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東急電鉄と日本IBM、鉄道設備の保守業務高度化に向けた「状態保全支援システム」を4月下旬に運用開始

 東急電鉄株式会社と日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は12日、テクノロジーを活用した鉄道設備の保守業務の高度化に向け、東急電鉄と日本IBMが共同で開発した「状態保全(CBM : Condition Based Maintenance)支援システム」を活用した、鉄道設備の状態モニタリング、リスクスコアの可視化を4月下旬から運用開始すると発表した。システムの保守・運用は、東急テックソリューションズ株式会社が行う。

 CBM支援システムは、遠隔で取得した鉄道設備に関するデータを蓄積・分析することで、設備の故障リスクを可視化する機能を実装したもの。システムの機能を活用することで、これまで行ってきた定期的な点検と比べて、現地検査の見直しによる業務の効率化、夜間作業の負担軽減、データに基づく円滑な技術伝承といった効果が期待されるほか、適切な設備更新計画の策定・実行によるコスト抑制、故障の未然防止による運行品質の維持・向上を目指すとしている。

 また、システムの対象は、現時点では転てつ機およびレールとなっているが、今後、順次対象の拡大に取り組むとしている。

 鉄道設備データの状態モニタリング機能は、鉄道設備のデータをリアルタイムで伝送し、クラウド上で参照することができる機能。従来は、現地での定期的な点検でのみ設備状況を確認できたが、システムの運用を開始することで、取得したデータを遠隔で確認でき、効率的な検査の実施が可能になる。

 さらに、取得したデータが一定の条件を満たした場合、アラートで知らせて設備故障の兆候を察知することを目指す。運用開始時では、状態モニタリング機能の運用対象は転てつ機となっており、データの伝送機能は一部の転てつ機(4月末時点で351台中43台)に搭載されており、今後更新時期に合わせて段階的に置き換えていく。

 分析結果に基づく設備の劣化状況・設備の重要性に基づくリスクスコアの可視化では、一定期間蓄積した鉄道設備データを分析し、現状のコンディションと、設備ごとの重要性とを掛け合わせて総合的にリスクスコアを算出する。マトリクス表示に基づくリスクを5段階で評価することで、優先してメンテナンスすべき対象を可視化する。経験や知見に基づくこれまでの判断に定量的な評価基準を加えることで、より効率的なメンテナンス計画の立案、実施に貢献する。対象は転てつ機およびレール。

 東急電鉄は、構造変革による事業基盤の強靭化、およびアフターコロナに即した社会的価値の持続的な提供を目指す中期事業戦略「3つの変革・4つの価値」を策定し、テクノロジーを活用したオペレーション変革として、これまでに、鉄道版インフラドクターの導入、CBM推進を目的とした空調設備改修などに取り組んできた。

 3社は、システムの運用を通じて、鉄道設備の保守業務におけるデジタル技術を活用した最適化を実現し、さまざまなデータを有効に活用することで、鉄道事業のDXを推進していくとしている。