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AWSがコスト最適化支援施策を説明、クラウドならではの運用で不要なコストを削減
NTTドコモの取り組みも解説
2021年9月7日 06:00
アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社(AWSジャパン)は6日、顧客のコスト最適化を支援する施策についての記者説明会を開催した。
オンプレミスからクラウドに移行したとき、オンプレミスのままの固定的な設備の考え方ではクラウドの柔軟性を生かしきれない。それについて、クラウドならではの運用によって不要なコストを削減することを顧客にアドバイスする施策だ。
説明会には、株式会社ドコモも登場。社内でのクラウド利用最適化への取り組みを紹介するとともに、実際にAWSの利用コストを削減した成功例をいくつか紹介した。
オンプレミスのやり方を踏襲していてはコストが高くなる
AWSジャパンの佐藤有紀子氏(事業開発統括本部 統括本部長)は、AWSのコスト最適化フレームワークについて解説した。
佐藤氏は、AWS顧客のコストに関する困りごと(課題)として、「移行しても思ったほどのコスト効果を実感できない」と「コスト最適化を限られたチームでしか実践できていない」の2つを取り上げた。
そして、こうした課題を解決するためのAWSの支援として、移行後のコスト最適化支援の「Cloud Financial Management(CFM)」と、組織横断的な持続的なコスト最適化支援の「Financial Hackathonワークショップ(FinHack)」を紹介した。
また、AWS移行前の、オンプレミスとAWSでのTCOを試算する「Cloud Economics(CE)」についても言及した。
まず1つめの課題「移行しても思ったほどのコスト効果を実感できない」として、AWS利用の経験が浅い顧客で、オンプレミスのやり方を踏襲して固定的なインスタンス利用になっているため、クラウドの特性を活かしきれずコストが高くなるケースがあると佐藤氏は説明した。
これについて佐藤氏は、AWSの弾力性により、需要にあわせてサイジングを変更したり、ワークロードの特性に応じて購入オプションを選択して組み合わせたりすることを解決策として示した。例えば、安定的なワークロードにはSaving Plansやリザーブドインスタンスを、新規やワークロードの予測が難しいワークロードにはオンデマンドインスタンスを、インスタンスに障害があってもカバーできるワークロードにはスポットインスタンスをといった選択ができる。
2つめの課題「コスト最適化を限られたチームでしか実践できていない」については、アーキテクチャにとどまらず、人材育成や組織体制、ガバナンス、運用プロセスなどをクラウド向けに適合していくことが必要だと佐藤氏は述べた。
こうした課題と解決に対してAWSが提供するコスト最適化フレームワークが、前述したCE、CFM、FinHackだ。AWS移行の試算がCEであり、移行してまもない時期にコストを最適化するのがCFM、ある程度使ってきた顧客で組織横断的なコスト最適化の文化を作るのがFinHackという位置づけとなる。
CFMによる支援では、まずAWS Cost Explorerでデータを収集して分析し、コスト削減を提案する。そのうえで顧客がその案を実行した後、コスト削減の推移を報告、今後どのようなことができるかの計画を立てる。
またFinHackによる支援では、ヒアリングにより課題点を明確化し、関連の専門家を招集してワークショップのアジェンダを策定する。そのうえでワークショップを実施して、最終日に参加者が現状の課題と今後の取り組みを発表する。
コスト最適化フレームワークの事例として佐藤氏は、化粧品コミュニティサイト@cosmeなどを運営する株式会社アイスタイルのケースを紹介した。CEでオンプレミスからコストの40%の削減余地があると診断されたこと、移行してみてCFMでAWSコストの10%削減を確認できたことで、AWSの全面的な採用を決定したという。
EC2やコンテナー、Glueなど、ドコモのAWSコスト削減事例を紹介
株式会社NTTドコモの伊藤孝史氏(ネットワーク本部 サービスデザイン部 部長)は、AWSのコスト最適化フレームワークを含むAWSコストの最適化の事例を紹介した。
伊藤氏によると、ドコモでは2009年からR&D部門でAWSを検証し、2012年から「しゃべってコレクション」や「フォトコレクション」など商用サービスで利用を開始した。現在では多数のサービスがAWSで動いており、AWSアカウント数は1000以上と、この5年で約5倍になっているという。
氏はAWSのサービスについて、柔軟である反面、現実的にはそれによってコストに対する管理や意識づけがしづらく、コスト最適化の対策にばらつきがある結果になると語った。
この課題に対してドコモでは早くからクラウドCoE(Center of Excellence)チームを設立して対応。コスト最適化や、技術支援、要望取りまとめといった活動をしてきた。
また、自社だけでは限界があるので、今回紹介されたようなプログラムも利用してきた。CFMとFinHackを、2020年度にそれぞれ2回開催したという。
ここから伊藤氏は、社内のAWSコスト最適化事例を5つ紹介した。
事例1は、オンプレミスに近い形でAWSを利用していたケースだ。この例では、最初にコストを見える化し、EC2が45%を占めていることを確認。それに対して、スペックを最小スペック+αにし、スポットインスタンスを導入、さらに夜間・休日に自動停止するようにした。これにより、検証環境でコストを60%削減、商用環境ではサーバー台数を17%削減したという。
事例2は、コンテナープラットフォームのAmazon ECSで、サービスをリクエストのあるなしにかかわらず上げっぱなしにしていたケースだ。この例ではまず、スケーリングによるインスタンス数調整によりECSコストを37%削減した。さらにSaving Plansを適用してさらに17%削減。改善前と比較するとECSコストが48%削減となったという。
事例3も、Amazon ECSを使いっぱなしだったケースだ。この例では、ECSのタスク数を最適化するとともに、CPU使用率が低いタスクに割り当てるCPUとメモリの設定をダウンサイジングして、コストを55%削減したという。
事例4は、ETLサービスのAWS Glueのケースだ。Glue 2.0によってコスト削減と性能改善ができるのではないかと考え、移行したことにより、コストを27%削減した。さらに、モニタリングのAWS CloudWatchにおいても、必要なログを見極めることでコストを35%削減した。
事例5は、常時起動としていた環境を、使わない時間帯に停止するようにしたケースだ。土日・夜間に停止することで、コストを35%削減したという。
こうした個別の例のほか、コスト最適化のための継続チェック項目を社内的に用意して、「これを満たすようにクラウドを使ってほしい」と言っていることも伊藤氏は紹介した。
さらにワークショップを通じて参加者が自分ごととして取り組みむ意識を醸成する活動も行っている。FinHackの模様を動画で撮影し社内配信して共有していることも紹介された。
取り組みの成果として、未使用時0台になっているバッチサーバーが9割超、夜間落とすようになっている検証環境が9割超、オートスケーリング利用システムが9割超、スポットインスタンスやFargate Spotの利用数が350台超となったと伊藤氏は報告した。