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NEC、3D-LiDAR技術を活用し遠方からでも高精度に潮位を測定できる新技術を開発

遠方からでも津波による潮位変化を把握可能

 日本電気株式会社(以下、NEC)は16日、リモートセンシング技術「3D-LiDAR(Light Detection And Ranging)」を活用し、遠方からでも高精度に潮位を測定できる技術を開発したと発表した。NECでは6月に、東京港にて同技術を用いた潮位測定の実証実験を行い、海上遠方の潮位を高精度に測定できることを確認している。

東京港での実証実験の様子

 現在利用されている電波式やフロート式といった潮位計測システムは、測定可能距離が20メートル程度のため、検潮所を海岸線に設置して海水を引き込み、検潮儀を水面の直上に設ける必要がある。しかし、地震などの災害で地盤隆起・沈下が発生すると、水面までの距離不足や検潮所の水没などにより潮位の測定が困難になってしまい、実際に1月の能登半島地震では、一部海岸線の地盤隆起により計測不能になり、計測の再開までに時間を要してしまったという。

 今回開発された新技術は、こうした課題の解決を目指したもので、3D-LiDARによる赤外線レーザー光を、海上に浮かせた浮標(ブイ)に照射して反射光をとらえ、距離を計測する。具体的には、最先端の長距離・大容量光送受信技術(コヒーレント受信技術)を活用した長距離3D-LiDARによって、超高感度な光受信を実現し、遠方から物体の3次元点群データを取得可能になった。

 これまでの技術検証では、陸上500メートル遠方の物体の高さ計測を実現していたが、今回の実証では初めて、海上60メートル遠方の潮位を2センチメートル程度の誤差で測定できたとのこと。また、取得した3次元点群データにクラスタリング処理を行い、ブイの形状と周辺地形を高精度に分類した上で、それらを照合して位置補正を行いブイの高さを推定する3次元水位計測技術を開発。これによって、さまざまな場所や角度から計測可能となったため、場所を選ばずに3D-LiDAR機器を設置可能になったとした。

実証実験の現場と3D-LiDARでスキャンした3次元点群データ

 これらの新技術により、海岸線で数メートル規模の地盤隆起・沈下が起きたとしても、その影響を受けにくい場所に検潮所の設置を行えることから、災害に強く継続的に潮位を把握可能。また、可搬型で設置場所の自由度が高い機器により、設置コスト低減と設置時間の短縮を実現するとしている。

 なお今後は、測定可能な距離を数百メートル程度に延長するとともに、3D-LiDARによるデータと周辺の地図情報を照合して測定精度を向上するなど、さらなる技術開発を進め、2025年度内の実用化を目指す考えだ。