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5Gと「docomo MEC」で「AI顔認証モバイルゲート」の処理能力を向上

熊平製作所・クマヒラ・リアルネットワークス・NTT Comの4社が共同検証

 株式会社熊平製作所、株式会社クマヒラ、リアルネットワークス株式会社、NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)は8日、AI顔認証プラットフォームを搭載した可搬型のセキュリティゲートである「AI顔認証モバイルゲート」に、5Gと「docomo MEC」を組み合わせた共同検証により、ゲートの処理能力の大幅な向上に成功したと発表した。同日には、4社による取り組みの背景や概要、共同検証の結果について説明会が行われた。

 これまで、セキュリティゲートを提供する熊平製作所、クマヒラと、AI顔認証プラットフォームを提供するリアルネットワークスは、イベントなどにおける入場管理業務の省人化・省力化のために、「AI顔認証モバイルゲート」の実用性を検証してきた。

 今回の検証では新たにNTT Comが加わり、低遅延を特長とする5Gおよび端末に近いサーバーによりデータの高速処理を実現する「docomo MEC(マルチアクセスエッジコンピューティング)」を組み合わせることで、顔認証やゲート制御の通信にかかる時間を短縮して処理能力向上を図り、技術的観点から大規模イベントなどへの活用の可能性を検証した。

ICカードなどでタッチして通過する従来型のモバイルゲート(右)と「AI顔認証モバイルゲート」(左)

 NTT com 執行役員 5G&IoTサービス部長の藤間良樹氏は、現在の入場管理システムが抱えている課題について、「これまでの人手による入場管理は、チケットの確認作業が非効率であり、コロナ感染リスクなど人にまつわる負担も大きい。さらに、目視確認による誤認のリスクやチケットの転売、偽造のリスクもある。一方、セキュリティゲートは、屋外での有料イベントなど一時的な利用のために常設のゲートを導入するのは非現実的といえる。また、インターネット経由の制御では反応速度やセキュリティに不安がある」と指摘。「こうした課題に対して、今回、熊平製作所・クマヒラとリアルネットワークスによる『AI顔認証モバイルゲート』に、当社の『docomo MEC』および5Gを組み合わせることで、可搬型でありながらスピードと安全性を備えたセキュリティゲートを実現した」としている。

 今回の取り組みにおける各社の役割としては、熊平製作所が「可搬型セキュリティゲート『モバイルゲート』の提供、環境設定、技術的評価」。クマヒラが「事業的観点からの評価」。リアルネットワークスが「AI顔認証プラットフォーム『SAFR』の提供、技術支援」、NTT Comが「5G回線などの通信環境設定、『docomo MEC』の提供、技術支援」を担当した。

4社による「AI顔認証モバイルゲート」の取り組み概要

 「AI顔認証モバイルゲート」と5Gおよび「docomo MEC」を組み合わせた効果について藤間氏は、「5Gモバイルを活用することで、通信ケーブルが不要でフレキシブルな設置が可能となる。例えば、イベント期間中のみ会場に設置するといった一時利用も可能になる。また、5Gによる無線区間の広帯域・低遅延化、最寄りのMEC拠点での認証処理、AI顔認証の計算をGPUで高速処理することで、顔認証・ゲート制御の高速処理・高速レスポンスを実現。そして、ドコモ網内での閉域通信により、認証データや個人情報の漏えいを防止し、モバイルゲートの安全性を大幅に向上した」と説明した。

「AI顔認証モバイルゲート」における顔認証の様子

 2022年7月1日から9月30日まで行われた共同検証では、従来のパブリッククラウド環境の「AI顔認証モバイルゲート」と、5Gおよび「docomo MEC」を使用した「AI顔認証モバイルゲート」の処理能力を比較検証したという。具体的には、顔画像送信からゲート開扉まで1回の操作にかかった時間と、1分あたりゲートを通過できる人数を計測した。

共同検証の評価方法

 検証の結果、顔検出からゲート開扉までの1回の処理時間は、従来環境の約2.05秒に対して、約1.11秒と約46%削減を実現した。また、ゲートを通過できる人数についても、従来環境の39人/分に対して、48人/分と1分あたり23%増え、「AI顔認証モバイルゲート」の処理能力が向上していることが実証された。これは、来場者数が3万人のイベントで試算すると、入場処理に要する時間が従来環境の約3時間から約2時間30分となり、約30分短縮されることになる。これによって、よりスムーズな入場が可能となり、来場者の満足度向上に期待できる。

共同検証の評価結果

 この検証結果を踏まえ、4社は「AI顔認証モバイルゲート」の商材化に向けた検討を行っていく。また、今後は大規模イベントの運営企業など、入場管理業務を行う企業に向け日本各地において共同でプロモーションを実施する。具体的には、建設現場の入退場管理、クルーズ船など不定期便の乗船チェック、イベント会場のチェックイン、避難所でのセキュリティ構築などの活用シーンを想定している。将来的には、ネットワークスライシングなど、5G SAならではの先進テクノロジーとの組み合わせにより、さらなる価値向上を目指していく。