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三井化学、GPTとIBM Watsonの融合による製品の新規用途探索高精度化と高速化の実用検証を開始

 三井化学株式会社と日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は12日、生成AI(ジェネレーティブAI)のひとつであるGPT(Generative Pre-trained Transformer)と、IBMのAI「IBM Watson」を融合することで、三井化学製品の新規用途探索の高精度化と高速化の実用検証を開始したと発表した。取り組みでは、三井化学における事業領域のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進することで、製品のトップライン(売り上げ)やマーケットシェアの拡大を目指す。

 三井化学は、2022年6月からIBM Watsonによる新規用途探索の全社展開をスタートしている。これまでに、20以上の事業部門がIBM Watsonを実用し、100以上の新規用途を発見したという成果が上がっており、今年度は研究開発やコーポレート部門も含め、さらに実用部門を拡大していくとしている。

 事業部門の一つのテーマにつき、500万件以上の特許・ニュース・SNSといった外部のビッグデータをIBM Watsonにデータ投入し、さらに三井化学固有の辞書も構築している。長年の豊富な経験や専門知識を持った営業・事業領域の現場のスペシャリストが、IBM Watsonを活用して効率的にビッグデータを分析することで、先入観や既知の知見にとらわれない新規用途を発見することが可能になった。例えば、SNSデータ分析では、「ある地方電鉄の車中で、カビ臭い」という投稿が多いことを見つけ出し、従来の営業手法では思いつかなかった電車内の防カビ製品の販売活動へとつながったという。

 このように、IBM Watsonの新規用途探索において成果は出ているものの、新規用途の発見にはある程度の時間が掛かるという課題があると説明。この課題に対し、先端デジタル技術の生成AIのひとつであるGPTを活用することで、特許やニュース、SNSといったテキストデータから、三井化学が注目すべき新規用途を生成・創り出し、さらにその注目すべきとする根拠や外部環境要因を明らかにして、新規用途探索の精度とスピードをアップさせることで、新規用途の発見を激増させるとしている。

 三井化学と日本IBMは、GPTのひとつであるMircosoftのAzure OpenAIなどを活用した実用検証を開始した。新規用途探索という目的に合わせて、GPTに対する指示を洗練させ、三井化学が注目すべき新規用途候補を特定・抽出。さらにこの結果をIBM Watsonに適用し、キーワードを絞り込んで分析することで、Watson実用に慣れていないユーザーでも、短時間で新規用途が発見可能となるという。また、SNS動画も含めたマルチモーダル化を行い、これまでIBM Watsonを活用して発見してきた新規用途の情報をGPTへフィードバックすることで、新規用途創出の自動化の実現を目指すとしている。

 三井化学は、今後大きく発展する生成AIとIBM Watsonを活用し、さらにSales Force Automation(SFA)/Marketing Automation(MA)、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)やロボティクスと連動させ、事業とR&Dといった異なるステークホルダー間の情報を融合させることで、市場開発から製品開発までのスピード加速を実現していくとしている。

モビリティ用途に使われるA材料の機能特性と用途に関するWatson分析例(ネットワーク相関図)