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NII、NTT、富士通など4者、光一波長あたり1.2Tbpsでの336km伝送と1Tbps超のデータ転送のフィールド実証に成功

 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 国立情報学研究所(以下、NII)、日本電信電話株式会社(以下、NTT)、東日本電信電話株式会社(以下、NTT東日本)、富士通株式会社の4者は30日、光一波長あたり1.2Tbpsでの伝送では世界最長となる伝送環境を構築し、フルスループットでの伝送と、一組の汎用1ソケットサーバーを用いた世界最大速度の1Tbps超データ転送を10月17日に成功したと発表した。

 同実験は、NTT東日本の敷設済み商用光ファイバー、NTTが開発したデジタル信号処理技術およびデバイス、富士通製の次世代光伝送システム「1FINITY Ultra Optical System」、NIIが開発したファイル転送プロトコル「MMCFTP(Massively Multi-Connection File Transfer Protocol)」を用いて実施した。この実験の成果は、学術通信ネットワークをはじめとするさまざまな高速大容量通信サービスの実現を可能とし、低コスト化や低消費電力化にも寄与するもので、今後各組織は成果を活用した学術通信ネットワークのさらなる高度化や、IOWN構想の実現に向けた研究開発を推進するとしている。

 4者では、5Gサービスやビッグデータ、AI、クラウドコンピューティングなどの発展に伴い通信トラフィックが急増する中、通信ネットワークのさらなる高速化および大容量化が求められていると説明。実例として、NIIでは全都道府県を400Gbps回線(沖縄は100G回線×2)で、日米間を200Gbps回線で結ぶ学術情報ネットワークSINET6を2022年4月から運用しているが、大学や研究機関などのアクセス回線の高速化とともに、400Gbpsに迫るデータ転送が活発になされるなど需要が急増しており、400Gbps超に向けたさらなる大容量化が望まれているという。

 一方、NTTはIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想における、APN(All-Photonics Network)の実現を2030年頃に目指している。APNではフォトニクス(光)ベースの技術を導入し、現在のエレクトロニクス(電子)ベースの技術では困難である圧倒的な低消費電力、高品質・大容量、低遅延の伝送を実現し、伝送容量として「125倍に」という目標性能を掲げている。

 これらの実現に向けて、NIIでは大容量回線を最大限に利用する高スループットファイル転送技術について取り組んでいる。また、NTTおよび富士通では、光一波長あたり世界最大容量となる1.2Tbpsの光伝送を実現するデジタルコヒーレント信号処理回路や光電融合デバイスの開発、光伝送システムの開発を実施している。

 今回の実験では、東京都と神奈川県の間に光一波長あたり1.2Tbpsの伝送が可能な光伝送ネットワーク環境を構築し、2種類の実験を行った。

 「実験1」では、東京都千代田区を起点として、神奈川県横浜市で光ファイバーを折り返すネットワークを構成し、光一波長あたり1.2Tbpsの伝送が可能であることを確認した。1.2Tbps信号のフルスループットは実験用テスターで確認しており、光一波長あたり1.2Tbpsの光信号を、敷設済みの商用光ファイバーを用いて336km伝送できたことは世界初になるという。

実証実験ネットワークの構成

 また、「実験2」では、1.2Tbps伝送環境下において、1組の汎用1ソケットサーバーを用い、NIIが開発したMMCFTPによるデータ転送を行った。実験の結果、1034Gbpsのデータ転送速度で、約47TByteの大容量データを転送完了させることに成功した。

データ転送実験 最先端のデジタル信号処理技術とOTUCn技術の実装イメージ

 NIIは、世界最高性能のネットワーク基盤SINETの整備により、全国の日本の研究教育の発展を支えており、今後も超高速・大容量性と低遅延性の両特長を追求していくと説明。また、データ流通を効率的に行うために、MMCFTPをSINET利用者に幅広く提供し、その実用性を高めていくとしている。

 NTTは、この成果を活用した大容量光伝送システムの開発により、圧倒的な低消費電力、大容量、低遅延伝送を可能とするIOWN APNのさらなる高度化を目指す。NTT東日本は、大容量光伝送システムを用いた高速大容量通信サービスの実現を目指し、検討を進めていく。富士通は、実証実験で得られた効果を基に、光伝送システムの大容量化や低消費電力化を実現する技術開発を継続し、顧客やパートナーとともに、持続可能な社会の実現に貢献していくとしている。