライバシーとセキュリティを最大限に保証する中立的なプロバイダーとして、グローバルサプライチェーンなど組織や国境を越えたデータ交換を促進し、データ主権の保護を担保するとしている。

 T-Systemsは、サンドボックス環境として「Living Lab」というプロダクト、「データスペース・アズ・ア・サービス」の開発環境を提供する。パートナーであるNTT Comは、この開発環境を日本の大学・企業などの顧客に提供する。

 サンドボックス環境は、ドイツのクラウドインフラ上で運用され、NTT Comが運用する日本のクラウドインフラ上の国際的なテストベッドを通じて、日本のユーザーやエンジニアがアクセスできる形で運用される。この構成により、データスペース環境でのアプリケーションや接続サービス(イネーブルメントサービス)の開発と利用が容易になり、日本のさまざまな業界での企業間データチェーンの技術実証実験(PoC)が加速するとしている。

 T-SystemsのLiving Labサンドボックスは、NTT Com経由で、2024年第3四半期以降にIDSA Japan Hub、東京大学、慶應義塾大学、富士通、オムロンなどの日本の大学・企業などに提供可能となり、それぞれのテストベッド、コネクター、アプリケーションサービスとの相互運用性をテストし、日本のデータスペースの開発者とユーザーの数を増やす。

 T-Systems とNTT Comは、日本とドイツのデータスペース間の相互運用性を確認するための共同テストを、2024年末に計画している。T-Systemsが、NTT Comと協力して日本にもう一つのサンドボックスを構築し、日本とドイツのサンドボックス環境を接続することにより、アイデンティティ、オンボーディング、データ転送、およびサービスディスカバリなどのコアフェデレーションサービスをテストする。

 さらにこの取り組みでは、Gaia-Xデジタルクリアリングハウスサービスを取り入れ、欧州と日本間のトラストアンカー(データスペースにおける、参加者やデータの正当性を保証する役割を担う機能)の相互承認をテストするために、Gaia-Xと連携する。この連携は、アプリケーションの開発ベンダーやデータ提供者・データ利用者にとって大きな利点をもたらし、Catena-Xなどのデータエコシステムへの参加、オンボーディング、利用のプロセスを大幅に簡素化するとしている。

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