ニュース

東急建設とリコー、VRの活用で建設現場の合意形成を迅速化する実証実験を開始

渋谷駅線路切替工事プロジェクトで効果を検証

 東急建設株式会社と株式会社リコーは12日、東急建設が主として請け負う東京メトロ銀座線渋谷駅線路切替工事における施工管理業務において、VRの技術を活用し、これから建設する構造物をVR空間で関係者が共有し、施工上の情報共有・合意形成を迅速に行うことで業務効率化による生産性向上を目指す実証実験を行うと発表した。

東急建設の3次元モデルを元に構築したVR空間

 建設工事では、発注者・設計者・施工者・協力会社など所属会社や部署の異なる多くの関係者がコミュニケーションを取りながら意思決定を行う場面が頻繁に発生する。その際、関係者全員が様々な資料を共有しながら、建設プロセスや完成形のイメージを一致させることが必要で、合意形成までに時間がかかることが課題になっていたという。

 実証実験では、リコーが提供するソリューションにより、東急建設が普段使っている3次元データをそのまま活用し、設計者や施工管理の担当者、さまざまな分野の専門技術者など、複数の関係者がオンラインで集結して議論することができるバーチャルワークプレイスを構築する。

 VRの技術により、これから建設するモデルの中にあたかも実際に入る感覚で、あらゆる角度から複数の関係者で同時に確認可能となり、品質や安全性の確保に貢献する。これまで、2次元図面を主体として議論してきた建設業において、現実に近い3次元のバーチャルワークプレイスへ議論の場を移し、建設生産プロセスにおけるイノベーションの効果を検証していくとしている。

リコーのソリューションにより同じVR空間に複数が参加可能

 東急建設はこれまで、「Shinka×ICT(シンカ バイ アイシーティー)」を掲げ、ICTの積極活用による新たな価値の提供と業務プロセスの革新に取り組んできた。その一環として、調査、設計段階から3次元モデルを導入し、施工、維持管理の各段階においても属性情報材料や強度などのを属性情報を付与しながら、一連の建設生産・管理システムにおいて活用することで品質確保とともに生産性向上を目的としたBIM/CIMにも取り組んでいる。

 また、東急建設は、BIM/CIMの3次元データを汎用的なVR機材・ソフトに導入することにより、複雑な構造物を直観的に理解し、没入感をもった施工計画・検討が可能なVRの効果を実感していた。しかし、現状の汎用的なVR機材・ソフトでは、単独でしかVR空間に入り込むことができないため、複数人での合意形成をより迅速化する「ひとりでVR」から「みんなでVR」を実現したいという構想があったという。さらに、新型コロナウイルス感染症対策を契機として、建設業の合意形成の場においても、非接触・リモート型の働き方への転換が求められていた。

 リコーが開発し、東急建設が検証する「リコーバーチャルワークプレイス」は、顧客の任意の空間をVR上で再現し、各自がVRゴーグルを使ってその空間に一堂に会することができる。高いインタラクション(相互作用)性や、発想の広がりを相互に共有できるスクリーンシェア、音声入力機能などを備え、付せんを貼ったりしながらアイデアを出すブレインストーミングのミーティングなどにも活用できる。

 リコーバーチャルワークプレイスは、リコーが新規事業の創出に向けた取り組みとして、スタートアップ企業や社内外の起業家の成長を支援して事業共創を目指すプログラム「RICOH ACCELERATOR(現TRIBUS) 2019」の社内起業家チームから生まれたソリューションで、2021年度中の事業化を目指して、ソリューション開発やプロトタイプをユーザーに提供している。

 東急建設とリコーでは、建設業のノウハウを持つ東急建設と、あらゆる現場のはたらく人に寄り添う提案を行ってきたリコーとのオープンイノベーションにより、建設業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速し、より安心で快適な生活環境づくりに寄与するとしている。