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富士通、病院や介護施設の見守りに活用できる、ミリ波センサーで人の姿勢を高精度に推定する新技術を開発

 富士通株式会社は6日、病院や介護施設での見守りに活用できる技術として、一般的なミリ波センサーで取得される粒度の粗い点群データから、人の姿勢を高精度に推定できる新技術を開発したと発表した。

 病院や介護施設では、患者や高齢者の安全を守り、かつ看護師や介護者の業務負担を低減するため、センサーを利用した見守り技術が注目されており、特にミリ波センサーを用いた見守り技術は、個人を特定する情報の取得リスクが低く、安価に導入できることから期待が高まっているという。しかし、一般に普及している安価なミリ波センサーは粒度の粗い点群データしか得られないため、患者や高齢者の転倒を高精度に検知できないほか、転倒前後の行動の詳細な分析も困難だという。

 こうした状況に対し、富士通では国内電波法に準拠する79GHz帯の一般的なミリ波センサーを用いて、人の詳細な行動分析を実現する新技術を開発した。

開発した技術の全体イメージ

 開発した技術は、取得できる点群データの粒度が粗い一般的なミリ波センサーでも、高精度な推定を実現するため、人の姿勢が時系列の点群データとして表現できることに着目。複数回電波を照射によって取得できる大量の点群データから、人の姿勢を推定するのに適した点群データを選定することで、粒度が細かい点群データへの拡張を可能とする。

 こうして姿勢推定に十分な粒度に拡張した点群データをもとに、高精度に姿勢を推定するため、点群データと人の関節点の3次元座標情報を対応させた大規模データセットを構築。データセットは、約140人の人物による、約50種の異なるシーンでの行動データを取得して構成し、このデータセットに基づいて高精度な姿勢推定AIモデルを開発した。

 さらに、約100種の基本動作データを組み合わせて、人の複雑な行動を分析できる独自のAI技術「行動分析技術 Actlyzer」を連携させることで、ベッドから立ち上がった時の転倒なのか、歩行時の転倒なのかといった、前後の行動を含む詳細な分析が可能となり、看護師や介護者が目視で見守りを実施する負担や、緊急時の対応の遅れを減らすことができる。これらの技術により、病院や介護施設などのプライバシー性の高い空間でも、転倒などの確実な検知とプライバシーへの配慮の両立を実現する。

 技術については、今回の前身となる技術を用いて、鳥取県鳥取市が富士通Japan株式会社とともに、市営住宅においてひとり暮らしの高齢者を見守る実証実験を2022年2月に実施し、プライバシーに配慮した住民の状況監視における技術の有効性を確認したとしている。

 また、2022年6月には、富士通が神奈川県川崎市とともに、福祉製品やサービスの開発、改良を支援する施設「Kawasaki Welfare Technology Lab」内の模擬環境ラボで、起床をはじめとするさまざまな動作時の機器の反応や通知内容などを検証し、その結果を踏まえて2022年8月以降に実際の高齢者施設での実証実験を予定している。

 富士通では、開発した技術について、病院や介護施設との実証実験を実施することでさらなる効果検証と精度向上を重ね、2023年度中のサービス化を目指すとしている。