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東芝インフラシステムズ、首都高でローカル5G分散型アンテナシステムを用いた実証実験を実施

 東芝インフラシステムズ株式会社は14日、総務省が公募を行った令和4年度「課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」に、首都高速道路株式会社を代表機関とするコンソーシアムメンバーとして参加し、線状エリアに分散型アンテナシステム(DAS:Distributed Antenna System)を適用した、無線エリア設計手法の確立などの成果を得られたと発表した。同実証に使用したローカル5G DASは、12月の出荷を予定する。

 実証は、2022年10月から2023年2月の約5カ月にわたり、首都高速道路上でローカル5Gを活用して行われ、ローカル5Gの電波伝搬などに関する技術的検討を行う「技術実証」と、ローカル5Gを活用したソリューションを創出することを目的とした「課題実証」から構成された。

首都高速道路上の照明柱に設置した指向性アンテナとDAS子機

 1つ目の技術実証では、東芝デジタルソリューション独自の「DAS」の有効性を実証した。ローカル5Gは制度上、他者土地へ電波の漏えいを抑制する必要がある。DASは、基地局からの信号を複数のDAS子機へ分散させることで、細やかな無線エリア構築を実現する技術で、実証を通じて、首都高速道路上のカーブ区間において他者土地への電波漏えいを抑え、線状エリアへのDAS適用の無線エリア設計手法を確立した。また、DAS設置エリアでの電波測定結果から、屋外での複数DAS子機利用において無線干渉を抑制し、広いカバーエリア内でシームレスかつ安定した通信品質を確認した。

 2つ目の課題実証では、スマートグラスの点検業務支援システムを構築し、ローカル5Gの高速大容量通信の特長を生かした、点検現場での大容量の手順書ダウンロードと、映像・音声の双方向通信による作業効率化を検証した。実証の結果、設計書、手順書などの関係書類の持ち運びを不要とし作業負荷を軽減すると共に、音声認識を用いた作業結果自動入力により、1回あたり1時間要している作業報告書作成の効率化が期待できるという。

 また、4K映像のリアルタイム共有システムを構築し、現場作業者や走行する道路パトロール車から高精細な4K映像の現場状況をリアルタイム伝送することで、災害時における道路欠損や設備損傷状況の迅速な現地状況把握に資するかの検証を行った。実証の結果、交通管制室のオペレーターや現場作業者からは、4K映像の視認性や高精細映像の情報量の多さが評価され、交通管制室のオペレーターは特殊車両の出動有無の判断がしやすくなり、応援要請を受けた現場作業者は的確な準備を行えたという。

 東芝インフラシステムズでは、道路や河川、電力プラントなどの重要なインフラ施設は、設備の効率的かつ安全な維持管理が求められており、ローカル5Gは次世代通信として、高速大容量・低遅延・多接続という特徴を活用した維持管理の自動化・省力化の実現が期待されていると説明。今後、同実証での技術蓄積を基に、DAS活用による、歪曲(わいきょく)した線状エリアや複雑な構造物環境での効率的かつ柔軟なエリアカバーの実現と、スマートグラスや高精細映像共有システムによる維持管理業務の効率化・省力化の実現に貢献していくとしている。