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TDCソフトが中期経営計画の進捗や今後の目標を説明、「次世代型システムインテグレータを目指す」

新本社の内部も公開

 独立系システムインテグレータであるTDCソフト株式会社は、2024年度を最終年度とする中期経営計画「Shift to the Smart SI Plus」の進捗状況について説明するとともに、2023年10月に移転した九段会館テラス(東京・九段)の新本社の様子も公開した。

 同社の2023年度連結業績は、売上高で前年比12.6%増の396億円、営業利益で同10.1%増の38億円となり、過去最高を更新。中期経営計画で目標としていた売上高400億円、営業利益40億円を1年前倒しでほぼ達成したことから、新たな目標として、売上高430億円、営業利益43億円を掲げ直している。

2025年3月期の業績目標を上方修正

 現在、銀行・保険・信販などの金融分野向け業務システム開発を行う金融ITソリューション、官庁・製造・物流・エネルギーなどの業務システム開発を行う公共法人ITソリューション、サーバーやミドルウェア、OSなどのインフラ構築を行うプラットフォームソリューション、コンサルティングや自社製品などを活用したインテグレーションサービスを提供するITコンサルティング&サービスで構成している。

事業内容

 金融ITソリューションは、売上高全体の44%を占めており、過去5年間の売上高平均成長率は9.9%に達している。クラウド化やモダナイゼーション需要を背景に、クレジットや銀行系分野を中心に事業が拡大しているという。

 公共法人ITソリューションも、売上高は年平均成長率で10.2%と高い伸びを達成。公共系大規模案件や運用系の需要が牽引。ITの企画段階から支援を行える点が評価され、ビジネス拡大を図っている。この分野では、東京ガスやENEOSなどの大手顧客の導入実績もあるという。

金融ITソリューション
公共法人ITソリューション

 プラットフォームソリューションは、富士通系のインラフビジネスで培ってきた経験を生かして事業を拡大。ITインフラの環境設計、構築、運用支援、ネットワーク製品開発、ネットワークインテグレーションなどを提供。継続するクラウドニーズの拡大により、事業は堅調に成長すると見込んでいる。

 ITコンサルティング&サービスは、注力分野に位置づけている事業で、年平均成長率は40.2%と高い伸びをみせている。DX推進に向けたIT戦略や、システム化構想の立案、技術コンサルティングのほか、自社アプリ、BIやDWH、ERP、CRMなどのソリューションサービスを提供。SaaSやiPaaSなどのクラウド系ソリューションが堅調であり、収益性の高いプライム案件をさらに拡大していく方針を示した。

プラットフォームソリューション
ITコンサルティング&サービス

 同社のコンサルティング事業の特徴について、TDCソフト 執行役員フェロー コンサルティング本部長の上條英樹氏は、「独自のWハニカムメソッドにより、戦略コンサルや業務コンサル、ITテクニカルコンサル、システム上流コンサルなどを組み合わせて、お客さまのビジネスアジリティを向上するために伴走することができる。また、エンタープライズアジャイル導入メソッドにより、アセスメントを実施し、実践トレーニングを行うことで、お客さま自らビジネスアジリティを獲得するための活動を実践できるように支援している」などと述べた。

TDCソフト 執行役員フェロー コンサルティング本部長の上條英樹氏

 一方、今後の方針についても説明した。

 同社では、「次世代型システムインテグレータ」を目指す方針を掲げており、「市場や社会の潜在ニーズをとらえ準備することで、新たな潮流に対応した付加価値の高いITサービスを提供し、よりスマートな世の中(社会)の実現に貢献する」との姿勢を打ち出している。

次世代型システムインテグレータ

 TDCソフト 取締役執行役員兼経営企画本部長の大垣剛氏は、「お客さまの潜在ニーズをとらえて提案する力を持つことが、次世代型システムインテグレータの条件になる。社内では『おせっかいであれ』という言葉があり、そうした姿勢でサービスをしていくことを目指している」と語る。

TDCソフト 取締役 執行役員兼経営企画本部長の大垣剛氏

 次世代型システムインテグレータを実現するための主要戦略として、「高付加価値SIサービスの追求」、「SIモデル変革の推進」、「事業領域の拡大」の3点を挙げる。

 「高付加価値SIサービスの追求」では、顧客の潜在ニーズをとらえ、最新の要素技術などを活用して、高付加価値サービスを提供するとともに、時間や手間などを含めたユーザーコストを低減することを両立したインテグレーションサービスの拡大に取り組んでいる。同社によると、高付加価値SIサービスは、アジャイル開発やクラウド分野が牽引して、売上高は5年間で5.3倍に増加。売上高構成比は25.5%にまで拡大したという。

 ここでは、「Technology Beyond」と呼ぶスキームを用意し、テクノロジーがもたらす将来変化を予見して、注力分野を見定めて投資。短期的視点での既存事業とのシナジーを模索するだけでなく、社内トップエンジニアや経営陣が議論して、3~5年先の未来を意識した技術投資分野を選定することになるという。また、これらの選定分野における人材教育投資も行っているとした。

 2024年度のTechnology Beyond のテーマとしては、データアナリティクスプラットフォーム、クラウドネイティブアーキテクチャ、オートメーションマネージドサービス、UXD、セキュリティ、ネットワークデザインの6つの領域を挙げている。

高付加価値SIサービスの追求

 2つめの「SIモデル変革の推進」では、高付加価値SIサービスを実行するための基盤づくりや高生産性と高品質を両立したSIプロセスの整備などを、イノベーション的アプローチで実現し、他社との差別化を図るという。

 2023年度からは、プロジェクトの品質保証を行う「PROJECT IQ」を導入。プロジェクト推進に必要なスキル要素と、要員構成を可視化して、プロジェクトのパフォーマンス評価を行えるとした。同システムは、機能を適宜アップデートしており、さらなる効率化を図ることになるという。

SIモデル変革の推進

 そして、3つめの「事業領域の拡大」においては、既存のSI事業領域を軸に、新たな領域へと事業を拡大。新たなビジネスモデルに必要なケイパビリティを獲得して、新たな次世代型SI企業を目指すことになるとした。

 具体的には、コンサルティング事業と、サービス製品販売事業に注力。2つの事業をあわせて、前年同期比50%増だったという。コンサルティング事業ではノウハウのアセット化や、これを用いた要員育成など、拡大に向けた取り組みを推進。サービス製品販売事業では、マーケティング機能やプロダクトセールス機能の拡充による事業拡大を進めている。

事業領域の拡大

 なおTDCソフトは、1962年に東京データセンターとして設立。データエントリー業務で事業をスタートしており、62年の歴史を持つ。1967年には汎用大型コンピュータのソフトウェア開発を開始し、1973年にはオペレーティングシステム関連ソフトウェアの開発を開始。1977年には「汎用ファイル編集プログラム」、「中小企業向けフロントシステム」などのソフトウェアの開発および販売を開始した。

 創業者の野崎克己氏は、日本IBMと穿孔(せんこう)機の賃貸借契約を、国内で初めて個人で結び、事業を開始。だが創業3年目に、データエントリーを行うパンチセンターの将来に見切りをつけて、計算センター業務に移行。さらに1971年には、計算センターとしての存続を断念し、ソフトウェア開発で事業成長することを目指した。

 野崎氏は、ソフトウェア事業への転換に際して、「計算センターは資金力の勝負になる。将来の日本の情報化に資するためには、資金力で勝負する会社ではなく、技術力で勝負する会社になる必要がある」と判断し、それ以来、技術への投資を加速。現在でも高度な技術力を持つエンジニアの育成、新たな技術をキャッチアップすることに注力しているという。

TDCソフトの歴史

 1978年には社名を、東京データセンターの略称であったティーディーシーに変更。1984年には日本語RDBMS「MRDB Ver.1」を発売。1986年には社名をティーディーシーソフトウェアエンジニアリングに変更した。

 1997年には株式を店頭公開し、2001年には東証二部に上場。2002年には東証一部に上場した。また野崎氏は、全国情報サービス産業厚生年金基金や健康保険組合の整備にも尽力。現在の情報サービス産業協会(JISA)の設立にも関与するなど、業界活動ほかでも多くの実績を残している。

 2000年からASP事業を開始し、2003年には携帯電話を利用したASPサービス「HANDy TRUSt」を提供。2006年には「MoobizSync 2.0 for AppExchange」を、2007年には位置情報表示システム「Pogips」の提供を開始した。また、2008年には「Mobile PIM for Oracle CRM On Demand」を、2009年には「Trustpro」を発売した。

 2017年には社名を現在のTDCソフトに変更している。

 2022年に制定したグループパーパスでは、「世の中をもっとSmartに~あらゆる変化と真摯に向き合い、技術と挑戦の力で」を掲げている。

 TDCソフトの大垣取締役 執行役員は、「技術へのこだわりを持つ企業であり、保険会社やクレジット会社、流通、エネルギーなど、日本を代表する企業と長期的な取引があり、安定顧客を有するという特徴も持つ。また、個人を大切にする企業文化がある。教育プログラムや成長するための機会を用意し、個人の能力を最大限発揮する環境を作ることに力を注いでいる」と述べた。

 また、「課題は、人材の確保と育成である。テレビCMやネットCMによるブランディング戦略の推進や、採用体制の拡充、エデュケーション施策の強化、新人事制度の導入などを進めている。教育支援にも力を注ぎ、新卒者の育成だけでなく、専門家や技術者の目標を設定し、それを会社が支援していく制度を整備する」と語った。

本社の内部を公開

 またTDCソフトは、今回の説明会の開催にあわせて、本社の様子を公開した。

 SmartWork構想の一環と位置づけ、社員一人ひとりが、自身にとって最も良い場所と感じられるようにアップデートし続ける「Re:Place」をコンセプトに、社員ファーストの新オフィスを実現。生産性向上や技術者のエンゲージメント向上を目指しており、壁を最小限にしたほか、多機能ゾーンを新たに配置。快適な作業スペースを確保することで、効率的な作業とコミュニケーションを促進できる場を実現しているという。

 ここでは、新オフィスの様子を写真で見てみよう。

4階フロアのエントランスの様子。来客フロアとなっている
訪問すると、日本武道館を見ながら待つことができる
レセプションエリアではTDCソフトの歴史に触れることができる
展示されている書は社員が書いたものだという
来客者との打ち合わせができる会議室の様子
エレベーターホールの様子
5階は社員が利用するオフィスエリア。本社常勤者が快適に仕事を行えるだけでなく、全体の7割以上を占める客先への常駐社員が帰社しやすい設計としている
服装や持ちものの制限をなくし、どこのワークプレイスからでも移動できるようにしている。取締役以下はフリーアドレスになっている
さまざまな机といすを用意している
組織単位で動きやすいように、4~6席単位でゾーニングして、グループアドレスとして利用できるような割り当ても行っている。それも3カ月ごとに場所替えを行う
従来は事務手続きやセミナー、健康診断だけのために帰社して、すぐに帰ってしまう社員が多かったというが、あらゆる社員が社内に残ってコミュニケーションしやすいように配慮した
新オフィスに帰社する社員数は1.5倍に増えているという。この日も250人以上の社員が出社。社内イベント開催時には約700人の社員が出社することもあるという
正面にあるプレゼンエリア。150人が参加できるセミナーも開催。帰社した社員も、いま社内でどんなことが行われているのかを知ることができる
セミナー用とは別に5.1.2CHスピーカーを配置し、映画鑑賞やスポーツのパブリックビューイング、ゲーム大会にも利用できるという
プレゼンエリアをセミナーなどで使用していないときは自由に席を利用できる
フロアの奥には集中して仕事ができるスペースを用意している
コンシェルジュが常駐しており、オフィスの使い方をガイド。オフィス利用の不安を解消してくれる
社員が利用できるカフェスペース
社員が手ぶらでやってきても、共有できるPCやモバイルモニターなどを貸し出している。社員証を持っていなくても、顔認証だけで利用できる。帰社するハードルを下げるための仕掛けのひとつだ
TDC HUBと呼ばれるスペース
TDC HUBは社内で最も眺めがいい場所となっている
TDC HUBは勤務時間外になると300円でアルコールが飲み放題になる。予約制で利用でき、ほぼ毎日予約が埋まっているという