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NECと筑波大学、顔映像から浮腫の度合いを推定する技術を開発

 日本電気株式会社(以下、NEC)と国立大学法人筑波大学は10日、疾患や体調の変化などにより皮膚組織に水分がたまる症状である浮腫(むくみ)の度合いを、AIを活用して顔映像から推定する技術を開発したと発表した。AIを活用して顔映像から浮腫を推定する技術は、世界初になるとしている。

 浮腫は、腎疾患や心疾患、肝疾患などさまざま原因で生じるが、その患者数は透析34万人、心不全120万人と推定されており、浮腫の状態を日常的に確認する技術は、原因となる疾患の状態の変化を把握し、慢性期の悪化防止や早期発見につながるため、その実現が期待されているという。

 従来、透析患者は浮腫の簡易計測手段として体重計を用いている。NECと筑波大学が今回開発した、透析患者の顔映像から浮腫の度合いを推定する技術を検証した結果、従来の体重測定による計測を代替できる精度であることを確認した。

 開発した技術では、複数の患者の顔映像を用いて、顔に表出するさまざまな浮腫の情報を抽出するAIモデルを事前に学習する。その際に、浮腫と相関のある体重を教師データとして用いることで、浮腫の有無や度合いを高精度に事前学習する方式を開発した。事前学習したAIモデルをベースにすることで、利用する患者のデータが少量でも、その患者の浮腫に合わせたAIモデルを転移学習し、推定精度を高められる。

 顔映像のみで浮腫の有無や、浮腫の度合いを推定でき、人物の顔の検出にはNECの顔認証技術を応用することで、迅速かつ正確な検出を実現している。また、通常のカメラ映像で推定できるため、スマートフォンやタブレット端末が利用でき、外出先や車いすの利用者でも負荷なく利用できる。さらに、場所や環境の制限を受けずにデータが取得できるため、食事や排泄による浮腫度合いの経時変化の分析などが可能となる。

 39人の透析患者データを用いた技術検証では、透析患者は透析前後において、浮腫の有無の変化が生じることと、その際の体重変化が余分な体液の変化とみなせることに着目し、客観性のある教師データとして用いている。39人から取得した約2万枚の画像を用いた検証の結果、正解率85%で浮腫の有無を判別し、体重変化の平均絶対誤差0.5kgで浮腫の度合いの推定が可能であることを確認した。この平均絶対誤差は、人が外観から判断が難しい浮腫の変化が判別できる水準であり、疾患の悪化の早期発見につながると考えられるとしている。

 NECと筑波大学は今後も連携し、今回の技術向上のためさらなるデータ集積を図るとともに、医療介護・ヘルスケア分野での具体的応用に関して探索していくと説明。また、NECでは、2024年度の実用化を目指す。