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Canonical、IoT機器や組み込みシステム向けの「Ubuntu Core 24」を一般提供

 英Canonicalは現地時間4日、12年間の長期サポート(LTS)を保証するIoT機器や組み込みシステム向けのOS「Ubuntu Core 24」の一般提供を発表した。

 Ubuntu Core 24は、LinuxディストリビューションのUbuntuをベースとして、実行中のシステムをユーザーやアプリケーションが直接変更できない改変不可のOS。すべてのシステムコンポーネントとシステム自体をコンテナ群にまとめ、カーネルによる厳密な隔離、高度なマネージドコンポーネント統合、信頼性の高いOTA更新、フェイルセーフロールバックにより、インテリジェントなエッジ/IoTアプリケーションを実現する。

 Canonicalでは、ARM、X86、RISC-Vに対応するUbuntu Coreにより、世界の主流開発プラットフォームであるUbuntuが、何十億ものエッジデバイスに対応するプラットフォームに変身すると説明。充実したアプリのエコシステムとオープンソースの管理インフラストラクチャにより、企業は運用したいサードパーティーのソリューションを容易に統合できるとしている。

 Ubuntu Core 24は多数の機器の接続を想定しており、Canonicalは工場でのデバイスあたりのインストール時間を短縮し、工場でのエアギャップインストールを可能にすることで、短時間での展開と世界的サプライチェーンのセキュリティに対応した。

 Ubuntu Core 24は、Ubuntu Coreのカスタムイメージを作成するツールに検証セットを導入した。検証セットとは、どのアプリケーションのどのバージョンを一緒にインストールすべきかを指定し、特定のデバイスに常に適切なアプリケーショングループをインストールすることを目的とした複数の署名済み文書。この文書を無線で更新することで、デバイスの更新を常にテスト済みのアプリケーションの組み合わせに制限できる。

 規制の厳しい環境で自動ネットワーク要求の高度な制限に対応し、デバイスメーカーは、デバイスの初期化中にすべてのネットワーク通信を無効化できるようになった。エンジニアリングチームがエアギャップ環境でCoreの新しいバージョンに移行するためのオフラインリモデリング機能も用意される。

 また、Ubuntu Core 24では、AIoTやグラフィックスアプリケーション向けのGPU統合を改善しており、開発者はGPUインターフェイスを使用し、エッジで推論を実行するAIモデルからグラフィックスアクセラレーションを要する製品まで、各種のアプリケーションを組み込める。グラフィックスドライバーの更新によってハードウェア互換性を高め、共有ユーザースペース環境を通じてリソースの利用を最適化した。

 Ubuntu Coreは、Canonicalの組み込みLinux向けセキュアディスプレイサーバーであるUbuntu Frameとも併用できる。Core 24の場合、Ubuntu Frameはオープンソース、プロプライエタリのプラットフォームの組み合わせを含め、ハイブリッドGPUシステムをサポートする。そのほかUbuntu Coreと併用可能なUbuntu Frameの機能には、マルチディスプレイデバイス対応ソリューション、スクリーンロック、シームレスブート、ドラッグ&ドロップのサポート、省エネディスプレイ、リモートアシスタンスのサポート、実行時のディスプレイレイアウトの変更、ユーザー設定可能な新しい診断画面などがある。

 デバイス管理面では、Ubuntu Core 24は、Canonicalのシステム管理ツールであるLandscapeおよびMicrosoft Azure IoT Edgeを統合し、各組織のニーズに応じた方法の選択を可能にしている。

 Landscapeは、OTA更新の一括制御、監査、アクセス制御、複数デバイス共通のコンプライアンスに対応する。管理ツールは接続の多い環境とエアギャップ環境の両方に対応し、カナリアリリース、リモートでのデバイスリモデリング、システムモニタリングなどの機能により、デバイス管理作業を効率化する。

 Canonicalは、Ubuntu CoreデバイスをAzure IoT Edgeサービスにシームレスに統合するAzure IoT Edgeのsnapも発表した。組織はこのsnapにより、Azureポータルから多数の対応デバイスにエッジワークロードを展開し、管理とモニターが可能となる。AMD64、ARM64ベースのアーキテクチャに対応するAzure IoT Edgeのsnapは、CanonicalのSnap Storeで公開中。

 ロボット開発者のための新しいROS統合機能も提供。Core 24の新しいデバイス管理、最適化されたインストール、AIoT機能を利用することで、新製品を大規模に提供でき、ROS(Robot Operating System)でソリューションを導入する実運用向けの統合機能も提供する。

 Canonicalは、モジュール型システム向けのROS基本snapを公開した。Canonicalが維持管理するこれらのsnapは、ros_core、ros_base、desktopなど共通のROSパッケージ群をROSディストリビューションごとに複数のフレーバーで提供する。開発者はこれらを利用してモジュール型のROS snap環境を設計し、再構成を可能にするとともに、メモリやOTA更新帯域幅を全体的に削減できるとしている。