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日立、鉄道事業者向けに車いすや白杖などの鉄道利用者の列車乗降サポート業務を支援するサービスを提供

 株式会社日立製作所(以下、日立)は8日、駅係員による車いすや白杖(はくじょう)などの利用者を対象とした、列車乗降サポート業務をトータルに支援する「移動制約者ご案内業務支援サービス」をクラウドサービスとして提供開始した。

 移動制約者ご案内業務支援サービスは、電話や口頭伝達を主とする列車乗降サポート業務のプロセスを電子化し、利用受付から駅係員間の連絡・引き継ぎ、乗降サポートの実績管理といった一連の業務をスマートデバイス上で完結できるシステムを提供する。

 従来、車いすや白杖などの利用者が列車を乗降する際には、乗降駅係員の習熟した連携作業により安全・利便性が保たれてきた。一連の案内業務は、乗車駅より電話連絡を受け、降車駅の係員が詳細を紙の連絡票に記録し、記録内容を参照しながらホームにて当該の利用者を迎えるという流れとなるため、連絡不備の防止や限られた人員でのサービス品質の向上など、公共交通機関の利用者のさらなる安全安心な環境整備と係員の業務負荷軽減が課題となっている。

 こうした課題を受け、日立では2017年に西武鉄道と共同で「車いすご利用のお客さまご案内業務支援システム」を開発。デジタルソリューションを加速するLumadaのユースケースとして、使い勝手の検証やシステムの強化を行い、2020年には小田急電鉄株式会社で「お客さま介助システム」として導入されるなど、実績を重ねてきた。

 今回、多くの鉄道事業者の導入・利用の促進に向け、システムをSaaS化することで、クラウド環境での提供による初期導入コストや保守コストの削減、TCO改善に寄与するとしている。また、サービスは2022年6月から、九州旅客鉄道株式会社(以下、JR九州)の「JR九州あんしんサポートネット」のシステム基盤として、先行して利用者に提供されている。

サービスの概要図

 サービスでは、経路(列車番号)や乗車位置、車いすの場合はその種類(手動・電動)などの乗車情報を乗車駅側がスマートデバイスに入力することで、降車駅側にプッシュ通知で連絡が入り、従来は電話による口頭伝達に頼っていた一連の連絡業務がスマートデバイス上で完結し、スムーズに乗降駅間の連携が可能となる。

 ユーザーインターフェイスについては、サービスの前身となる西武鉄道との協創において、日立の価値協創手法である「Exアプローチ」を適用して、デザイン思考に基づく多様な視点で現場の課題や想いを引き出し、解決策の検討を重ね、現場の駅係員が使いやすいユーザーインターフェイスを実現。対応状況に応じた背景色の変更、新しい対応案件が入った際や到着時のアラーム鳴動など、きめ細やかなユーザーインターフェイスや機能を提供し、連絡不備の解消や駅係員の負担の軽減に貢献する。

 また、急激なシステム化により駅係員の業務習熟に支障がないよう、従来の列車乗降サポートの業務フローに沿った機能を提供するなど、現場目線での使いやすさを実現した。これにより、連絡不備のリスクが少なくなること、また乗降車に要する時間も短縮されることで、鉄道利用者のより安全安心な移動の実現に貢献する。

 一連の連絡業務をデジタル化することで、把握が難しかった乗降駅双方の案内業務履歴を一元的に管理できるため、社内全体でノウハウとして共有し、案内業務の一層のサービス向上に寄与できる。また、履歴データは、列車乗降サポート業務を必要とする乗客の利用状況の分析や、利用実態の調査報告などに幅広く活用できるため、さらなる公共交通機関の安全安心な環境整備に貢献するとしている。

 日立では今後、鉄道事業者のほか、バスや空港、公共施設などにおいて、サービスを応用した新しい案内サービスの提供を図るなど、公共交通機関利用者の安全安心な移動の実現に向け、取り組みを進めていくとしている。