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富士通、光1波あたり1.2Tbpsの大容量伝送が可能な光伝送技術を開発

水冷技術の採用でCO2排出量を70%削減

 富士通株式会社は14日、光1波あたり1.2Tbpsの大容量伝送が可能な、デジタルコヒーレント光伝送技術の開発に成功し、実際の光伝送装置として通信が可能なことを確認したと発表した。

 開発した技術は、最新の半導体プロセスを適用したデジタル信号処理LSI(DSP)の適用に加えて、世界初の光伝送装置への水冷システムの導入や、機械学習を用いた光ネットワーク全体のリソースの最適化により、富士通調べで世界最高となる光1波あたり1.2Tbpsの大容量伝送を実現しながら消費電力を低減し、従来製品と比較してシステム全体のCO2排出量を70%削減する。

 テラビット光伝送システム技術としては、世界初となる140Gbaudの高速信号を伝送可能とするデジタル信号処理LSI(DSP)と、レーザーの発する波長の純度を高めつつ、光伝送に必要な任意の波長に設定可能な狭線幅波長可変レーザーを適用。さらに、送受信デバイスや光伝送路に発生する光波長のひずみを高精度に補償する、富士通の独自技術を組み合わせることにより、世界最高となる1波あたり1.2Tbpsの大容量伝送を実現した。

 また、光通信においては、一般的に伝送容量が増加すると通信できる距離が短くなる傾向があるが、今回の技術を適用することで、従来技術と比較して同じ伝送容量で4倍以上の到達距離性能を実現した。

 システムの冷却についても、従来の光伝送装置では空冷技術が用いられているが、開発した技術では、富士通のスーパーコンピュータの開発および製造における知見を生かして、世界で初めて光伝送装置に水冷技術を適用した。

 長期間にわたって使用される通信装置の分野において不可欠となる、高信頼性やメンテナンス性を保ちながら、冷却効率を向上させ、伝送容量(Gbps)あたりの消費電力が世界最小の120mWとなる低消費電力化を実現。光伝送装置全体では、空冷方式を採用した従来の装置と比較して3分の1の小型化、軽量化も図り、輸送時に発生するCO2排出量削減や、使用終了後の廃棄量削減によるCO2排出量削減に貢献する。

水冷技術の適用による小型化のイメージ

 さらに、機械学習を用いた光ネットワークモニタ技術を活用。従来の光ネットワークでは、必要とされる通信容量を常に安定して確保できるように、運用環境により変化する光ファイバーの性能や光伝送システム単体の状況など、ネットワーク設計時に必要となる条件を厳しく見積もって設計していたが、今回、機械学習を用いたネットワークモニタ技術により、光ファイバーや光伝送システムなどの光ネットワーク構成要素の状況を自動で高精度に捉え、分析できるようになった。これにより、ネットワーク構築時のDSPの変調方式や、構成要素の設定に生かすことで、消費電力を抑えつつ、光伝送装置の持つ伝送性能を最大限に引き出したネットワークの構築を可能とする。

 富士通では、開発した技術を適用した光伝送装置を2023年度上期中に製品化し、グローバルに提供を開始する予定としている。