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パロアルトとIBMがセキュリティ分野で協業、IBMの「QRadar」をパロアルトが取得
2024年5月21日 08:30
米Palo Alto Networks(以下、パロアルト)と米IBMは現地時間15日、AIを活用したセキュリティの成果を顧客に提供するための、広範なパートナーシップを発表した。この発表は、パロアルトとIBMそれぞれが、互いのプラットフォームと革新的な能力に深く関与することを示すものだとしている。
パートナーシップ拡大の一環として、パロアルトは、IBMのセキュリティインテリジェンス製品「QRadar」の知的財産権を含む、IBMのQRadar SaaS資産を慣習的な完了条件に従って買収する。買収完了後、パロアルトとIBMは、QRadar SaaSを使用している顧客に対し、3000の検出ルールを備え、AIを活用した脅威保護を提供する、業界をリードする次世代セキュリティオペレーション(SOC)プラットフォームである「Cortex XSIAM」への移行を促進する。
オンプレミス版のQRadarを使用している顧客で、今後もオンプレミスでの使用を希望する顧客には、既存のコネクターのアップデートや利用拡大機能に加えて、セキュリティ、ユーザビリティ、重要なバグ修正を含むIBMの機能とサポートを引き続き提供すると説明。Cortex XSIAMへの移行を選択したQRadar SaaSの顧客およびオンプレミス版を継続利用する顧客に対し、両社はビジネスパートナーのエコシステムとともに、円滑な移行ができるように緊密に協力し、対象の顧客には移行サービスを提供するとしている。
この合意の一環として、IBMはパロアルトから、Cortex XSIAMプラットフォームへの移行を選択したオンプレミス版のQRadarの顧客に対する増分支払いを受ける。
IBM Consultingは、パロアルトの顧客に対する推奨マネージドセキュリティサービスプロバイダー(MSSP)となる。さらに両社は、共同のセキュリティオペレーションセンターでマネージドSOCを提供するほか、共同のサイバーレンジを設立し、パロアルトのセキュリティ製品の価値に対する顧客の理解促進を図るための没入型体験を提供すると説明。グローバル、地域、各国でのデリバリー能力を備えたIBMの専門家が、watsonxやITオートメーション、脅威インテリジェンスを活用してアドバイザリー活動を強化し、パロアルトのセキュリティプラットフォームの成長と導入を促進するとしている。
パロアルトは、IBMのサイバーセキュリティパートナーとなり、パロアルトのサイバーセキュリティソリューションが、さまざまなアセットや規模拡大を支援するための反復可能な手法などを含む、IBMのAIサービスプラットフォームであるConsulting Advantage上でアクセスできるようになる。
両社は協力してコンサルタントのトレーニングを加速し、1000人を超えるIBMの専門家がパロアルトのプラットフォーム全体で最適な移行、デプロイ、導入サービスを提供できるようにする。IBMはまた、watsonxを活用して、Cortex XSIAM上に各業界向けの機能を構築する。IBMは、他の主要テクノロジー企業とのパートナーシップと同様に、この連携によってパロアルトとのセキュリティビジネスが大きく拡大すると予想するとしている。
IBMは、パロアルトのAIを活用したセキュリティプラットフォームの社内導入を拡大し、次世代のセキュリティ運用にCortex XSIAMを、ゼロトラストネットワークセキュリティにPrisma SASE 3.0を採用し、世界で25万人を超える従業員を保護する計画を公表。IBMによるセキュリティプラットフォーム化の導入は、パロアルトのポートフォリオ全体にわたるセキュリティ製品の合理化された運用により、顧客がどのようにメリットを得られるかを示す顕著な例だとしている。
パロアルトは、watsonx LLMをCortex XSIAMに統合してさらなる自動化機能を推進するとともに、IBMのwatsonxを活用して、カスタマーサポートの成果を向上させるロードマップを加速する意向と説明。watsonxは、パロアルトが既知の技術的問題にプロアクティブに対処し、カスタマイズされたセルフサービスソリューションを作成し、パロアルトのカスタマーサポート業務におけるエージェントの全体的な生産性を向上させるのに役立つとしている。さらにパロアルトは、クラウドと自動化における最新のイノベーションのメリットを得るために、他のIBMソフトウェア製品を導入する予定としている。
IBMでは協業を通じて、業界で最も包括的なクラウドネイティブアプリケーション保護プラットフォーム (CNAPP) であるPrisma Cloudとの関係を拡大すると説明。Prisma Cloudは、Red Hat OpenShiftやAnsible向けに構築されたクラウドネイティブセキュリティを含む、現在および将来のIBM DevOps製品との既存の統合を拡大する。IBMのDevOpsにおける強みと、パロアルトのクラウドセキュリティの専門知識を組み合わせることで、共通の顧客向けに「セキュアバイデザイン」のDevSecOps機能を強化し、安全でないコードが本番環境のクラウドワークロードで実行されるのを防げるとしている。
両社は、今回の発表における取引部分は、2024年9月末までに完了する予定で、規制当局の承認およびその他の慣習的な完了条件に従うものと説明。また、同取引の金銭的条件は開示していない。