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ほぼすべてのクラウドジャーニーがマルチクラウドに――、日本オラクルがマルチクラウド活用に関する調査結果を発表
2023年3月24日 12:30
日本オラクル株式会社は23日、日本におけるマルチクラウド戦略について説明するとともに、マルチクラウド活用に関する調査結果を発表した。
日本オラクル 常務執行役員 クラウド事業統括の竹爪慎治氏は、「いまや企業にとって、マルチクラウドは必須の戦略になっている」と前置き。「オラクルのマルチクラウドへのアプローチの基本は、オープンマルチクラウドエコシステムであり、あらゆる場所で、さまざまなクラウドとシームレスに連携し、お客さまに多くの選択肢を提供することになる」と発言した。
また、「クラウド戦略は、オンプレミス戦略とはスタンスを変えており、他社との連携によるエコシステムの構築に力を入れている。これらの連携においては、オラクルから他社にアプローチして、クラウド上でサービスを使えるようにしている。オラクルからドアを開けていることが、従来とは違ったアプローチであり、これは市場の声やニーズを踏まえたものである」と述べている。
オラクルのOCI(Oracle Cloud Infrastructure)では、分散クラウド戦略を推進し、顧客にニーズに基づいた包括的で、オープンなポートフォリオを用意。マルチクラウド、パブリッククラウド、ハイブリッドクラウド(ニューオンプレミスを含む)、専用クラウドの4つのカテゴリーから展開している。
「統一された次世代OCIアーキテクチャーの上で、4つのクラウドを展開しているのがオラクルの強みになる。短時間で、高いサービスレベル、高いコストパフォーマンスを備えたサービスへと拡張ができる。データ主導のDX、ITコストの最適化、統一されたビジネスサービス基盤の実現において、日本の企業への貢献ができると考えている。分散クラウド戦略を日本においても積極的に展開していきたい」としながら、「分散クラウド戦略のなかでも、マルチクラウドは重要な領域になっており、今後もニーズにあわせて、ソリューションポートフォリオを拡張していくことになる。そのなかで他社との連携はより重要になってくる」と述べた。
ここでは、Azure向けOracle DatabaseサービスであるOracle Database Service for Azure(ODSA)、AWS向けのMySQL HeatwaveサービスであるOracle MySQL Heatwave on AWS、AzureとOCI間の低遅延インターコネクトを実現するOCI Interconnect with Azureなどを用意していることを示した。
特に、マイクロソフトとのパートナーシップについて言及。「オラクルとマイクロソフトは、2019年から連携を行い、マルチクラウドの取り組みを推進。12リージョンにおいて、300社以上のお客さまをサポートしている。2022年に提供を開始したODSAは、Azureのユーザーが、OCI上のOracle Databaseを安全、迅速に活用できるサービスであり、他社に対して、オラクルのサービスを使いやすくしていく取り組みとしては象徴的なものになる。Azureのポータルから簡単にオラクルのデータベースサービスの設定を可能にし、迅速な導入ができるほか、AzureとOCIのリージョン間を2ms以下の低遅延で結び、基幹系サービスにも対応できる水準でありながらも、これを無償で提供している。また、オラクルが持っているデータベース管理製品のフルラインアップを利用してもらえるという特徴も持つ」と述べた。
ODSAでは、両社のベストプラクティスをあらかじめインプリメンテーションしていることから、セットアップや運用にかかるコストを最適化でき、迅速な立ち上げを実現。各種データ管理を利用できるため、データ主権も実現できるとした。
「ベストプラクティスという点では、マイクロソフトのPower BIなどと、オラクルのDatabase Serviceの組み合わせのほか、日本では、オンプレミスからのリフト&シフトによるクラウド化を進めるケースが多く、フロントエンドでマイクロソフト製品を使っているというメリットを生かし、フロントエンドとバックエンドの密連携によるユースケースが多い」などとした。
特に日本では、マルチクラウドの最適化のためには、パートナーとの連携が重要であることに言及。「日本マイクロソフトとの連携においても、40社近くのパートナーから賛同を得ており、各社が積極的なインプリメンテーションを行っている。ODSAにおいても、システムサポート、TIS、システナなどが、構築、運用支援のためのサービス提供を行っている。日本におけるマルチクラウドのニーズに対応した提案を加速していく」と語った。
また、ハイブリッドクラウドでは、OCI上で動作するOSとして、Red Hat Enterprise Linuxを正式にサポートしたり、オンプレミスと同じVMwareによる仮想化環境をクラウドで提供するOracle Cloud VMware Solutionを提供したりといった取り組み、オンプレミスでハイブリッドクラウドサービスを提供し、ニューオンプレミスを支援するOracle Exadata Cloud@Customer、AI分野におけるNVIDIAとの連携などを挙げた。
主流となるマルチクラウド活用に関する調査結果
日本オラクルでは今回、「主流となるマルチクラウド活用(Multicloud in the Mainstream)」に関する調査結果も発表している。同社では、この調査結果をもとに、「現在、ほぼすべてのクラウドジャーニーがマルチクラウドジャーニーになりつつある」と指摘した。
日本の企業においては、「少なくとも2つのクラウドインフラプロバイダー(IaaSおよびPaaS)を利用している、または利用する予定」との回答は98%に達し、「4つ以上のクラウド・インフラストラクチャを利用または利用予定」とした回答は35%以上に達していることがわかった。
この傾向は、グローバルでも同様であり、マルチクラウドが高い比率で利用。2つのマルチクラウド利用が98%、4つ以上のマルチクラウドが31%となっている。日本オラクルでは、「マルチクラウドが、エンタープライズテクノロジーの新たな現実となっていることが明らかになった」と総括している。
同調査は、S&P Global Market Intelligence傘下の451 Researchが、オラクルのOCI部門の調査委託により実施したもので、2022年第3四半期に、北米や欧州、日本を含むアジア太平洋、中東、南米において、500人以上の従業員を有する企業(北米では1000人以上)を対象に、組織内でのクラウドの利用方法について、意思決定者などの1500人から回答を得ている。
先に触れたように、クラウドインフラプロバイダーの利用では、国内外ともに、高い比率でマルチクラウド化が進んでいるが、クラウドアプリケーションプロバイダー(SaaS)でも、同様の傾向が見られており、グローバルの96%の企業が「少なくとも2つのクラウドアプリケーションプロバイダーを利用している、または利用する予定」と回答。45%が「5つ以上のプロバイダーのクラウドアプリケーションプロバイダーを利用または利用予定」としている。
日本では、「2つ以上」とした回答は約92%だったが、「5つ以上を利用または利用予定」との回答は約60%とグローバルを大きく上回った。
マルチクラウドにおいて、最も重要なユースケースとしては、グローバルの企業では、「クラウド環境間のコスト最適化」が23%、「ワークロードやデータ移動」が19%、「IT環境全体のリスク軽減」が16%であるのに対して、日本の企業では「開発者の選択支持」が23%と最も多く、「クラウド環境間のコスト最適化」が21%、「ワークロードやデータ移動」および「地理的拡大やグローバルサービス」が18%となっており、大きな差が出ている。
だが、マルチクラウドによる将来の重要なユースケースでは、グローバルでは、「データの冗長性やバックアップ」、「ワークロードやデータ移動」、「クラウド環境間のコスト最適化」が上位を占めたのに対して、日本の企業でも「データの冗長性やバックアップ」、「ワークロードやデータ移動」、「地理的拡大やグローバルサービス」の順番となり、ほぼ同様の結果となった。
また、マルチクラウド活用の最も重要な動機では、グローバル企業においては、「データ主権/データの局所性」が41%、「コストの最適化」が40%、「ビジネスの俊敏性とイノベーション」が30%となっている。日本の企業でも、グローバルと同様に、「コストの最適化(44%)」、「データ主権/データの局所性(33%)」が上位2つを占めた。
日本オラクル 事業戦略統括 事業開発本部の佐藤裕之本部長は、「日本では、コストの最適化に高いニーズがあり、さらに、規制対応やベストオブブリードのクラウド活用が比較的高い結果になっている」と分析した。
一方で、「プライマリIaaS/PaaS パブリッククラウドプロバイダーでは、どのような種類のワークロードを稼働しているか」という質問に対しては、グローバルでは「顧客関係管理(CRM)」、「ITシステムの監視・管理機能」、「データ処理、分析、BI」が上位を占め、日本の企業では、「ITシステムの監視・管理機能」、「低遅延な高性能アプリ」、「従業員の生産性機能」、「企業資源管理(ERP)」が上位に並んだ。
それに対して、「セカンダリIaaS/PaaS パブリッククラウドプロバイダーでは、どのような種類のワークロードを稼働しているか」という質問に対しては、グローバルでは、「企業資源管理」、「低遅延な高性能アプリ」、「顧客関係管理(CRM)」が上位となり、日本の企業では「低遅延な高性能アプリ」、「企業資源管理(ERP)」、「従業員の生産性機能」が上位になっている。
さらに、業界別にプライマリクラウドとセカンダリクラウドのワークロードを調査したところ、「金融サービスや通信といった業界特有のユースケースでは、データ処理や分析は、プライマリクラウドで行うことが圧倒的に多いが、それ以外のワークロードについては、それほど差がなく、セカンダリクラウドはセカンダリではないこともわかった」という。
また、プライマリクラウドプロバイダーの選択においては、シニアディレクターでは技術サポートなどの技術要素を重視している傾向が強いこと、プライマリクラウドプロバイダーを決定した要因として、グローバルでは、「会社のブランディングや評判」、「技術サポートや専門性」、「サービス実績」が上位となったが、日本では「サービス実績」、「地理的なフットプリント」、「会社のブランディングや評判」の順になっており、「日本の企業は、実績があり、事例が多い企業を、プライマリクラウドプロバイダーに選ぶことが多い」とした。
マルチクラウド活用の阻害要因としては、「クラウドプロバイダーの管理」が34%、「ネットワークと相互接続性」が30%となったのに対して、日本企業では、「クラウド間でのセキュリティの確保」が39%、「ネットワークと相互接続性」が33%、「クラウドプロバイダー管理」が31%となっている。
「日本の企業では、セキュリティに対してシビアに取り組んでいる企業が多く、これがマルチクラウドでも同様であることが反映された。また、コストの最適化やそれを管理できるのかといった点にも課題を感じている点が特徴といえる」と述べた。
さらに、マルチクラウドの管理プラットフォームは、グローバルも、日本も同等の比率で利用されているが、グローバルでは「クラウドのコスト最適化」や「共通のセキュリティやガバナンス」を管理プラットフォームに期待しているのに対して、日本の企業では「一貫したネットワーク運用とポリシー」や「単位の管理インターフェイスや画面」が上位となり、傾向が異なることがわかった。
また、日本の企業の方が、マルチクラウドのネットワークの相互接続の利用率が高いことや、シングルクラウドの活用をリスクに考えている企業が多いことがわかり、「これらの点は意外な結果であるが、むしろ、日本の企業の方が、マルチクラウドに対する考え方をはっきりと持っていることが判断できる」とした。