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産学連携で生成AIの普及・活用を図る「Generative AI Japan」発足、ベネッセとウルシステムズが共同発起人に
2024年1月18日 06:15
一般社団法人Generative AI Japan(略称「GenAI」)が、教育事業の株式会社ベネッセコーポレーションとITコンサルティングのウルシステムズ株式会社が共同発起人となり、2024年1月付けで発足した(登記日1月9日)。代表理事に慶應義塾大学 医学部 教授 宮田裕章氏が就く。
産学連携で、企業や有識者が日本における生成AIの利活用のあり方を議論し、利用者実態に沿ったユースケースから業界標準を確立して、ベストプラクティスの普及を図る。また、ガイドラインの整備や政策提言も予定している。
宮田氏を含め、理事は17人。AWSジャパン・Google Cloud・日本マイクロソフト・日本オラクルといったメガクラウド企業や、サイバーエージェント・ウルシステムズの国内テック企業、慶應義塾大学・東京大学・琉球大学・松尾研究所のアカデミア、ベネッセ・デジタルハリウッド大学の教育分野、ベイカレント・Recursive・アルサーガパートナーズといった実装に携る企業と、さまざまな分野から集まっている。
なお協会発足時点で、多様な業界から16社が法人会員として参画を表明している。
産学で集まって未来のあり方を考えた中からルールを提言する
1月17日に開催された記者発表会において、慶應義塾大学の宮田氏は、「Generative AI Japanは、さまざまな産業の分野や、学びと向き合っている方々、新しい働き方と向き合っている方々と連携して、日本と世界の未来のあり方をともに考えていきたい。その未来像から、何をルールとして作るべきか、どのようなビジネスを作っていくべきかを創造しながら前に進んでいきたい」と語った。
ちなみに宮田氏によると、Generative AI Japanのロゴは、道が交差しながら多様な未来がひらいていくことを表しているという。また、協会名の略称の「GenAI」は英語の短縮語の「Gen AI」から来たものと思われるが、宮田氏はこれを「ジェナイ」と発音し、「ジェダイっぽい」とも言っていた。
発起人理事で業務執行理事である株式会社ベネッセコーポレーションの國吉啓介氏(データソリューション部 部長)は、「生成AIはすごく可能性がある一方で、社会の中に入れていくときにいろいろ考えなくれはならないことがある。これは段階的に進み、いままだ見えない未来に何かあるんじゃないかということが、現場で物を作っていく中で感じられる。このような機会に、さまざまな形で一緒に一丸となって、新しい未来のサービスにつながるような仕組みや学びを切り開いていけないかと考えている」とコメントした。
もう一人の発起人理事であるウルシステムズ株式会社の漆原茂氏(代表取締役会長)は、「ウルシステムズは先端技術大好きで仕事をしているが、最近の生成AIの流れを見ていると、社内だけでノウハウをためていくレベルではまったくないと気づいた。ビジネスサイドの方や、未来をつくっていく方、ルールを作る方、新しい教育をする方と、オールジャパンで垣根を越えて、前向きな形で未来の日本を作っていければと思っている」とコメントした。
先端技術の共有、ユースケースの共有、Labでの協業、教育、ルール作りの5つの活動
Generative AI Japanでは、5つの活動計画を軸に活動する。
「先端技術の共有と連携」では、クラウドベンダーから最新情報の提供を受け、先端技術の活用法を検討する。
「ビジネスユースケースの共有と実装支援」では、生成AIのビジネスユースケースを共有し、業界横断で共通して利用できる活用方法づくりと各業界への展開を行う。
「Labを起点とした共創・協業」では、「AWS Startup Loft Tokyo」「Google Cloud六本木オフィス(Tech Acceleration Program 支援拠点)」「Deloitte Tohmatsu InnovationPark」「Microsoft AI Co-Innovation Lab」をLab拠点とし、共創・協業を推進する。
「教育・学び」では、生成AI人材育成や、生成AI時代の働き方やキャリア像づくりを行う。
「生成AI活用のルール作り・提言」では、倫理的側面からの議論を行い、セキュリティ対策や危機管理におけるガイドラインづくりをし、国や公共機関との情報交換と提言をしていく。
業界を越えてオープンに集まる
記者発表会には、衆議院議員の小林史明氏(自由民主党)も出席した。氏は、AIが人間の仕事を奪うことも懸念されるが、日本ではこれから人手不足が問題となることから、日本こそAIを生かせるのではないかと述べた。そして、「そのためにも、新しいルールを提言いただき、ともに作っていきたい」と語った。
また、宮田氏を司会としたパネルディスカッションでは、理事の鈴木寛氏(東京大学公共政策大学院教授、慶應義塾大学政策メディア研究科兼総合政策学部教授)、玉城絵美氏(琉球大学 工学部 教授、H2L, Inc. CEO、東京大学 大学院 工学系研究科 教授)、馬渕邦美氏(株式会社 松尾研究所 パートナー)、國吉啓介氏(株式会社 ベネッセコーポレーション データソリューション部 部長)が、生成AIの未来と協会で目指すことについて語り合った。
その中では、早急な人材育成と早急な実装の2つを並行して推進する必要があることや、言葉になっているいものもデータにできると学びやすくなること、新しいものに対して過剰期待と過剰不満の両極端ではない世論づくりが必要なこと、オープンに集まることなどが話し合われた。