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MS&ADインターリスク総研とNTT東日本、自治体向け「被害認定調査計画の策定支援サービス」を提供

 MS&ADインターリスク総研株式会社は23日、自治体の罹災証明書発行に向けた被害認定調査業務を対象に、「被害認定調査計画の策定支援サービス」を開発したと発表した。サービスは、東日本電信電話株式会社(以下、NTT東日本)が提供する罹災証明書発行システム「被災者生活再建支援システム」のオプションサービスとして7月からトライアルを開始し、2024年度に本格展開していく予定。

 被害認定調査計画の策定支援サービスは、自治体が災害発生後に罹災証明書発行などで被害調査を行うにあたり、応援要請を含めた初動体制の円滑な立ち上げなどに関する調査計画書の策定を支援する。地震や洪水の被害認定調査業務において、被害の様相が把握できないため、調査の実施件数が見積もれず、調査方針も決められない、どのくらいの応援を要請すればよいか見当がつかないといった、調査計画策定上の課題に対応するソリューションを提供する。

 サービスでは、エビデンスベースの意思決定に基づく調査計画書の策定を支援。地震および洪水の発生時に、被災件数の推定結果から調査の実施件数を見積もる。この調査件数をエビデンスとして、調査に必要な要員数や実施スケジュールに関する情報をまとめた「調査計画書(ひな形)」を提供し、災害時の実態に即した調査条件などを入力することで、より的確な調査計画書を策定できる。

 AIアルゴリズムなどを活用した被災件数の推定は、内閣府の官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)において、防災科学技術研究所と共同開発した「自然災害被害推定システム」の手法をベースにしている。推定精度をさらに向上させるため、近年の災害被害データを加えて高度化した手法を採用している。

 地震は目安として、最大震度5弱以上の揺れが観測された場合に、通常15分程度で被災件数を推定(速報版)し、その後24時間以内にPRISMで開発したAIアルゴリズムにより、より精緻な推定結果に更新(確定報)する。洪水は国土地理院から浸水推定図が公表された場合に、公表から約24時間後に浸水深分布・被災件数を推定する。

 調査計画書(ひな形)は、内閣府の「災害に係る住家被害認定業務 実施体制の手引き」や、産官学連携して開発した「被災者生活再建支援システム」による自治体支援活動を通じて得たノウハウを反映して作成している。

 地震や洪水の発生時には、Webブラウザーから「被害認定調査計画策定ツール」にログインすると、調査計画書(ひな形)、被災推定結果集計表、被災マップビューア(広域)、被災マップビューア(詳細)の4種類のファイルをダウンロードできる。ファイルは、サービス利用の市区町村が所属する都道府県別にパッケージ化しており、エクセルはマクロを使用せず、被災マップビューワーもGISなどの専用ソフトを必要としないため、一般的なIT環境ですぐに利用できる。

 調査計画書(ひな形)のエクセルシートは、調査条件を設定する「入力シート」と、調査条件が反映された「被害認定調査計画書」で構成される。サービス利用者は、被災件数の推定値や各計算条件のデフォルト値を参照しながら、災害時に収集した情報を考慮してユーザー設定値を決定する。決定した調査条件は「被害認定調査計画書」に自動反映されるほか、部署名などを手入力することで抜け漏れのない計画書が完成する。

 サービスは、実用最小限の機能で構成されており、より役立つサービスの開発につなげることを目的に、8月23日に無償トライアルを開始した。トライアル参加対象は、NTT東日本が提供している「被災者生活再建支援システム」の導入自治体または導入予定の自治体。

 今後は、トライアルで得た意見、要望を基に、サービスの高度化と充実化を図り、2024年度の本格展開を予定する。また、サービスをより有効に活用できるようにするため、業務管理者向けの研修として「(仮称)被災認定調査業務のマネジメント研修」を開発し、サービスとセットで提供する予定としている。

調査計画書(ひな形)のイメージ図