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NICTなど4者、量子コンピューターに最適な量子ゲートシーケンスを高速に探索する技術を開発

 国立研究開発法人情報通信研究機構(以下、NICT)は9日、国立研究開発法人理化学研究所、東京理科大学、東京大学と共同で、量子コンピューターに最適な量子ゲートシーケンスを確率的探索手法を用いて迅速に探索する技術の開発に初めて成功したと発表した。

 量子コンピューターにタスクを実行させるには、コンパイラを使い、プログラミング言語で書かれた命令を量子ビットへのゲート操作で構成されるシーケンスに変換する必要がある。NICTでは、最適制御理論(GRAPEアルゴリズム)を網羅的探索に応用して、理論的に最適なものを特定する手法を開発したが、量子ビット数が増えるに従い、可能な組み合わせの数が爆発的に増えるため、網羅的探索が不可能になると説明。例えば、6量子ビットで構成される任意の量子状態を生成するタスクに対して、もし、網羅的な探索を行って最適なゲートシーケンスを見つけようとすると、現在最速の古典コンピューターを使っても、宇宙の年齢よりも長い時間がかかるという。

 そこで今回、NICTなど4者は、確率的アプローチによる最適な量子ゲートシーケンスを探索する手法の開発を試み、成功した。新しい確率的探索手法を使用すると、前述の問題に対する最適な量子ゲートシーケンスの探索が数時間ででき、桁違いに簡単になることが、スーパーコンピューター「富岳」を使い、確認・実証された。

スーパーコンピューター「富岳」を用いて計算したF=1の最適ゲートシーケンスの出現率

 この新しい手法は、量子コンピューターのコンパイラを高速化し、実用的な量子コンピューターの有用なツールとなることや、量子コンピューティングデバイスの性能向上につながることが期待されると説明。また、量子中継のノードにおける量子情報処理の最適化にも応用できるため、量子インターネットの実現や環境負荷の低減に貢献することが期待されるとしている。

 今後、研究チームは、今回得られた成果に機械学習のアプローチを統合して、最適量子ゲートシーケンスのデータベース化を目指すなど、量子コンパイラ処理の高速化を目指し、量子コンピューターのパフォーマンスの最適化に応用していくとしている。