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国内IoT市場の企業ユーザー動向、利用企業の割合は増加も、PoC以前の取り組みフェーズにある企業も多数~IDC Japan調査
2020年11月11日 06:00
IDC Japan株式会社は10日、国内IoT市場の企業ユーザー動向調査結果を発表した。
IDC Japanでは、2020年8月から9月にかけて、全国の従業員規模100人以上の企業を対象に、「IoT利用企業動向調査」と「IoT担当者深堀調査」という2つの定量調査(ウェブアンケート)を実施した。
IoT利用企業動向調査は、企業のIoT利用率や具体的なユースケースなど市場の概況を把握することを目的としたもので、回答があった3674社のうち、IDC Japanが定義するIoTの利用企業は248社で、利用率は6.8%となった。IoT利用企業の割合は継続的に増加しており、前年比で0.1ポイント、2015年比で1.9ポイント増加している。
IoTの利用用途としては、多くの企業が社内業務プロセスの合理化/コスト削減を目的とした「社内用途」のIoTを利用している。一方で、IoTを顧客向けの製品/サービスの付加価値創出や新たなビジネスに役立てる「DX用途」を推進する企業も全回答の1.5%の割合を占めるが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などの影響により、そうした用途の一部のIoTプロジェクトは停滞している可能性もあるとしている。
また、IoT利用企業の多くは、短期的には働き方改革や業務プロセス変革など、COVID-19への一次的且つリアクティブな対応を優先するとみられるが、長期的にはCX向上、デジタルビジネスの創造、サプライチェーン強化などを、IoTを含めた多様な技術で推進する傾向が強まると分析している。
IoT担当者深堀調査は、企業の中で自身の業務の1割以上をIoTに充てる「IoT担当者」を対象に調査を行ったもので、回答があった1万6703人のうち1116人(6.7%)がIoT担当者に該当した。調査の結果、IoT担当者が所属する企業においては、IoTの取り組みを開始してから4~5年経過していても、その半数以上は未だにPoC以前の取り組みフェーズにあり、IoTソリューションを提供するベンダーは、そうした企業を本番フェーズに引き上げるべく、なんらかの方策を見出さねばならないと指摘している。
IoT担当者が抱える課題を大きく3つに分類した場合、1つ目の課題としては、IoT関連人材の不足やIoTを実現する上での技術面における知見が不足しているといった意見が目立ち、
IoTを主導する人材の強化/育成を通じて、人材の底上げを早急に進めることが求められるとしている。
2つ目の課題としては、ビジネス現場のIoTに対する理解が不足している、あるいは社内外のIoTに関わる組織間連携が難しいといった回答がみられ、IoTプロジェクトを円滑に進める上での組織間の関係性を最適化する必要があると分析。3つ目の課題としては、IoTの収益性が見通せないことや、予算不足、経営層の理解不足といった意見も顕著で、IoTプロジェクト推進に向けたKPI/ROIなど、経営層を中心としたビジョンやマインドセットの転換が重要だとしている。
IDC Japan コミュニケーションズ シニアマーケットアナリストの鳥巣悠太氏は、「IoTを推進する人材とDXを推進する人材の双方には類似したハードスキルが求められており、IoTはDXを実現する上での不可欠な要素として市場に認識されつつある。IoT技術者の育成がDXの普及に向けて必須と考えられる」と分析。さらに、「IoTを本番フェーズで利用する企業では、業務プロセスのスピード、データの種類/量、デジタル人材の割合、パートナーの数、デジタルサービスの数、データに対する投資のリターンなどをKPIとして重視する点が特徴的である。IoTの取り組みフェーズに合わせた柔軟なKPIの設定が不可欠になる」と述べている。